参議院選挙 ~ ズッコケ軍団の奇跡 その5
有田さんは強い候補者だった。それは間違いない。
だが、強いだけで選挙は勝てない。実際、「強い」と言われた候補者が落選することなど、選挙では日常茶飯のことである。
しかし今回、有田さんは勝ち抜いた。
その最大の勝因は有田さん自身、そして選対全体が昨年の衆議院選挙での惜敗、そして私は参加していないが前回の参議院選挙での落選を教訓にして闘ったからだと思う。
実際、昨年の衆議院選挙と今回の参議院選挙とでは、有田さんも相当変わったように私には見えた。
有田さんは統一教会やオウム真理教と闘ってきたジャーナリストであって、それが最大の「売り」である。だが、一方でそのジャーナリストとしての自負、プライドがこれまでの選挙活動の中においてはマイナスになることもあったように思う。それは、おそらく有田さん自身のなかに「そこまでやらなきゃいけないのか」とか「そんなことはしたくない」という気持ちがあったからだろう。
もちろんそれが「有田らしさ」であるとも言える。が、選挙というのはやはり有権者の中に自ら入っていかなければならないわけで、個人的な印象では、昨年の衆議院選挙の、それもスタート時点では、まだ有田さんはそこの部分の踏ん切りがついていなかったように思う。
しかし今回は違った。たとえば商店街や歩行者天国を練り歩いていて、有田さんのずっと後ろでスタッフが配ったチラシを受け取ってくれた有権者がいれば、ちゃんとそこまで戻って握手をする。たとえチラシを受け取ってくれなそうな人でも声をかけてチラシを渡そうとする(実はチラシ配りというのは、ずーっとやっているとなんとなく受け取ってくれそうな人とくれなそうな人の区別がついてくる。だから受け取ってくれそうな人にだけ渡そうとすることもできるのだが、それは明らかな手抜きである)。
店舗の中で手を振っている人がいれば、店の中に入っていってチラシを渡して握手をする。ついでにその周りにいる人にも声をかけてチラシを渡す。たとえ人気がないところでもきちんと演説をする、、、
それは人によっては当たり前のことなのだろうが、その当たり前のことを今回の有田さんは普通にやっていた。こうなれば、元々知名度のある候補者だけに有権者の反応もどんどん良くなる。
一方、スタッフも日に日にまとまっていった。
候補者と一緒に大阪、北海道、九州へ遠征した面々とは、場合によっては数日間まったく顔を合わせないこともあったけれども、東京へ戻ってきた彼らを見ると結束力が高まっているし、たくましくなっていく。
とはいえ、もちろんそこはズッコケ軍団。ハードスケジュールの中で全国を飛び回りながら、遠征先で食べすぎてお腹がポコリンと飛び出してしまうスタッフもいるのであったが、、、
また、選挙カーには乗らない内勤組も公選はがきを書いたり、標記(候補者がいなくても、この「標記」があればチラシ配りをできる)を持ってチラシ配りへ出かけたりと、少ないスタッフの中で頑張った。
で、まあしかし、やっぱりこちらもズッコケ気味なところはある。
事務所へ時々やって来るK山君は、いいところのご子息なのだがあまり役に立たないタイプ(笑)。彼の心にはなぜか「ルーピーTシャツ」というフレーズが刺さったらしく、事務所へ来ると「ルーピー」を連呼している。結果、「ルーピーちゃん」というあだ名がついてしまった。
ある時、このK山君を中心に数人のチラシ配り隊が結成され大山駅前へ出動することに。
「ついてはK山君はチラシは配らないで標記だけ持っていればいいからネ」
とは事務所のY氏。
「じゃ、行ってきて。そんなに無理する必要はないけど、頑張れルーピーズ!」
かくして結成されたルーピーズはワサワサと事務所を出て大山駅前へ出動していくのであった。
さて、こうして結束を高めつつもどこかズッコケ気味な選挙事務所を強力に支えてくれたうちの一人がその2でも書いた小沢一郎政治塾出身で板橋区を地盤とする長瀬達也区議である。私はこの長瀬区議の活動ぶりを見ていて、小沢一郎の教えというのは大したものだと思った。
