2014/12/31

2014年の○と☓その3

以下は箇条書きで○と☓。

今上天皇のご健勝に○。
もはや今上天皇は安倍晋三に対する最後の「砦」である。

・天皇陛下お誕生日に際し(平成26年)

ところで、「平成」という元号であるが、これは「平に成る」ということだから、ある意味では「水平社宣言」の理念にもつながるのではないだろうか。
水平社宣言の最後の「人間に光あれ」の「人間」は「じんかん」と読むという説もある。「じんかん」とは「人と人の間」であり、転じて「すべてのもの」。つまり水平社宣言は「すべてのものに平等に光が当たるように」との願いが込められているというのだ。
天皇制と水平社宣言とは対極の位置にあるものだが、しかして今上天皇のお考え、あるいは行動は、「すべてのものに平等に光を当てよう」というところにあるのではないかと思うのである。

電子書籍のデータを読むのが仕事のため、今年もたくさんの本を読んだが、その中で印象に残った本をいくつか。

『どぜう屋 助七』(実業之日本社)
版元さんの話では、あまり売れていないということだが、データを読んだ私も妻も大変に感動した(聞くところによると、版元の部長も校了の時に“泣いた”そうだ)。
「浅草の老舗「駒形どぜう」を舞台に、幕末・明治の歴史の渦に翻弄されつつも、江戸っ子の意地と持ち前の明るさで店を守りぬく主人〈助七〉と、店に集う人びとの人生模様を描く、感涙必至の傑作歴史時代小説!」(帯より)

『いつかあなたも』(実業之日本社)
「在宅医療専門クリニック看護師の“わたし”と新米医師、院長らが、患者本人と家族、病とその終焉に向き合う。」(帯より)。
在宅医療に関するノンフィクションはたくさんあるけれども、小説は初めて読んだ。著者が在宅医療に携わった医師なので、リアリティがあり(実際、すべて実話を元にしているとのこと)、高齢の一人暮らしの母親を持つ身としては興味深く読まざるを得なかった本。

『江戸の貧民』

『33年後のなんなとなく、クリスタル』

スポーツ。
中日ドラゴンズに☓。
浦和レッズに☓と○。ミシャは持ってないのかな、、、
松本山雅FCに○。映画「クラシコ」を見てファンに(長野にも縁があったので)。
Jリーグ100年構想は着実に実を結んでおり、地域を、そして世の中を少しずつだけれども変えていると思う。

J3リーグに○。今年はスカパーオンデマンドを契約し、J1だけでなくJ2、J3の試合や結果もよく見たのだが、これがそれぞれに面白い。
来季は大宮がJ2に落ちたので、J2の試合を観戦しようと思う。金沢のパウロ田中が見たい。

J2昇格プレーオフ、J2、J3入替戦に○。レベルは低くてもかかっているものが大きい試合はしびれる。

最後に、我が母校、専修大学野球部とラグビー部の1部復帰に○。
とくにラグビー部は13年ぶりの復帰。
日本代表キャップ41を持つ部のレジェンド監督。村田亙氏を抜きにこの復帰はあり得なかった。
就任3年目。長い2部暮らしに慣れきったチームを改革、朝の4時起きで早朝練習、深夜まで選手との面接やミーティング。
単にラグビーだけでなく、心の教育までを実践。決してあきらめることなくポジティブになる精神を植え付け、最後の最後に勝利するという意識付けを徹底。
危ない試合を僅差で乗り切りながらシーズンを2位でフィニッシュすると、リーグ戦2部2位チームが入替戦で勝って昇格するのは初めてという快挙を外人選手抜きで達成。
優れた組織マネージメント力は将来の日本代表監督の候補になり得る人材。

以上、今年の○と☓でした。
良いお年をお迎えください。


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2012/03/21

橋下徹は小沢無罪後の布石か?

