TBSのベイスターズ売却 ~ なぜメディア企業には経営力がないのか?
TBSが横浜ベイスターズを売却するという。
私は中日ファンであるが、横浜出身ということもあって横浜スタジアムにはよく通ったし(中日の1982年のリーグ優勝はこの球場で見た)、昔からベイスターズ(というよりもホエールズ)にも少しく関心があった。
実際、私は今でも中日が横浜に来ると埼玉からわざわざ観戦に行くことがある。
なにしろこのスタジアムは立地がいい(それは神宮も同様だが)。横浜でも有数の観光資源である中華街に隣接し、元町、あるいは伊勢佐木町モールとも目と鼻の先だ。しかも首都高速の出口からも近い。
たとえば家族で横浜へ行く場合、私と息子は野球観戦をして、その間、妻は近くで買い物。試合が終わると中華街で食事をして娘にお土産の肉まんでも買って帰る。これでさほどのカネもかからず、十分に楽しい一日を過ごすことができる。
ところがペイスターズチームは3年連続で最下位と低迷し、プロ野球の人気低下もあいまって球団経営は赤字だったという。さらにTBSは本業である放送業が振るわずに赤字転落。球団経営などしている場合ではないということになったようだ。
しかし、、、と私は思うのである。
そもそもTBSは本気でベイスターズの経営をやっていたのだろうか?
私はAMラジオ好きなのでTBSも聴くけれども、この局のナイター中継はとにかく巨人の試合を中継することに熱心である。これは敵に塩を送る類の話で、私はかねがね不思議に思っていた。
では、なぜそんなことをするのか?
TBSにすれば、ベイスターズでは聴取率が取れないからであろう。しかし、だったらなぜベイスターズの人気を上げる(=価値を高める)ための経営努力をしないのか。
「いや、しかしプロ野球の人気は下がっているし、事実、観客動員も下がっている」というステレオタイプの反論が聞こえてきそうである。だが、甲子園へ行っても福岡へ行っても札幌へ行っても、名古屋へ行っても、あるいは千葉だって仙台だって、、、野球は十分に人気がある。海を渡ったアメリカでも、野球の人気が凋落しているという話は聞かない。
もちろん、ひと昔前のように「野球しか娯楽がない」といった時代ではない。興味は多種多様化していることは事実だ。けれども、一方でこれだけ日本全国に根付いている人気競技というのは依然としてない。
にもかかわらずベイスターズの惨状を見ていると、まったく経営努力を放棄しているようにしか私には思えないのである。
たとえば、せっかくあれだけ地の利のある球場を本拠地にしているのだから、さらにこの球場のプレゼンスを上げるという手だってある。
私はかねがね関西の野球ファンがうらやましいと思っていた。なぜなら関西にはオープンエアで天然芝の球場が、甲子園、神戸グリーンスタジアムと二つもある。また、広島の新球場も天然芝だ。
もちろん、球場の経営効率だけを考えれば人工芝の方が安上がりだろうし、ましてドーム球場だといろいろなイベントを開催することが可能で、さらに経営効率が上がる。
しかし、野球はサッカー同様、やっぱりオープンエアに天然芝でやるものであって、そういう環境であればこそプロ野球興行というソフトの価値も上がる(札幌は致し方がないと思うが)。実際、アメリカではかつて流行したドーム球場どんどん姿を消し、天然芝の球場が増えている。私は昨年、ヤンキースタジアムへ行ったが、その素晴らしさに彼我の差を感じずにはいられなかった。
ところが、名古屋から東のプロ野球本拠地で天然芝の球場は一つもない。そんななかで、たとえば横浜が芝生を天然に貼り替えれば、それだけでも球場としての魅力が増し、ベイスターズの試合の価値が上がるだろう。
そういう器をつくった上でJリーグの球団がやっているようなキメの細かいマーケティングやファンサービスをすることを経営努力という。
しかもTBSはテレビもラジオも持っているメディア産業なのだから、その価値をどんどん世の中に流していくことができる。
では、なぜTBSはそういうことができないのか?
それはTBS、というよりもメディア産業全体の体質なのではないかと思う。
いまTBS本体は経営状態が芳しくない。ま、それは他のテレビ局や新聞社、あるいは出版社も同様だが、その最大の原因はこのブログでも書いてきたが、広告売上げが激しく落ちる一方で従業員の給料が異様に高いからである。
では、なぜこれほどまでに給料を高くすることができたかというと、広告という商売がアホのよーにボロい商売だったからだ。
拙ブログ↓
マスメディアこそが虚業だった
ではその広告収入というのはどのよな形で入ってくるかというと、誤解を恐れずにザックリ言えば広告代理店がクライアントに広告枠を売ってマージンを抜いたカネを持ってきてくれるのである。つまり収入を得る段での媒体社側の経営努力などというのは、ほとんど無きに等しいのだ。
もちろん現在はタイアップなどを企画していかなければならないので、ただ代理店が取ってくる広告を待っているだけではニッチもサッチもいかない。しかし、現在の経営上層部というのは「何もしなくてもポロ儲け」の時代のことしから知らないので、およそまともな経営手腕、経営センスがないのである。
ベイスターズ&ベイスターズファンの悲劇は、そういう経営能力のない、経営努力をする文化のない企業が親会社となってしまったことにある。要するにまともな経営などしたことがないから、何をどうすればいいのかサッパリわからないのだ(ちなみに読売や中日は、球団自体が昔から新聞販売の生命線であったから真剣に経営をやっているが、親会社の広告依存体質というのはまったく変わらない)。
TBSの場合、さらに付け加えれば、内部が相当にゴタゴタしているように見える。メディア産業全体が苦しいのは事実だが、その中でもTBSが厳しい部類に入っているのは経営に大きな問題を抱えているからだろう。
これはどんな企業でもそうだが、経営に問題を抱えていると、その会社が作った製品にはゴタゴタの影響がユーザーに見える形で必ず出るものだ。
かつて私が勤務していた会社もそうで、経営者がおかしなことをやって社内がゴタゴタし出した瞬間から、おかしくなる媒体が続出し、なかにはトップの座から、業界史に残るような部数減を記録してしまった媒体もあった。ユーザーは敏感なのである。
TBSに話を戻すと、この局はテレビもラジオも、ここ最近、首をひねるような番組や編成が多く、しかも実際に結果も悪い。業界全体が厳しい状況に突入しているなか、TBSの場合、おそらく経営者の力量が同業他社に比べても不足しているのではないかと私はにらんでいる。
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コメント
TBSのラジオ中継(ナイターなど)を聞いてると局アナが碌な知識もないくせに解説者の越権行為のような、しかも激しい口調で(あろう事か)ベイスターズの選手を思いっきりコケ降ろすのですが不快の一言です。
投稿: ichiro.jr | 2010/10/08 10:13