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2011/04/15

東京電力福島第一原発事故について ~ 神頼み国家になった日本(-人-)

若い人はご存じないだろうが、東京・永田町にあるプルデンシャルタワーのある場所には、かつてホテルニュージャパンというホテルがあった。だが私が大学1年の1982年、このホテルで火災が発生し、33名の死者が出るという大惨事が起きた(ホテルニュージャパン火災)。

このホテルは消防庁からさんざん火災時の消火設備の脆弱性を指摘されながら、当時の社長である横井英樹はカネがかかるという理由で一切これを無視し続けた、その末に起きたのがこの大惨事だった。
当然ながらマスメディアの批判も横井英樹に集中し、最終的に横井は逮捕、起訴され実刑判決を受けた。

このホテルニュージャパン火災のスケールを極限まで拡大したのが、今回の福島第一原発事故である。
放射能ではまだ誰も死んでいないって?
冗談を言ってはいけない。永田町で起きたホテル火災で世界中の耳目が集まって、影響を受ける近隣諸国が抗議をすることがあるか? ヨーロッパでその影響が出ることがあるのか? そんなことがあるはずがない。
つまり、今回の福島第一原発事故は、過去の歴史上においてチェルノブイリ原発事故と並ぶ、そしてそれを超える可能性が十分にある、人類史上最大の人災なのだ。
にもかかわらず、なぜこの大事故を引き起こした犯罪者集団の経営者が逮捕もされずに平然と記者会見なんぞをしているのかが私には理解できない。
しかも、この連中はこの期に及んでも放射能の影響を受ける日本どころか世界中の人びとのことよりも、東京電力という会社を守ることに集中し、自分たちに不利になるようなことは詳らかにしない。
さらに驚いたことには、そういう組織に事故の処理を任せているのである(原子力保安院にしても同じ穴の狢でしかない)。しかもこの面々はもともと、「チェルノブイリのような事故は絶対に起きない」と言っていたのである。そういう人間が、どうしてこの難事を解決することができるのか。

菅直人は先日の記者会見で「他の原発を止めることはしない」と言った。そして「事故が起きないための対策を指示した」そうだ。現状、福島第一原発と同様に、他のすべての原発もその事故対策はお粗末きわまりないものであり、いくら指示をしたからと言っても、それが実現するまでには少なからぬ年月を要するだろう。
一方、日本が大地震の活動期に入ったことは、今回の大惨事を予想していた神戸大学の石橋克彦名誉教授の指摘するところである。
つまり、明日、他の原発の周辺で地震が起きる可能性は十分にある。そして、もし地震が起きて今回の福島と同じ事故が他の原発で起きれば、ただでさえ窮地に追い込まれている日本は完全にジ・エンドであるばかりか、近隣諸国、ことによると世界中の国々をジ・エンドにしてしまうことになりかねない。
とくに近い将来、必ず来ると言われている東海大地震の予想震源域は浜岡原発の真上にあるのだ。
それでも原発を止めずに安全対策をするということは、その間、大地震が来ないことをひたすら祈るしかないということである。つまり、日本はもはや科学とはかけ離れた神頼み国家になったわけだ。

(-人-)(-人-)(-人-)

「しかし、原発を止めたら経済が立ち行かなくなるじゃないか」
というのが必ず来る反論だろう。私はそうは思わないが、もしそうなったとしても仕方がない。後世の日本人、あるいは地球上の人びとに甚大な迷惑、被害をかける可能性があるのならば、そのリスクがあるのならば、今、われわれは我慢をするしかないと私は思うのだ。
少なくとも「人間は必ず死ぬ。だから自分が死んだ後のことは知ったことではない」といった態度は許されない(原発を推進して来た連中は、ことここに及んでそういう態度を鮮明にしているように見える)。

