菅政権が抱える「正統性」という問題
先週の「久米宏ラジオなんですけど」のメッセージテーマは「大阪と私」。これを聴いていたら、泥沼に突入している尖閣諸島問題について、「大阪のおばちゃんに交渉させたほうがうまいくいくんじゃないか」というメールがいくつかあった(^_^;)。
ティッシュを配っている人に「あと3つちょーだいな」と言い、電車の座席に10センチの隙間があると「バッグを置かせてえな」と言う大阪のおばちゃん。
「ひょっとすると、ホントに大阪のおばちゃんにまかせたほうがいいかもナ」と思うほどに尖閣諸島の問題で菅政権はフラフラのヨタヨタである。
だが、私はこのフラつきぶりを見ていると菅政権の外交能力を云々する以前に、もともと政権の正統性に問題があるのではないかと思う。
そもそも、、、
今月行なわれた民主党代表選は、本来ならば小沢一郎代表の任期終了に伴って行なわれるべきものだった。
ところが小沢代表は昨年3月に「西松建設事件」で秘書の大久保隆規が逮捕されたことでメディアから大バッシングを浴びて辞任し、鳩山由紀夫が代表に就任。小沢一郎は選挙担当の代表代行に就任して衆議院選挙を圧勝に導いた。
では、この「西松建設事件」とは何だったのか? これは前エントリーでリンクを貼った動画の中で田中良紹が述べているように(19分過ぎから)、「郵便不正事件」と同じ経過をたどっているのである。
つまり昨年、小沢一郎を代表辞任に追い込んだ「事件」は現状、まったくうやむやな状態になっているのだ。
その後、大久保秘書は陸山会の4億円不記載問題で石川知裕議員と一緒に逮捕され、地検は「西松建設事件」の公判で訴因変更を申請してこれが認められた。
しかし、「西松建設事件」は、少なくとも歴史的な政権交代を経て一人の代議士が総理大臣に就任する機会を奪ったものである。その「事件」の公判がまともに維持できていなかったといのうであれば、これはもうそれだけで大問題である。にもかかわらずこの事態をメディアはまったく報道しない。
さて、昨年の衆議院選挙の勝利に伴って誕生した鳩山政権は、これもまた普天間問題でメディアからの激しいバッシングを受け、そして幹事長に就任した小沢一郎も政治資金管理団体の問題をまたまた捏造され(何しろこの件で大久保秘書の調書をとったのが前田恒彦なのだ)、結局、この二人は辞任することになる。
そうして出来上がったのが第一次菅政権だが、私はこの政権には正統性があったと思う。なぜなら、その経緯はともかく、民主党として政権運営を安定させるためには参議院選挙にどうしても勝たなくてはいけない必要があったからだ。そのための総理大臣交代は政党政治にあっては間違いではない。
ところが、、、
菅直人はこの大事な参議院選挙に記録的な大敗を喫してしまった。なにしろこの議席数の差は一回や二回の選挙では取り戻せないほど大きなものである。結果、日本の政治はこれから少なくとも十年ぐらいは不安定にならざるを得ない。
であれば、菅直人はこの時点で責任をとって総理大臣と民主党代表の座を辞任しなければならなかった。
ところが菅は代表選に出馬し、本来ならば総理大臣としてこの代表選を迎えるはずだった小沢一郎と争うことになった。そして、メディアによる総力をあげた菅直人擁護と小沢バッシングが功を奏して、この代表選の勝者は菅直人になってしまった。
このような経過を経て出来上がった第二次菅内閣は、露骨な論功行賞人事を行なった。といっても菅が評価したのは衆議院選挙や参議院選挙という国政選挙の論功ではなく、民主党代表選挙という内向きの選挙の論功である。
結果、前原誠司という国交相としてダム問題もJAL問題も何も解決できなかった無能な人物を外務大臣に起用する一方、原口一博や長妻昭(この人物は菅直人を支持していたが)といった政権交代に論功のあった人物を外すという愚行に及んだ。
党役員人事においてもそれは顕著で、枝野幸男は幹事長として参議院選挙に敗北したにもかかわらず、幹事長代理に就任し、担当する分野は選挙だという。
つまり、第二次菅政権というのは、もともと正統性のない総理大臣に対する個人的な論功、信賞必罰の論理によって貫かれているのであって、要するに徹頭徹尾、正統性のない政権である。
尖閣諸島の問題で中国が非常に強気に出る根底にあるのは、そういうこの政権の脆弱性を見抜き切っているからではないかと私は思う。
ところで、、、
この尖閣諸島の問題でメディアが一色になる一方で、大阪地検に関するニュースがどんどん減っている。
いま現在、前田恒彦は身内である検察に匿われている状況にある。そういう状況で関係者が口裏合わせをし、自分たちの組織にとって都合のいいストーリーを作っている可能性は極めて高いだろう。となると次にメディアからこの事件に関する情報が流れて来る時には、すべてこのストーリーに沿ったものになる。
そして、すでにこの件については前田という人物の個人の資質で事態を決着させようというフシが見え始めている。
私は視聴していなかったが、この事件を扱ったNHKスペシャル「堕ちた特捜検察~エリート検事逮捕の激震~」という番組では検察批判の著書ということで画面に露出したのが、江副浩正の本でもなければ佐藤優でも佐藤栄佐久でも鈴木宗男でもない、小室哲哉の本であったそうだ(※)。
尖閣諸島の問題はもちろん大事だが、そこにばかり目を奪われて大阪地検に関するニュースの監視を怠るわけにはいかない。
※参考リンク
・くろこの短語
「反省なき特捜OB」
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