壁は崩れ始めた(1)
小沢一郎不起訴についてはすでに多くのブログで言及され、twitter上でも議論されている。
私が愛読しているブログのみなさんの意見はどれも首肯できるものばかりで、さらに付け加えることはないのだが、少しだけこの件に関する感想を書いておこうと思う。
私は1月の中旬に↓のエントリーを書いた。
ここで言いたかったことは、この国を長らく支配してきた霞が関独裁の急所である高度な情報コントロール(=国民コントロール)システムが、その機能を急速に失いつつあるということだ。
そのシステムとは、官僚と合体したメディアが作り出す“空気”による印象操作である。
今回の例でいえば、小沢一郎は田中角栄、金丸信という金権政治家の直系であり“古い自民党的体質”を引きずった政治家であり、いかがわしいカネをもらっているに違いない、、、という空気を醸成することで、それによって権力(霞が関)は小沢一郎という、自分の目の前に現れた手強い相手の政治生命を殺そうとした。
おそらく――。
これが10年前であれば、いや5年前であっても、権力(霞が関)はその目的を達成することができただろう。
しかし今回はできなかった。つまり国民をコントロールすることができなかった。
これまでどんなにデタラメをやっても、およそ他の国なら大暴動が起きるであろう不正をやっても、おとなしくお上の言うことを聞いていた国民が、このたびはコントロールできなかったのである。
その一つの象徴が、地検による週刊朝日編集長の出頭要請とその撤回だと思う。
これはテレビ、新聞、雑誌という媒体の中で、ほとんど唯一、反検察の論陣を張ってスクープを飛ばした(その後、追随する雑誌もあったが)週刊朝日の編集長に、検察が「捜査妨害だ」と言いがかりをつけて出頭要請をしたものだ。
ところがこの話は上杉隆のつぶやきによってtwitter上であっという間に広まる。そして「#syutto」というハッシュタグもすぐにつくられ大賑わいとなってしまった。結果、検察に対して抗議が殺到し、編集長の出頭要請を取り下げざるを得なくなってしまった。
・低気温のエクスタシーbyはなゆー
〔日本〕ツイッターが「国会の法務委員会」を動かしたらしい
東京地検特捜部が「週刊朝日」編集長への出頭要求を取り下げていた
もちろん、これだけに限らない。さまざまなニュース番組や新聞記事についてtwitter上で議論が巻き起こり、それがあっという間に口コミで伝わっていく。
今回の小沢騒動は、昨年3月の大久保秘書逮捕に端を発している。この時からネット上では多くのブロガーがこの捜査に疑問を呈していた。結果として小沢は民主党代表を辞任したが、選挙担当の代表代行として衆議院選挙の勝利をもたらし政権交代を実現した。そして今回の石川議員らの逮捕と起訴。
この間、権力による小沢潰しの意志は一貫していたわけだが、昨年3月と今回との違いはtwitterの力の有無であるように思う。
もちろん昨年3月時点でtwitterはすでに存在していたし私もアカウントを持っていた。実は私はわりと早い段階でtwitterのアカウントはつくっていたのだが、140文字以内でつぶやくことのどこが面白いのかさっぱりわからず放置していた。そのtwitterを少しだけ使ったのが衆議院選挙での有田芳生さんの選挙応援時だ。折しも購入したiPhoneを持ちながら選挙の手伝いをした。
そして個人的印象では、昨年の夏場以降からtwitterは大ブレークしたわけだが、これによって情報の伝達度が圧倒的に早くなった。
昨日、twitterを見ていたら「twitterに比べるとブログは遅いメディアだ」とつぶやいていた人がいたが、まさにその通りである。しかも誰でもがつぶやけるわけで、既存メディアがおかしな報道をすれば、その内容はあっという間に伝わる。
そうしてしばらくすると(といっても数時間以内というレベルだが)、twitterで流れたニュースや議論を分析して解説してくれるエントリーがいろいろなブログにアップされる。
その結果どういうことが起きたか。
