大飯原発再起動 ~
抗議活動を完全中継したIWJと
お笑い記者クラブの惨状
先週金曜日(6月29日)に総理官邸前で20万人規模のデモが行なわれ、そして大飯では再稼働に反対する人達が大飯原発前に集結し、警察官が築いた砦の前で昼夜にわたって「再稼働反対」を叫び続けた。
そしてこの大飯の模様はIWJでずっと中継された(土曜日の真夜中3時ぐらいでも4000人前後の視聴者がいた)。
私もこの映像を時間が許すかぎりは見ていたのだが、「いま日本で映像ジャーナリズムが果たすべき本来の使命を遂行しているのはIWJだけだナ」と思った。
一方、マスメディアはひたすらくだらない番組を垂れ流しているわけだが、これはもちろん意識して黙殺しているわけで、大飯原発再稼働反対の声などなかったことにする立派な言論統制である。
ネットの時代、それもUSTREAMの時代が来るまでは、この手法でほとんどの国民が完璧に洗脳されていた。
が、しかし今は違う。もちろん数は少ないけれども、大飯の様子をネットで目を凝らして見ている人がいる。しかも、それは国内のみならず国外にもいるのである。
その現実が、警察権力の無謀な行使の歯止めになっていると私は思う(岩上安身氏もそのようなことをツイートしていた)。
このIWJ中継とまさに真逆、対極にあったのが、昨日の午後9時(つまり大飯3号機の起動直後)、記者クラブメディアが中心になって行なわれた関西電力の会見である。
・2012/07/01 大飯原発1.3号機起動操作時の中央制御室内の現場映像と起動操作立会い後の牧野副大臣へのぶら下がり
私は牧野の会見は見ていなかったが、関西電力の会見を生中継で見ていた。
以下はその映像と会見を書き起こしたものだ(聞きとりにくいところは伏字にしてあります。また、多少の誤りはお許しください)。
↓関電の会見(副社長・豊松秀己)は1分30秒過ぎから。
Video streaming by Ustream
────以下、会見、書き起こし────
「代表して3つほど質問させていただきますんで、よろしくお願いします。まず一つ目ですけれども、全国の全原発が停止して、国論を二分するなかで、定検後には初めての再稼働第一号となるわけですけれども、原発の反対派が原発の入口に抗議活動をするなかで、異例という形での起動となりました。こういう事態を踏まえて副社長としてどういうふうに受け止められておられるか、今、起動を終えられた率直なご感想をよろしくお願いします」
「ありがとうごさいます。御存知の通り、福島の事故以来初めての再稼働のプラントということで、このプラントをちゃんと再稼働していくことがこれからの日本の原子力の将来のあり方を決めると思っています。そういう意味で、きわめて責任重大であるということからスタートしています。私ども、これを再稼働するにあたりまして安全最優先にステップバイステップに進めていくということでのぞんでおります。本日起動がスタートいたしましたけれども、これから臨界、並列、100%出力と続いてまいります。本日の思いは、気を引き締めて一歩ずつ着実に安全最優先にやっていく必要があるという気持ちを改めて思いました。以上でございます。」
「ありがとうございます。反対する方の抗議活動のなかで背後で渡られたということがあるかと思うんですが、これについてはどう受け止めておられますか?」
「今回、反対されている方、慎重派の方が道路を占拠されまして、道路による必要なものの運搬ができないという事態になりました。しかしながら今回、危機管理システムが有効に働きまして〇〇の一部、もしくは船によるピストン輸送によりまして、運転員、それからいろんな協力会社の方々、支障なく運ぶことができました。また、いろんな食料なども無事運ぶことができまして、今回、あの道路が閉鎖されましたけれども、プラントの運転上、安全管理上、まったく問題ない状況でスタートすることができました。そういう意味で一つの安堵感を持っております。一方で、やはりいろんな意見の方がいらっしゃって当然だと思うのですけれども、やはり〇〇重視といいますか、そういうことをちゃんとしていただくということがきわめて重要であって、それについては是非お願いしたいと思います。意見をいろいろ闘わすということは大事でございますが、やはり〇〇いただくということも大事だと思いまのでそういう思いを持っています、以上です」