東京地検特捜部という、マスメディアによれば「最強の捜査機関」ですら起訴できず、検察審査会という素人集団の起訴議決によって小沢一郎が起訴された「陸山会事件」が結審した。
この過程で明らかになったのは、小沢の「犯罪」ではなく、法治国家の根底を揺るがす検察の驚くべき不正と疑惑である。

起訴議決の根拠となった、検察から検察審査会に送られた捜査報告書は、小沢を起訴させるべく虚偽記載に満ちていた。
一方、無作為で選ばれたはずの検察審査員は、二回の起訴議決時の平均年齢がまったく同じという、天文学的確率の奇怪な現象が報告されていたが(しかも超高齢化が進行中にもかかわらず、その平均年令は30代半ばである)、ここへ来て、その検察審査員を選ぶパソコンソフトは、その人選を恣意的にコントロールすることかできる可能性が指摘されている。

・一市民が斬る!!
2月2日 こんなイカサマソフトに6,000万円もの血税が!最高裁事務総局発注の「検察審査員選定クジ引きソフト」操作マニュアルを見た!

また、発注元は「最高裁事務総局」という聞きなれぬ組織で、このソフト制作を競合の末に落札した富士ソフトという会社の顧問には意外な名が連なっていたという(「検察審査員」「選考」「節ソフト」「顧問」で検索した結果はこちら)。

この裁判だけを見ても、これだけの疑惑がゴロゴロ転がっている。
しかし、有罪立証の根幹である石川議員の供述調書(虚偽記載満載)の証拠採用が却下された際、毎日新聞社の主筆はテレビで「これで有罪にもっていきにくくなったが、まだわからない」とのたまったものだった。
この期に及んでもまだそのようなセリフを公衆の面前で吐く「ジャーナリスト」とは、いったいなんなのか。

そもそもーー。
3年前の2009年3月3日に小沢事務所の大久保秘書が逮捕された時から、この小沢一郎をめぐる「政治とカネ」の事件は一貫して疑惑だらけだった。
その中身については当ブログでもこれまでさんざん書いてきたので割愛するが、にもかかわらずマスメディアに所属する「プロ」のジャーナリストたちは、一貫して検察側の主張に何の疑問を差し挟むこともなく、ひたすら小沢一郎を糾弾し続けた。

一方、ネット上には、プロのジャーナリストとは真逆の素人が多数いて、「小沢対検察」の行方をウォッチしていた。将棋にたとえると、プロのジャーナリストが観戦記者だとすれば、彼らはネット上のファンということになる。
ところが、観戦記者の見立てはことごとくハズレ、ネット上のファンがお互いに情報交換をしながらする分析の方がはるかに正しかったことが、ここへ来て証明されつつあると私は思う。

そうして3年以上に及んだ「小沢事件」に間もなく一つの結論が出る。
判決は普通に考えれば無罪だが、何しろこの国は普通ではない。したがって何が起こるかわからない。
たとえ罰金でも有罪判決が出れば、マスメディアはついに鬼の首を取ったがごとく騒ぎ立てて、小沢辞任論を展開するだろう。
では、無罪だったら?
私の予想では、「それでも疑惑が消えたわけではない」などと言い出す可能性もあるが、それ以上にマスメディアが誇張するのは、「どちらにせよ小沢一郎はもはや過去の政治家である」という印象操作だと思う。

ここ最近、大阪市長をやたらめったら持ち上げるマスメディアの最大の狙いは、ここにあると私は睨んでいる。つまり橋下のやっていることの是非はどうでもよく、小沢との対比で「若くて新しい政治家が出てきたことで、小沢のような古い政治家の役割は終わった」というキャンペーン張る、その布石が橋下なのだと思う。
つまり、小沢にとって検察との闘いに一区切りがついても、マスメディアとの闘いは残念なことにまだ終わらない可能性が高い。
しかし、それももはやそう長くは続かないはずだ。
楽観的に過ぎるかもしれないが、どんな組織でも、デタラメをやった報いは必ず来る。それを如実に示したのが東京電力で、その歴史の法則は不変であると思うのだ。

※そしてTBSはどうする?

