« 小沢関連~民主党(前原一派をのぞく)は自分たちの言葉で世論調査の数字を変えてみろよっ! | トップページ | 小沢関連~「白昼堂々の権力犯罪!?」 »

2009/03/27

小沢関連~「検察は説明責任を果たしているか」

これはカネを払って見る価値がある。
NHKの受信料なんぞよりもはるかに価値がある。

・マル激トーク・オン・ディマンド 第416回(2009年03月26日)
検察は説明責任を果たしているか
ゲスト:郷原信郎氏(桐蔭横浜大学法科大学院教授)

一連の小沢関連報道、ニュースのなかで、郷原氏の冷静、かつ理路整然とした主張、解説に私は単に納得するだけでなく非常に感銘を受けた(郷原氏はなんと現・東京地検特捜部長の佐久間達哉と同期なのだそうだ)。
今回のマル激でも郷原氏は特捜部が小沢秘書逮捕にいたった経緯、特捜部内部が抱えている問題を実にわかりやすく話してくれており、まさに目から鱗、食い入るように見てしまった。

以下要約。

*****
40人規模の人員を抱えながら事件日照りが続き、たまに手を出す事件では大やけど。存在意義そのものが問われはじめた特捜部は今度こそということで西松建設の社長を外為法違反という、これまた形式犯で逮捕した。
しかしここからも何も出てこない。ムリムリやろうとした長野県知事についても秘書が自殺してしまってやれない。完全に追い込まれていたのが3月の初めの状態だった。その追い込まれた状態で最後にやるとしたら、小沢しかなかった。したがって最初から小沢狙い撃ちにしようとして、いろいろな事件を掘り起こそうとしていたわけではなかった。さすがにそれをやろうとすると内部から異論が出る。が、これがやれるのかやれないのかと判断したときに普通ならこんな選挙を控えた時期にはやれない。
やれるとすると小沢が徹底抗戦しないで、頭を下げて辞任をして責任を取るという場合である。そういうような判断で事件に入ったのではないか。これが誤算だった(※でもやっぱりこれは狙い撃ち、国策捜査論に対する反論としては弱いと思う)。
では、どのようにして小沢の身柄をとるか。政治資金規正法で政治団体の会計責任者が処罰された場合に、代表者について選任及び監督の過失がある場合には罰金刑が課される。今回の場合、代表者は小沢で、政治資金規正法では罰金でも科せられると公民権停止、つまり議員失職になる。それをやろうとしたのか、それともそれでやるという構えを見せれば議員失職になったらとんでもないから(代表を)辞めるという見通しだったのかはわからないが、むしろ後者ではないか。そのあたりのことを非常に正確に書いているのが3月8日の産経新聞記事。この記事が、今回の事件では非常に重要である。
*****

その記事↓
小沢氏監督責任も 起訴なら失職の可能性 政治資金規正法

リンクは張ったが、この記事は全文掲載する。

*****
 小沢一郎民主党代表の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部が小沢氏本人にも規正法違反の疑いがあるとみていることが7日、捜査関係者の話で分かった。規正法は政治団体の代表者に、会計責任者への監督責任について罰則を設けており、これに違反する疑いがある。特捜部は政治資金収支報告書の虚偽記載への関与の有無の解明と並行して、監督責任についても調べを進めるもようで、監督ミスが認定され、起訴された場合には、小沢氏は最終的に衆院議員を失職する可能性も出てくる。小沢氏への参考人聴取でも、監督責任について確認するとみられる。
 地検によると、西松建設がダミーにしていた政治団体は、「新政治問題研究会」(新政研)と「未来産業研究会」(未来研)。陸山会の会計責任者で小沢氏の公設秘書、大久保隆規容疑者(47)は平成16年3月~19年3月、西松から受領した2100万円を新政研と未来研からの献金とする虚偽の記載を、政治資金収支報告書にするなどした疑いが持たれている。
 規正法は、政治団体の代表者が、会計責任者の選任と監督について相当の注意を怠っていた場合、50万円以下の罰金を科すと規定している。起訴されて規正法違反罪で罰金刑になると、裁判官の判断によっては公民権が停止され、被選挙権を失う。国会法の109条は、現職の衆院議員が衆院議員選挙の被選挙権を失った場合、自動的に失職すると規定している。

 特捜部は15年、元参院議長で埼玉県知事だった故土屋義彦氏の資金管理団体の虚偽記載事件で、会計責任者だった土屋氏の長女が起訴された際に、土屋氏から事情聴取。土屋氏は監督責任を認め、特捜部は土屋氏の監督ミスを認定した。ただ、土屋氏は知事を辞職したことなどから、特捜部は「反省の情がみられる」として起訴猶予処分とした。
 捜査関係者によると、特捜部では、大久保容疑者が西松側に直接、献金を要求した上、金額などを具体的に指示していた悪質性を重視。12年から長期間にわたり、大久保容疑者に会計責任者を任せていた小沢氏の監督責任は、決して軽くはないとみているもようだ。
*****