なにしろこの長瀬区議、タフである。彼は自分の選挙区以外の横浜、川崎方面の遊説(長瀬区議が横浜出身だったこともあったが)、そして最終日の都内遊説にも同行してくれたのだが、移動時は自分の軽のワゴンを運転している(このクルマの中に選挙道具が入っている)。そうして有田さんが商店街などを練り歩く時にはずーっとメガホンのマイクを持って喋り続ける。スポットで有田さんが演説をする時にも、前節で有田さんを紹介。
チラシ配りをしている時も、マイクで喋る、自分で配ると八面六臂の活躍。スタッフにイチャモンをつけてくる人があれば体を張って阻止して交番へ連れていく。
その活動量は驚異的で、しかも手を抜かない。
選挙戦最終日、私はこの長瀬区議を含む5人で日付が変わるまで成増駅で駅立ちをした。電車を降りてくる人や通りがかった人に向かって「お帰りなさーい」「お疲れさまでーす」「明日は投票日でーす」などとやるのである。この時点で朝から動き回っているから全員クタクタではある。
だが、これを前回やらなかったという反省もあるから、私も必死に頑張った。
で、実は事務所からは「選挙カーを移動しなければならないので23時半で終了していい」と言われていたのだが、長瀬区議は「私は0時までやるんだと思ってました」という。そして私もそのつもりだった。だから私は「じゃあ0時まで頑張ろうじゃないか! 30分足らずで悔いを残してもしょうがないし、石にかじりついてでも頑張るというのはギリギリまで手を抜かずにやることだ」とみんなに提案した。さらに「ま、帰りたい人は23時半で帰ってもいいけどさ、別に責めないよ」と付け加えたのだか、それで「じゃあ帰ります」というヤツはもちろん一人もいない。
とはいえ、ホントにみんなクタクタだし時間の過ぎるのが遅く感じる。すると残り1時間ぐらいの時点で長瀬区議は「あと1時間ちょっとしかできないなんて、私は残念ですぅー」とのたまったのであった。
しかも私を含めたズッコケ軍団は挨拶も少しずつダレ気味になっているのに、この区議さんを見るときちんと頭を下げている。私はあわててそれを見習ったものだった。
この最終日の前日、私はこちらのブログで2007年の参議院選挙の時に小沢一郎が出した檄文を読んだ。だから最終日は自分自身もとことん頑張ろうと思っていたのだが、長瀬区議を見ていると「ああ、これが小沢一郎の教えなんだナ」と改めて感銘に近い思いを抱かずにはいられなかった。
そうして私は思った。
よく小沢一郎の選挙手法を批判する人がいる。しかし小沢一郎は実は当たり前のことを言っているだけなのではないか、と。
たとえば成功した企業経営者が書いた本を読めば、みんな小沢一郎と同じことを言っている。商売とは地道に努力をして顧客の信頼を得る以外に方法はなく、たまさか何かの拍子に風が吹いて自社の売り物が人気商品になったとしても、そんなものは長続きしない。たとえ一人の客であっても、その人を大切にすれば徐々に口コミが広がっていく。一見、ムダな努力に見えても決してその努力はムダではない。
その日々の地道な努力の積み重ねを強調する小沢一郎に対して、訳知り顔のメディア人は「古いタイプの政治家」「泥臭い政治家」というレッテル貼りに必死だ。
では、なぜメディア人は小沢一郎をここまで嫌い、しかも恐れるのか。
私が至った結論は、広告という圧倒的に濡れ手に粟の虚業と既得権をベースに暴利をむさぼってきたメディア人にとって、地道な努力の大切さを説く小沢一郎というのは理解の範疇外であって、しかも自分たちとは真逆の体質の持ち主なだけに、忌避すべき得体の知れぬ存在なのではないかということだった。
話を戻すと、今回の有田選対はズッコケ軍団ではあったが、しかし全員が結束して最後まで頑張り抜いたという意味で、まさしく小沢一郎の教えを実践していたのだと思う。その結果が民主党比例区で谷亮子を抜いてのトップ当選だった。少なくとも私はそう思うのである。
さて、次回はこの選挙期間中に私が抱いた重大な疑問。
新聞社の押し紙と折込チラシについて書こうと思う。
つづく
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
有田さんを応援しています。民主党は自民党ができない政治をやれば支持は後から付いて来る
投稿: 通りすがり | 2010/07/21 14:21