朝ズバで森ゆうこ議員が語ったTBSによる水谷建設裏... 投稿者 torigonn


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2011/11/22

「赤文字系雑誌」衰退という世相

久しぶりにABC協会による雑誌の調査部数を見た。本年の上半期(1月〜6月)のものである。
紙媒体にとっては厳しい時代のなか、今年の前半は東日本大震災と東京電力福島第一原発の破局事故があったわけだが、それでも健闘して部数を伸ばしている雑誌もある。これは本当に大したものだと思う。
一方でもちろん部数を落としている雑誌もある。

そんななかで私の目を引いたのは、いわゆる赤文字系雑誌の部数減だ。ちなみに赤文字系というのは、JJ、Cancam、ViVi、Rayなど20歳前後の女性をターゲットとしたファッション誌を指す。
私が勤務していた光文社は、JJをベースとして、これを卒業した読者にCLASSY.(30前後のOL層)、さらにVERY(30代の子どもがいる主婦層)、STORY(40代の主婦層)、HERS(50代の主婦層)と各年代別に雑誌を用意している。つまり、若い層にブランドを叩き込んで消費を煽り、それをどんと上に引っ張っていく作戦である。
これは自動車で言えば「いつかはクラウン」をキャッチフレーズにカローラ、コロナ、マークⅡ、クラウンというラインナップを作り、カローラで得たユーザーをそのまま囲い込んだ、かつてのトヨタのようなマーケティングだ。
しかし、JJは9年前、絶好調でダントツトップを独走している時に編集長を交代して以来、転落の道を辿る。50万部近くあった実売部数はあれよあれよという間に落ち、Cancam、ViViに追い抜かれ、ついにはるか後方にいたRayにも抜かれてしまう(というかRayはマイペースで走っていただけだが、JJがどんどん落ちてきて、あっという間にRayの後ろへ行ってしまったのであった。このJJについては、それだけで本が一冊書けてしまうような話なので、いずれまとめることとしたい)。
このJJと入れ替わってトップに立ったのがCancamだ。蛯原友里、押切もえ、山田優などの人気モデルを擁して、大ズッコケしたJJを抜き去り、アッという間にトップに立つと快進撃を開始、絶頂時には70万部以上の発行部数がほぼ完売ということもあったほどである。
もちろん、広告の状況も多少のタイムラグはあるものの、部数と軌を一にする。JJからはどんどんクライアントが去り、Cancam、ViViへと流れていった。
しかし、このCancamの独走も長くは続かず、やがて部数が落ち始め(Cancamの派生雑誌としてAnecanを出したということもあるが)、やがてViViがトップになる時代が来る。といってもViViはCancamのように爆発的に部数を伸ばしたわけではなく、安定した部数を維持していたら、JJやCancamが勝手に浮き沈みをしていっただけなのだが、とにもかくにもViViがトップに立った(Sweetは外して書いてます)。

――と、これが昨年、私が会社を辞めるあたりまでの情勢だった。ちなみに、昨年の上半期(1-6月)の実売はViViが32万6,000、Cancamが21万2,000(この落ち方も凄い)、Rayが12万2,000、そしてJJが11万1,000である(ただしJJのこの数字は特殊事情(※注)によるもので、実際の平均的な実売はもっと低かった)。
そして、昨年の下半期(7-12月)はViViが30万2,000、Cancamが19万3,000、Rayが10万7,000、JJが8万6,000となっている。
で、今年の上半期は、、、

ViVi 25万1,000(前期比83%)
Cancam 14万8,000(前期比76%)
Ray 11万4,000(前期比106%)
JJ 7万6,000(前期比88%)

かろうじてRayが前期(2010年下半期)を上回っているが、そのRayにしても、昨年の上半期の部数は下回っている。そして、ViVi、Cancamの落ち方が激しく、Rayからすると、しばらく前までその姿すら見えなかったCancamが完全に視界の中に入っている。

