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2009/04/15

過ちを改めるにはばかることなかれ

明日売りの週刊新潮は、一連の朝日新聞阪神支局襲撃事件を誤報と認め、10ページに渡る検証記事を掲載するという。

・asahi.com
週刊新潮、誤報認め「お詫び」 朝日新聞襲撃手記

・有田芳生の『酔醒漫録』
「ニセ実行犯」と「週刊新潮」

かつて週刊宝石が3億円事件犯人を発見した云々という記事を掲載し、雑誌の信用を著しく落としたことがある。結果、この雑誌は休刊してしまった。
今回の週刊新潮がどういう結末を辿るかはわからないが、この号はおそらくは売れるだろうとして、その先には苦難の道が待ちかまえているだろう。あらゆる商品にとって、信用を毀損することほど恐ろしいことはない。
しかし、それでもなお、今回、週刊新潮が誤りを認めることについては、その勇気を評価していいと思う。
飛ばし記事を書いてしまったらそれを認め、あとは地道に読者の信用が回復するまで頑張るしかない。

以下はこの件に関する4月1日の朝日新聞社説である(リンクがなかったので入力した)。

*****
「虚言」報じた新潮の責任

 未解決の殺人事件で、「真犯人」がメディアに名乗り出てきた。その証言を報道するにあたっては当然、真偽を詳しく吟味するのがメディアの責任だ。だが、週刊新潮にとってはそうではないらしい。
 87年5月3日、憲法記念日に記者2人が殺傷された朝日新聞阪神支局襲撃事件をめぐり、週刊新潮は実行犯を自称する島村征憲氏の手記を1月から4回にわたって掲載した。
 --在日米国大使館職員から襲撃を頼まれ、多額の現金と散弾銃を渡された。その銃で阪神支局を襲って2人を殺傷し、名古屋本社寮襲撃や静岡支局爆破未遂事件も自分がやった。
 「犯行の指示役」とされたのは米国大使館を昨年退職した男性だ。島村証言が真実ならば事件の核心を握るキーパーソンである。
 ところが、元職員は新潮社に「手記はまったくの虚偽」と抗議し、訂正と謝罪を求めた。これに対し、新潮社は先月、現金を支払うことで和解した。金銭で解決を図ったのは、誤報を認めたと考えざるを得ない。
 だが、新潮社は和解内容を明らかにせず、取材の経緯も説明しようとしない。報道に携わる出版社の責任を意識しているとは言えない。
 そもそも週刊新潮が島村証言の裏付けをとろうとしたのかすら疑わしい。犯行声明を書いたと島村氏が名指しした右翼活動家の周辺など、関係者に取材をした形跡がほとんどないからだ。
 当然なすべき取材をしていれば、島村氏の主張が「虚言」であることはわかったはずだ。実際、朝日新聞社が島村証言の裏付け取材をしたところ、事実と異なる点が数多く含まれていた。
 捜査当局の努力にもかかわらず、一連の事件はすべて時効になった。だが朝日新聞社は、今も真相解明に努めている。それは同僚の記者が殺されたからというだけの理由ではない。言論を暴力で封じ込めようとする、成熟した民主主義社会にはあってはならぬ犯罪への怒りからだ。
 「虚報」は事件の真相を追及しようとする努力をさまたげ、混乱させるものだ。伝統ある週刊誌の一つがこうした報道をし、過ちを一向に認めないのは残念というよりも悲しい。
 このところ、週刊誌の記事で名誉を傷つけられたと訴えた裁判で、週刊誌側に賠償を命じる判決が相次いでいる。いずれも取材が十分に尽くされていなかったことが指摘された。
 週刊誌報道が、不正の告発や重要な問題提起をした例は数多い。だからこそ、根拠の薄いうわさや危うい証言に頼らない、慎重な取材による事実の発掘という基本はゆるがせにできない。
 今回の週刊新潮の報道は、メディアの信用を著しく傷つけた。新潮社は、その責任を明確にすべきである。
*****

御説ごもっとも、ではある。他の新聞社も同様に週刊新潮の裏付け取材不足をこぞって指摘している。
たしかにこの事件は言論機関に対する重大な事件だったとも思う。
しかし、、、
それでもなお、私はこの社説に違和感がある。
だったら、いま現在進行形であんたがたがやっている小沢秘書逮捕報道はメディアの信用を著しく傷つける類のものではないのか? 検察のリーク情報の裏付け取材はしたのか? それをすることがメディアの責任ではないのか?
今回の週刊新潮は重大なミスを犯した。それに対する異論はないが、他人がやったことは指弾するが、自分たちのことを問われると口をつぐむというのであれば、「メディアの責任」という言葉はそのまま自分たちに跳ね返ってくることを朝日や他の新聞社は深く認識するべきだろう。

そうしてもう一つ。
東京地検特捜部さんへ。
今からでも「今回の捜査はミスでした」という勇気があなたがたにはないんですかね?

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