この記事に対する郷原氏の解説は以下のとおり。

*****
 特捜部がこのようにやると捜査関係者が言っている。しかもこの捜査関係者はラインの人、特捜部に対して何らかの指示をできる人が言っている。問題はここの監督ミスが認定されたら失職する可能性が出てくるというところで、これがそのとおりだったらまだいい。正しい捜査の見通しを示しているだけなんで。(しかし政治資金規正法では)そうじゃないんですよ。この責任というのは監督(責任)だけじゃないんです、(政治資金規正法では)選任及び監督の両方に過失がなければ、これは罰金が取れないんですよ。失職もさせられないんです。
 監督責任というのは企業がよく法人罰といって罰金刑になりますよね。企業そのものの責任というのは役職員に対する選任または監督で過失があった場合に罰金刑ということですから通常は監督責任を問題にするんですよ。
 ところが(政治資金規正法のように監督と)選任過失(の両方が必要)と言われると、選任の段階で過失がある場合はダミーみたいな、なんにも仕事をさせない予定の人間を選んだとか、まったく無能力な人間を選んだということしかありえないし、実際にはほとんど考えられないんですよ。
(逆に)「選任または監督」にすると、ほとんど失職になっちゃうんですよ。会計責任者の起訴、即代表者の失職になっちゃうんで、そうすると逆に代表者になれなくなっちゃうんですね。それで最初からダミーを会計責任者に据えられるようなしり抜けを防止しようということでつくった規定なんです。ですから一般の業罰規定などとは主旨が違うんですね。
 ところがここ(この記事)にそのことが書いていないんですよ。監督責任だけで失職させられるように(この記事には)書いてあるんですね。そうだとするとですね、この段階でそういう意図を検察の側が持っていた可能性があるんですね。これによって失職に追い込めると。
 しかも非常に注目すべきことはこの記事の中にはもう一つ過去にも同じようなことをやって辞めた大物政治家がいるということまで書いているわけです。同じやり方を使ったことがあるんだと。このときにもちゃんと知事が辞職したんだと。
 ところがこのときには辞職に追い込んで起訴猶予処分にしたから(法律的に)選任、監督のところをつめてないんですよ。ですから私は可能性として大きいのは、この時もその選任、監督のところをつめないで辞めさせた、今回も同じようなやり方でやろうとしていてつめていなかった(監督過失だけでいいと思っていた)。だから場合によってはもし(自発的に)辞めないんだったら失職させてやるぞと思っていたとすると、これは完全な初歩的な基本的なミスです。
 もし逆に(選任、監督の両方の要件が必要だと)わかっていてこういうことを言ったとしたら、これは騙しというかいっそう悪質です。ですからこの産経新聞の記事はものすごく重要だと思うんですよ。これは今回の事件の評価にかかわる大変重要な記事です。
*****

この記事が出たのと同じ日、郷原氏はサンデープロジェクトに出演したという。そこで平沢勝栄が「監督過失が認められれば失職」というようなことを言い出したので、郷原氏が「それは違いますよ」といって説明をすると、その後、平沢は何も言えなくなってしまった。そうして、それを境に小沢代表聴取という記事もピタッとやんでゼネコンの東北の関係者一斉聴取という記事が出始める。

つまりこの捜査は最初から検察の事情で始まり、法解釈の甘さ、無知から泥沼化していったという。
しかし野党の党首を狙うからには法務省とも打ち合わせをしているのではないかという疑問については、もちろんしなければならないが、これは事件着手後でもいいことになっているという。そこできちんと逮捕前に法務省とつめているかどうか、もし事前に質疑をしていれば選任の過失についての思い違いをしていればすぐにわかる。したがって事前に質疑をしていたかどうかは疑問で、普通に考えると質疑をしていないということはあり得ないが、現在の体制だと質疑をしなかった可能性はなくはないとのこと。

また郷原氏によれば、現在、世の中の期待値と特捜検察の内実との間には大幅な乖離があるという。したがって国民やマスコミが期待している特捜部による政界の疑獄捜査、巨悪との対決などというのは夢、幻だそうだ。しかし、それができるという幻想は持たせ続けないと、存在意義そのものを問われてしまう。これはもういってみれば企業経営が完全に破綻しかかっている状態で、そこで本当に必要なのは事業全体を見直して経営革新をすること、イノベーションが必要なのだがそれができない。もっとも実はそのチャンスはあって、それはまさに郷原氏たちが手がけた自民党長崎県連事件だという。この事件では捜査手法にイノベーションがあり、それを郷原氏は特捜検察に継承して欲しかった、できれば自分が特捜部へ行ってそれを広めたかったが、それが企業と同じで、いままで通りの経営でやっていた人たちに受け入れられなかったという。しかも上層部は自分たちが苦しい状況にあるということがわからない。世の中の期待値と自分たちの力に乖離があるかもわからない。なぜかというと自分たちの周りを特捜サポーターのマスコミが固めて裸の王様だから。そのために状況はますます深刻化する。
と、ここらへんの解説は私なんぞはまったくもって身につまされる話で、おそらく郷原氏はその旧来型の体質、トップのダメダメぶりに呆れ、失望して検察を去ったのだろう。

最後に付け加えておくと、郷原氏は仙谷由人を応援しており、むしろ反小沢だという。したがって最初に秘書が逮捕されたと聞いたときにはかえって良かったなと思ったそうだ。が、よくよく見ると検察の問題がとんでもない。したがっていまでも小沢の政治手法には批判的であるが、しかしいまは先決事項が検察の問題で、検察の捜査を日本という社会がこのまま容認してしまったら、民主党も自民党も小沢も仙谷もない、政治というものが死んでしまう可能性がある(ここらへんをほとんどの政治家がわかってないね)。まずそれに対してはもっとも適切な方法で対応してもらいたい。小沢の判断がそういうもとでの判断だというのであれば、いまの段階での続投は間違っていない。他の民主党議員もいま起きていることの深刻さをよく認識するべきだとのこと。

むしろ反小沢の人が言うからこの言葉は重い。

|

« 小沢関連~民主党(前原一派をのぞく)は自分たちの言葉で世論調査の数字を変えてみろよっ! | トップページ | 小沢関連~「白昼堂々の権力犯罪!?」 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 小沢関連~「検察は説明責任を果たしているか」:

« 小沢関連~民主党(前原一派をのぞく)は自分たちの言葉で世論調査の数字を変えてみろよっ! | トップページ | 小沢関連~「白昼堂々の権力犯罪!?」 »