この数字の推移をどう解釈すればいいのだろうか。
一つには単純に紙媒体離れに歯止めがかからないということがあるだろう。しかし、一方でそれだけでは説明し足りないとも思う。
わが家にも大学4年の娘がいる。彼女は入学したての頃はCancamを読んでおり、私が会社から持ちかえるJJにも一応、目を通していたようだ。しかし、しばらくしてパッタリ両誌とも読まなくなった。
親戚から「大学の入学祝いに何を欲しいか」と聞かれた時には、某ブランドのバッグなどと答えていたが、その後、ブランドに関心があるようにも見えない。
この間、世の中で何が起きたかと言えば、リーマンショックであり、そして東日本大震災と東京電力福島第一原発の破局事故である。
もともと、現在の大学生というのは、バブル崩壊後に生まれた、元号で言うならば平成世代で、1995年には阪神大震災、2001年にはアメリカの同時多発テロも経験している。
つまり高度成長ともバブルともまったく縁がなく、成長するとともに国内外のさまざまな苦難、事件、混乱に遭遇しているわけだ。しかも、その少なからぬ部分は、国内的に言えば昭和のツケである。
さらに、東京電力福島第一原発が撒き散らかしている放射能の影響は今後も止まるところを知らず、どんなに政府や東電がウソをつこうとも、彼らの人生において、本来なら楽しかるべき20代、充実すべき30代、40代、そして老後にいたっても深刻な影響を与えることは間違いない(もちろん、彼らに続く世代にとってもこれは同様である)。
そういう大変な時代を生きなければならない世代が、急速に昭和的な経済重視、あるいはカネ、モノ(ブランド)重視の価値観から離れているのではないだろうか。
だとしたら、そういう彼らに、昭和世代(なかでも高度成長やバブルの恩恵を受けた世代。以下同じ)はどう対すればいいのか。
少なくとも、それでも昭和的な価値観を押しつけるのは根本的に間違いだろう。なにしろ、今日の国難をもたらした最大の原因は昭和世代のエゴイズムにあるのだから。
京都大学の小出裕章助教は放射能で汚染された食材について、これからは40禁、50禁という表示をして、この食材は40歳以下は食べてはいけない、50歳以下は食べてはいけないというようにすべきだと一貫して主張している。これはつまり、汚染された食材は40歳以上、50歳以上が引き受けるべきだという考え方だが、昭和世代が今すべきことは、このようにわが身を削ってでも後世に残る莫大なツケとリスクを少しでも軽減することだと私は思うのである。

※注 このJJの特殊事情とは、部数低迷が続く中、東方神起を表紙にした号のみが爆発的に売れ、雑誌としては異例の増刷までかかったため、その数字が平均値を押し上げたことによる。

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2009/12/07

複眼的思考~右でも左でもなく

先週、書店に立ち寄った時、蓮池透、大田昌国の共著による「拉致対論」という本が目に止まった。オビに書かれた「北朝鮮制裁策に代えて、対話をすすめよ」「なぜ、前・家族会事務局長が強硬派から変身したのか」「かつて対極の立場にいた二人が、政府・救う会・家族会・メディア・革新派の閉塞を解き明かし、新しい知恵と方策について率直に語り合う画期的な対論」という文言が気になり目次を見る。さらに本文をざっと見て、あとがきを読んで、この本を購入することにした。以下はその感想である。

私は北朝鮮の国家体制については1980年代の後半あたりから興味を持っており、わりとさまざまな本を読んでいた。したがって拉致問題についても比較的早い段階からことの成り行きを知っていたのだが、しかしこの問題については終始一貫、引き気味に見ていた。それは被害者周辺に登場する、いわゆる「救う会」の顔ぶれがあまりにも偏っていたからだ。そして「家族会」の事務局長だった蓮池透についても、その発言内容から「救う会と同じライン上にいる超ライトな人物だナ」と思っていた。
今年7月、衆議院選挙を目前に控えて行われた有田芳生さんの集会のゲストスピーカーとして彼が登場した時も、実は内心「どうして蓮池なんだろう」と思ったものである(ただしその時の話の内容は興味深かった)。
しかし、本書を読み始めた瞬間からそういう蓮池に対するイメージがまったく誤ったものであったことに気づかされる。と同時に拉致問題には、現在、日本が抱えているさまざまな問題が凝縮されていることもわかった。
出発は純粋に拉致被害者の家族が集まり、なんとか肉親を取り戻そうと必死に運動していた家族会、そこへ救う会が登場することで運動体が政治性を帯び始める。それに便乗し、利用する安倍や中川といった政治家、一方で北朝鮮と親交を結んでいた旧社会党を中心とする左派勢力の無力、そして交渉力のなさ、無能ぶりをさらけ出す外務省。事態の本質を見抜くことなく一貫して扇情的な報道しかしないメディア。そうしたなかで、最初は強硬派だった蓮池透は徐々に考え方を変え始める。曰く、

