ACTA強行採決 ~ 「奥さん、『VERY』を読んでる場合じゃないんですヨ」
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報道機関のガンは現代の記者クラブ制度だ……ということは、すでに耳にタコができるほど言われている。政治派閥の代弁者としての政治記者、財界業界のスポークスマンとしての経済記者、各官庁の広報担当係に成り下がった霞ヶ関記者。それなら「日本赤軍」や中核、革マルそれぞれの代弁記者が正規に振りあてられているかというと、こっちのほうは警察庁や警視庁の公安担当のあとを金魚のウンコのようについて行くか、クラブで警察発表されるものを、マージャンの合い間にデスクに送稿するだけの官報記者しかいない。それを現代のマスコミでは「報道の中立性」といい、この立場を堅持するのが、すなわち「言論の自由」を守り、日本を“なんでも言える国”(新聞標語)としてささえる新聞の役目だということになっているらしい。
丸山邦男『遊撃的マスコミ論 オピニオン・ジャーナリズムの構造』
「醜聞はマスコミのタブーか」より
(※初出は1974年12月『現代の眼』)
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先日、テレビ局(民放)で報道に携わる知人のtweetに以下のようなものがあった。
公共放送には、日頃から敬意を持ち合わせてはいるが…。
夜9時のニュース。野田首相が竹島問題で会見の日、沢尻エリカ映画を10分以上。本日はAKB前田卒業を大きく番宣。被災地、福島、原発、核廃棄物、尖閣、竹島、シリア、消費税、財政、オスプレイ、選挙…重要問題山積のなか、少々残念。
当ブログではいつも主張していることだが、「報じない」というのは立派な言論操作で、つまり「民は余計なことは知らなんでいい」という体制意志の発露である。
要はこの国の独裁権力者である霞が関にとって、国民が目覚めては困るのだ。
日本人の英語力の水準は世界レベルに比して劣っていることは、つとに伝えられている。これだけ長らく問題になっているにもかかわらず、なぜ事態はいっこうに改善されないのか。
突き詰めると、国家に「その気がない」ということだろう。
独裁権力にとって最大のテーマは情報をコントロールすることだ。島国という地理的条件に加えて、日本語という特殊な言語を使っている限りにおいては、メディアを抱き込めば国民は容易にコントロールできるのである(とくにその中心を担っているのがNHKと朝日だと思う)。
ま、それはそれでいい面もあって、デモクラシーマインドの欠片もない日本人は、戦後、文句も言わずにひたすら働き続けた結果、高度経済成長を成し遂げたわけだ。
しかし、当然、その過程でひずみは出る。だが、それを国民は何も知らぬまま(知らされないまま)3.11まで来てしまった。そのツケがモロに出たのが福島第一原発の破局事故だと思う。
これは日本の歴史上、というか世界史的に見ても稀な破局事故だ。私はさすがにこれで少しは世の中が変わるかと思ったのだが、権力はこれをキッカケにさらに独裁のタガを締め直すことに躍起になっている。
先日、半年に一度、雑誌の実売部数を公表するABC公差の数字を見ていたら、古巣の会社の「VERY」という雑誌が大変な伸びを示していた。漏れ伝え聞くところによれば、広告も絶好調だという。確かにこの雑誌の編集長は大変有能で、雑誌の出来もいい。
ただし、元々の源流がJJ(こちらの没落は著しい)にあるだけに、内容は消費の刺激一本槍、世田谷あたりに住む奥さんを念頭に置いた、言ってしまえばノーテンキな雑誌だ。
その雑誌の好調を示す数字を見て、私は「奥さん、『VERY』を読んでいる場合じゃないんですヨ」と心の中で呟いた。
もはや福島第一の事故は収束して、いつもの日常が戻ったと思っている人は多い。だが、放射能による影響が出るのはこれからだ。なにしろこれは津波による被害とはまったく性質の違うもので、東日本の広い範囲を壊しつつある。
マスメディアは消費税増税後の成長戦略がどーしたこーしたと言っているが、福島第一の破局事故の処理、及び住民の安全確保のコスト(+原発の今後の廃炉コスト、高レベル放射性廃棄物の廃棄コスト)を抜きにした成長戦略などありえない。そして、このコストを真剣に計算したら、成長戦略など吹っ飛ぶのは間違いない。それがわかっているから、政府は何もしないのである。
と、ここまで書いたところで、とんでもない動画があることを知った。
いやー、これは凄いですね。もう戦時中と同じです(というか、それよりももっと悪い)。
で、まあしかし、現代が戦時中と異なるのは、インターネットがあることだ。もちろん、ここに流れる情報も玉石混交だが、マスメディアによる大本営発表とはまったく違う情報も流れており、それがさまざまなSNSツールによって拡散されていく。
その成果の一つが、新しいエネルギー政策に関するパブリックコメントの結果だろう。
私のような者にとってはネットほどありがたいものはないが、言論操作に命をかけているこの国の権力からすれば、これほど忌々しい存在もない。
ゆえにACTAなるものが登場するわけだ。
本日、衆議院でACTAの強行採決が行われるという。その「こと」の重要性を知っている人がどれだけいるだろうか?
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