今回の小沢不起訴において、多くの既存メディアが「意外だった」というニュアンスの記事や識者のコメントを掲載した。しかし私は前掲したエントリーの中で「今回の強制国策捜査は失敗するのではないかと私は思う。」と書き、その通りになった。
別に自慢をしているわけではない。ネット上に流れている情報を追いかけていれば、大久保秘書逮捕も、石川議員逮捕も無理筋であって、まして小沢起訴などは暴挙であることは誰にでもわかることだったのだ。
私が見ているブログやtwitterの書き手には、もちろん優秀なフリーのジャーナリストもいる。が、そういう人ばかりではもちろんない。ほとんどの人はメディア関係者ではないわけで、つまり既存メディア所属の“ジャーナリスト”のように日々取材活動をすることを職業としている人ではない。
今回、検察によるリーク批判が高まった時、多くの新聞社がそれを否定し、地道な取材活動を続けた結果が記事であるという主張をした。ところが、そうした取材活動の結果として書かれた記事よりも、公に流れる情報だけを頼りに状況を分析している一般の人々の方がはるかに正し結論を導き出している。
こうなるとメディアによる取材活動とはいったい何なんだろうか?と思わずにはいられない。
(つづく)
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コメント
管理人さま
いつもありがとうございます。
山口編集長の件ですが、彼自身は「出頭要請」の事実を否定しており、事の経緯を下記サイトに説明しています。
http://www.wa-dan.com/yamaguchi/
また今回の検察やマスコミの行為に対する疑問を、率直に述べており、かつ、とても大事なポイントを指摘していると思います。
大手メディアに属するジャーナリストで、今回の件に関して我々が納得できるような説明をしてくれた人が他にどれだけ居たでしょうか?
投稿: 悪代官 | 2010/02/07 17:16
前に書き込みましたがやはり検察の負けでしたね・・当たり前って言えば当たり前ですが・・
でも小沢さんはやってますよ(笑)
故田中総理大臣と小沢さんの違いは似たようなタイプだけど志が違うな~と思う・・
今年の参議院選挙は民主党の絶対優位はなくなりましたね・・と言うか国民が選挙に行ってくれるかどうかそちらのほうが心配です
自民党も駄目・民主党も看板の割には言ってることとやってることが違うし誰がなっても日本は駄目・・なんて思ってもらったら困る・・困る
投稿: 大和は国のまほろば・ | 2010/02/07 09:34
twitterの力が今回の結果に大きく寄与しているとい思います。私も遅まきながら昨日twitterに登録しました。まだよくわかりませんが、情報の伝達即効性、ネットワークコミュニケイション、どこでもすぐに発信できるよおですので、ブログでは弱い機能が多くあるようです。
週間朝日や上杉隆さん、植草一秀さん、副島隆彦さん、twitterやブログ発信者の多くの方々のおかげで国民が選んだ政府がかろうじて倒されずにすみました。しかしこれからも悪徳ペンタゴンは更にもっと激しく攻撃してくると思います。
石川議員の逮捕、起訴の理由がまったくわかりません。こんなことを主権者は許しておいて良いんでしょうか。
投稿: elton | 2010/02/06 22:32
検察の恐怖政治と他社との競争によって
記者クラブは検察からのリークを嘘でも報道しなければならなかった
そこには矛盾があり噂レベルがあるのにもかかわらず
雨あられの様に、検察の意に沿った小沢犯罪者説の
一面しか提供できなかった
一方の一般人は何ら利益関係がないので自由な感受性で
この事件と画一的な報道に違和感を持ったと思う
そしてネット等でブログやフリー記者や識者や
弁護士等の多様な意見を見聞して違和感が何であったか納得した
それをまたネットに自らが発信して拡散していった
国民の知る権利、真実とは何かという人間の自然な
欲求に応えたのはどちらかは言うに及ばないと思う
新聞TVなどの旧大手メディアの大敗北だったことは
ブログ主に同意である
投稿: ZOO | 2010/02/06 17:50