私は最近、変節者だとか、立場を変えたとか言われます。変わったということを大きくクローズアップされるのは私としては嬉しくありません。突然変化したというわけではなくて、徐々に、時間が経つにつれていろいろなことを深く考えながら現在にいたっており、結果として、周りから見ると変わっている。

それまでは一方的に北朝鮮による拉致を非難していたが、しかし考えれば考えるほど、拉致問題というのは実は過去の日本の朝鮮半島に対する植民地支配を抜きには語れない。そうして蓮池は、もともとは自分は歴史に無知だったということを告白しつつこう述べる。

私はいつも思うんですが、昔日本が何をやったのか、強制連行や従軍慰安婦、そういう話題になるとすぐイデオロギーの問題が入ってきてしまうんです。私はそれが非常に苦手です。右寄りの人は「そんな事実はなかった」と言う。左よりの人は「絶対にあったんだ」と言う。そういう不毛な議論を繰り返していてもダメです。これは政府が曖昧にしているのではないかと思っています。責任逃れなのか何なのか分かりませんが、日本政府はそれを長い間、現在に至るまで曖昧にしてきました。
これは自虐史観を植え付けるとか、そういう問題ではないと思います。それぞれの国益に沿った歴史になるのは仕方がないとしても、やはりあったものはあったと、客観的な歴史を教えるべきです。
日本がかつてやったことを日本人が知っていれば、一方的に北朝鮮を責めることはできないと思います。戦争という有事の枠の中で行なわれたことと平静時に行なわれた拉致は違うとはいえ、やはり北朝鮮、韓国の人たちがどういう感情を日本に対して持っているか、それをきちんと把握しなければなりません。今も「ミサイルが飛んできた。北朝鮮はけしからん。制裁だ!」と、感情的になる人が多くて、讀賣新聞の世論調査では八割近くが制裁肯定だとありましたが、それは過去の問題がすっぽり抜けてしまっている人がほとんどだと私は今思っています。

私は本を読んでいて気になる箇所があるとページを折っておくクセがある。これはもちろん、あとからその部分を見返す時に便利だからなわけだが、この本は折り目だらけになってしまった。それほど私としては重要な部分が多く、ここではとても引用しきれない。
したがって最後に蓮池透がなぜ北朝鮮強硬派からここまで変わったのか、その原因となった弟、蓮池薫について兄が語っている部分を引用する。

弟は、自分の頭の中に何があるのかということは公にしないと断言しています。「これは弟の対北対策だ」と言うんです。「胸の内を北朝鮮に見せたら、俺たちの価値がなくなる」と。情報を公にしないというのも同じことです。情報を公にしたら、その情報はまったく価値がなくなってしまう、と。そうは言うものの、弟と話をしていると、彼が日本と北朝鮮の両方をよく知っていることが分かります。ものすごいバランス感覚を持っていて、ものごとを複眼的に見ることができる稀有な存在だと思います。そして、常に論理的に思考する人間です。ああいう生活をしてきたせいかもしれませんが、常に事態を先回りして考えて、頭の中で想定問答をやって、その結果を口に出すということをしているようです。昔はそんな男ではなかったんですけどね。

蓮池透はこの複眼的思考を持つ弟と時に対峙ししながら、しかし一方で彼自身も複眼的な思考を持つにいたったということだろう。私はこの本を読みながら、不謹慎な言い方だが、蓮池薫にも猛烈な興味を持った。
なぜ日本においては右も左もダメだったのか。それは両陣営がお互いに自分の思想、思考に短絡的に固執してきたからであろう。その点において右も左も大した違いはない、というか同じである。そして実は同質である右と左が一見対立しつつ予定調和のごとく協調していたのが1955年体制というものだろう。であるならば、ポスト55年体制は右でも左でもない、複眼的思考の持ち主こそが求められるではないかと思う。
蓮池薫が日朝交渉の表舞台に出てくることはないのだろう。が、今日の政治状況を見ていると、こういう人物がたくさん出てきて日朝、あるいは日米の交渉をしていかない限り、事態は打開できないのではないかと思う。
蓮池透はあとがきの締めくくりでこう書いている。