それにしても――。
かつてホテルニュージャパンが火災を起こした時には横井英樹の責任を徹底的に追及したマスメディアが、どうして今回は東京電力に対して批判の刃を向けないのか。それは、当ブログでも書いて来たように、メディアが東電に広告という注射をたっぷりと打たれてドランカー状態になっているからだ。
こちらは玉木正之氏のコラムであるが、3月12日にこんな記述がある。

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長時間の停電は昨晩中に解決。ただしテレビに映し出された光景には唖然。津波の強烈さもさりながら福島の原発事故はヤバイ。あれは天災?人災?東電ではないけど他の電力会社から昨年(代理店を通じて)原発の広報記事への登場を依頼されて「玉木さんの言いたいことを言ってください」といわれたうえにギャラの多さ(インタビュー記事1回500万円)も魅力やったので出てみようかと思たけど「こちらの言いたいこと(原発は基本的に作らない方がいい)」で折り合いがつかずボツになった経緯があった。こちらの言い分を曲げなくて(ギャラの魅力に負けなくて)良かったとつくづく思う。
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(傍線は筆者)

数日前の東京電力の記者会見で、フリーランスの記者(田中龍作氏か日隅一雄氏だったと思う)が、東京電力のマスメディアに対するお詫びと節電広告の出広金額について質問をしたところ、東京電力側は「私契約なので答えられない」と言った。
東京電力は地域独占のきわめて公益性の高い企業である。そしてテレビ局もまた公共の電波を使用する以上、公共性はきわめて高い。
もちろん、お詫びや節電の広告を流すことも大事かもしれない。だが、この時期にその広告を流すならば、少なくともテレビ局をはじめとする媒体社側は限りなく無料に近い料金でその広告を流すべきだろう(そもそも広告不況の現在、タダみたいな広告なんていくらでもあるのだから)。東電に少しでもカネの余力があるならば、できる限りは被災者に回すべきと考えるのが真っ当な人間の態度である。
しかし、私はおそらく媒体社側は定価とはいわないまでも、相当な料金で広告を受けていると思う。
というのも、もし私がいまでも広告営業をしていて、そこへお詫び広告の話が来たら、上司である広告担当役員や部長は必ず「絶対にまけるな」と言うと思うからだ。これは断言できる。なぜなら、苦しい状況にある媒体社の側も(とくに経営陣は)東電の企業責任とか被災者のことなど知ったことではなく、自分たちに1円でも多くのカネが入ればそれでいいと考えるからだ。
これは広告代理店にしても同様で、できるだけ多くのマージンが欲しい。そして東電側はカネを出すことでマスメディアをこれまで通り買収することができるのなら、多少は値切るにしてもそこそこの金額を出そうとするだろう。つまり東電、広告代理店、マスメディアの間には、見事なまでにWin-Winの関係が築かれているのである。
そうして私はふと思う。もし、そういう状況に自分が置かれたら、どういう対応をしただろうかと。

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コメント

「国が何を措いてもまず第一にやらねばならぬ被災者救済国策」

まず政府はすべての震災津波被災者ひとりひとりに「東日本震災津波被災者証」を発行せよ。ちょうど広島長崎の被爆者へ「原爆手帳」「被爆者証」を配布したごとく。
こうすれば被災者が日本全国どこへ避難しても国からの生活保護医療福祉保護失業保険(失業中全期間支給)を確実に受けることができる。義捐金の配布も「東震津被災者証」に基づいて公平に分配して受けることができる。

震災被災と同時に東電福島原発事故放射能被曝被災した国民に対しては新たに「被曝者証」を前記の「東震津被災者証」と別に支給して、東電・保安院からの補償を受け取れるようにする。

国が被災者対策のうちでまず第一にやらねばならないことが被災者国民の老若男女すべての身分を保証するこの「東震津被災者証」「被曝者証」の2つの証明書を速やかに発行給付することである。

これをやらねば政府の存在そのものが国民主権を明示した日本国憲法に違反する犯罪者になることをしっかりと弁えて、心して迅速に遅滞無く政府はこれを行え。

投稿: 通りがけ | 2011/04/16 02:33

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