「ありがとうございます。続いて質問なんですけれども、安全対策は免震重要棟や防潮堤の嵩上げなどまだ現時点では満たせぬものもございます。また破砕帯が活断層ではないかという、いろいろなご指摘も出てます。こうしたなかでの再起動となったわけでございますけれども、御社としてこういう慎重派、、、いろんな意見をとられる方もおられます。どういうふうにご理解を得て、どういうふうに取り組んでいくのか、お願いします。」
「まあ免震重要棟とか〇〇〇〇〇とか、計画を隔離したものがございます。しかしながら、今回の政府として再稼働への判断基準としては基準1、2で福島と同じことが起こっても炉心溶融しないという規定でございます。これについては100%満足しておりますので、仮に万が一、この若狭湾というところは津波が少ないところでございますけれども、東京電力で起こったような地震や津波がございましても、〇〇〇使いまして〇〇〇対策とりますので、炉心溶融することはまったくないというところの自信を持っております。その上で、やはりそれ以外にもでもできるだけ安全性を高めていくということが重要でごさいますので、免震重要棟などを並行しているということでございます。私どもは安全というのは終わりがないということ、さらに安全性を高めていくということこそが、事業者に求められていると思っております。したがいまして免震重要棟なども含めましてさらなる安全対策を実施し、最終的には世界最高水準の安全にもっていきたいと思っています。破砕帯のことにつきましても大飯3、4号の建設時に調査をし、また新しいバックチェックの時にも調査をし、これが十二、三年前、動いていないと確認していますので、そういうことを今まで報告しておりますし、審査していただいております。これからもいろんな議論が出てまいりまして、そういうことを議論していくことが必要だと思っておりますけれども、現時点で問題ないことが確認されていると考えております。以上でございます」
「はい、わかりました。最後の質問になりますけれども、いま大飯原発を再稼働しても10%節電は変わらないと言われてます。電力供給の責任ある立場として綱渡りの状態は続くかと思いますけれども、知恵を出してどのように考えておられるのか、お願いできますか」
「電力の安定供給というのは電力会社にとってもっとも大事な使命だと思っています。その使命がいま果たせてない。すなわち節電をお願いし、計画停電の準備もしているという状況は本当にみなさまに申し訳ないと思っています。なんとか安定的に電気を送ることこそがきわめて重要でございますので、できるだけ安全を最優先に、この大飯3、4を動かしまして、少しでも供給力をアップしていくことに全力を尽くしたいと考えております」
「ありがとうございます。代表質問は以上です。各社さんよろしくお願いします」
「福井新聞のいずくらと申します。よろしくお願いいたします。今日、大飯3、4号機が再稼働手続きに入っているわけですけれども、で、今日、3号が再稼働しましたが、関西電力さんのその他の原発でいいますと、高浜3、4号をのぞきますと、7機が運転30年を越えています。そういう高経年化した問題があるかと思うんですが、そういった原発の今後の運転方針というのは、いまどのようにお考えになっていますでしょうか?」
「私どもは30年を越えたプラント、もしくは40年を越えた美浜1号機、美浜2号機、これを含めまして高経年化の技術〇〇を行い、いままで審査してきてもらってきております。それにつきましては独自運転しても安全上問題ないという確認ができております。わが国のようにエネルギー自給率が少ない国におきましては、やはり安全性を最優先にですね、エネルギーセキュリティ、それから経済性、地球環境問題の観点から原子力は重要な電源だと思っておりますので、安全性が確認されたプラントについては、継続して運転すべきであるし、そうしたいと考えています。
アメリカにおいては約102機ほどの原子力発電所が運転中でございますけれども、6、7割でしたか、ちょっと数字ははっきり覚えておりませんが、プラントについてはすでに40年を越えて60年運転する認可が得られております。またいま運転中で、そういうことを迎えようとするプラントについては、ほとんどのプラントが申請しているという状況でございまして、アメリカにおきましては60年というのがスタンダードになっています。しかしながら、これから、いま法が決まりまして、具体的に40年というのをどうするかというのがこれから国で具体的な基準が決めていかれると思います。すなわち40年を延長する前の20年というものにつきまして、どんな条件をクリアすればこれが運転できるのかということがメインになってまいります。私どもそういう基準を見ながら40年を越えるプラントについての運転方針を検討していくということにしていきたいと考えております。以上でございます。」