「 『制裁よりも交渉を』
 いかなる民族であれ、コミュニケーション、ネゴシエーションなくして、和解はありません。」

私はかねてよりメディアによるバッシングや安易なレッテル張りに批判的であったが、自分もまた蓮池透という人に対して安易なレッテル張りをしていたことに本書を読んで気づいた。その意味で本書は戒めの書でもあった。

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2009/02/13

クルマ離れと活字離れ~自動車産業と紙媒体の共通点(3)

若者のクルマ離れ、活字離れは自動車産業、紙媒体にとってそれぞれ頭の痛い問題である。
が、これはなかなかに解決が難しく、速効性のある対策というのは見当たらない。
スズキの鈴木修会長は、昨年末の日経のインタビューのなかで「自動車復活のカギを握るのは、やはり米国市場の動向か」という記者の質問に対して「違う。クルマ離れ対策が急務だ。今の若者は堂々と『免許を持っていない』と言う。自動車は構造不況に陥る恐れがある。ピアノの販売不振に直面したヤマハがピアノ教室を展開して子供への関心を持たせたように、自動車業界も車を売るための手段を再構築する必要がある」と答えている。
これは鋭い指摘だと思う。
ただ、ここで難しいのは、これからのクルマというのは、もはやこれまでのように運転を楽しむとか、気持ちのいいドライブをするだとかという要素をどんどん削ぎ落としていく可能性が高いということだ。できるだけ速く走るためにコーナーで後輪を滑らせるよりも、A地点からB地点までを安全に、しかも環境に負荷をかけずに走ることが優先され、どうしても運転を楽しみたいのたらばカネを払ってサーキットでやってくれという時代が来るかもしれない。そうしたなかでクルマという商品の魅力をどうやって伝えていくかということには知恵が必要だろう。
とはいえ、鈴木会長が指摘するようなクルマへの興味を喚起する対策(とくに若年層への)が、自動車産業にとって今後、非常に重要になってくることは間違いないと思う。

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2008/01/18

広告で雑誌のお里が知れる?

またぞろ偽装である。今回は古紙再生紙。再生紙における古紙の配合率が偽装されていたという。
そもそも古紙再生紙を使うというのは、環境意識が高いことのアピールなわけで、企業によっては古紙再生紙を名刺に利用しているところも多い。
ところが結果的に利用者の意識とは裏腹にこれがまったく見当違いな行為であったわけで、このようなイメージの部分の信用を偽装によって失墜させてしまった製紙会社各社は食品偽装をしていた会社とは別の意味で罪が重い。
企業にしても、あるいは一つの商品にしても、ブランドイメージの構築こそは最重要ポイントであり、その部分が傷つくのは一大事なのである。

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2008/01/10

ベストセラーという麻薬-草思社の経営破綻に関する雑感

ミドリ十字の続きを書こうと思っていたのだが、草思社が民事再生法の適用を申請したというニュースについて触れておこうと思う。

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2007/12/19

博士の愛した数式

伊集院光の日曜日の秘密基地(TBSラジオ)で、この秋口から始まったコーナーに「負けたらお蔵インタビュー天国と地獄」というのがある。
これはお題を与えられた若手芸人が街に出て道行くひとたちにインタビューをするという企画で、毎回、2人の若手芸人がまずは自分のとってきたインタビューのなかから面白い話をダイジェストで放送、さらに自分のイチ押しのインタビューを流すのだが、これは途中でぷっつり切れる。
そうしてリスナーから、この後、どちらのインタビューの続きを聞きたいかを投票で募り、勝った方のインタビューだけを放送するというので負けた方はそのままお蔵入りしてしまう。
とても面白いコーナーなのだが(伊集院の番組の企画力というのはすごい)、問題はこの負けた方で、これは聴きたいと思っても永久に聴けない。

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2007/10/05

フライデーの発売中止

本日売りの写真週刊誌「フライデー」が発売中止になったという。
巷間伝えられるところでは時津風部屋に関する記事の中での写真の誤掲載だという。
皇室や政治家、企業がらみ以外のところで発売中止に追い込まれたわけだから相当に大きなミス、おそらく1色グラビアのトップ記事でのミスだったと思われる。

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