「朝日新聞の大谷といいます。今回の起動に関しては当初の予定よりだいぶ遅れた時期の起動になったと思うんですけれども、このことに関してこれまでの政府の対応の経緯についてご感想、お考えをお聞かせ願えますか」
「3.11の事故以降、国民の方のご不安というのもございますし、原子力発電自身の信頼性が失墜したという状況が起こりました。そのなかでやはり安全性を確保すればエネルギーセキュリティなどの観点から原子力が必要になるということで、判断基準をつくっていただき、その判断基準をつくるにあたりましては、のべ40回にわたるいろんな意見聴取会を積み重ねていただいたということについて感謝申し上げます。そういう公開での議論を踏まえて今回の再稼働にあたる安全基準、判断基準ができたということだと思っています。そういう意味でいままでそういことを積み重ねていただいた政府には感謝申し上げたいと思っています。以上でございます。」
「読売新聞の野中といいます。今日はどういった気持ちで起動に立ち会われて、起動が終ったあとの心情を教えていただけますか」
「ありがとうごさいます。起動が終ったというか、起動、それから臨界、並列、100%ということで、やっと一歩が踏み出せたということぐらいのことだと思っています。これから本当に心を引き締めて一歩ずつ着実に安全最優先で進めていきたいという思いを本日新たにしたところでございます。以上でございます。」
ここで関電の会見は終了。
このあとの大飯町長のコメントは省略。
そして会見終了。
「それでは会見を終わらせていただきますけれども、先ほど入りました情報で、このオフサイトセンターの入口付近に反対の協議をされる方々が集まってきていると、あまり多くではないそうなんですけれども、ですからちょっと記者の方々ですね、ちょっといま出られないというか、警備を固めておりますので、ちょっと外に出られない状況だということをご理解いただくようお願いいたします。2階のプレスルームに戻っていただいて結構です。」
──── 書き起こしはここまで ────
しかし、まあなんと内容のないお粗末な会見だろうか。
クラブメディアの記者というのは、基本的に感想しか聞かないのだろうか。
関電・副社長の答えとういのも、あらかじめ作られた装丁問答に沿っているような、無難なものに終始しているが、それでも突っ込み所は多々ある。
世界最大級の原発事故が現在進行形の国で、初めて再稼働する原発の安全水準は世界最高ではないのだそうで、「これからもっていく」のだそうだ。
また、話はとかく安全やら経済性の話に終始しているが、では原発の使用済み核燃料、あるいは廃炉にした時の費用はどうするのか、その際に出る低レベルから高レベルまでの放射性廃棄物の処分場が日本のどこにもない、つまりまったく未解決であるという点についてどう考えているのか。
地球環境の問題というが、現在、福島や関東、東北周辺の環境を破壊しまくっているのは、福島の放射能である。
まあ、私が記者の立場だったら、問い詰めたいことが山ほどある。
にもかかわらず、読売新聞の記者などは、「気持ち」「心情」を訊くのである。
をいをい、その質問は二度目だぜ。最初の質問と答えを聞いてなかったのかよ。
そして、この日のハイライトは最後の部分だ。
「(いま外が騒ぎになっているから)記者のみなさんは出られませんので、プレスルームに戻っていただいて結構です」
なんだこれ。
こんなことを言われて記者連中は恥ずかしくないのか。
そもそも、その騒ぎを取材して、関電との温度差を書くのが記者の仕事ではないのか?
私はパソコンの画面を見ていて、その会見のあまりの低レベルぶりにツイートをしまくってしまった。
口では「国論を二分する」などと言いながら、関電のご感想うかがいに終始し、キツイ質問を一つもすることなく、答える相手から「ありがとうございます」と言われてしまうクラブメディアの記者たち。
彼らはみな一流大学を優秀な成績で卒業しているのだろう。
なのに、なんでこんなにバカなのか?
もともと日本の教育は、優秀なバカを作るためのものなのか、それともマスメディアという組織に入るとバカになるのか。
ま、そのどちらでもあるような気もするが、とにかくこのお粗末さに、昨晩は最初は激怒していたが、最後はそれも通りこして大笑いしてしまったのであった。
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