紙媒体を襲った「日産ショック」
今日の日経朝刊(13版)1面トップは、日産自動車が収益改善に向けて主力車種であるマーチの生産をタイに全面移管するというニュースだった。これにより原価を三割削減し、円高を活用して日本に輸入するという。また収益環境の悪化にともなって新車の開発件数を二割削減、役員報酬も大幅に減らして事業構造を抜本的に転換するという。
そうしたなか、この記事には書かれていないが、新聞、雑誌という紙媒体を「日産ショック」が襲っている。
日産は来年度からの宣伝を電波とWebのみに絞り、新聞、雑誌という紙媒体はすべてやめることになった(チラシ、若干の専門誌はのぞく)。
これはつまり、新車を発表しても新聞、雑誌の純広告はつくらないということである。
日産ほどのクライアントになると、各媒体に自社の広告枠を持っている(広告業界では「実績」という)。しかも雑誌
の場合でいえば、その少なからぬ面が特殊面である(表2や表4、表3、また目次前の見開きや目次の対向面など、通常のページよりも広告価値の高いとされる面。通常の広告料金よりも高めに設定されていることが多い)。
特殊面は雑誌全体のイメージにもかかわってくるものであるだけに、どんなクライアンにでも売れるという性質のものではない。
しかも世は未曾有の不景気の真っ只中。ただでさえハイブランド系クライアントの宣伝予算カットなどが響いているなかで(もちろんトヨタも宣伝予算は相当に削っている)、今後、雑誌においては特殊面のクライアント探しが課題になるだろう(週刊誌はすでに相当前からそうなっているが)。
さらに今回の件が媒体側にとってつらいのは、日産が他の自動車メーカーに比べると紙媒体を重視してきた会社だからだ。したがって日産は特殊面以外にもタイアップ広告や特殊企画の広告(通常の純広告ではなく仕掛けのある広告)にも積極的だった。だが、今後はそういう予算もほとんどなくなる。
電通の試算では2009年、ネット広告が新聞を抜くという。
http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200901080013a.nwc
http://blog.livedoor.jp/targeting/archives/51103054.html
昨年12月単月の電通の売り上げを見ても紙媒体は厳しい状況であることがよくわかる。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2009/pdf/2009003-0113.pdf
電通でこの数字だということは、日産を一社で扱っている博報堂は今後どうなるのか。少なくとも新聞局と雑誌局は相当苦しいことになるだろう。
2009年は新聞社、出版社、そうして広告会社を取り巻く状況が劇的に変わることは間違いない。そして昨年以上に何が起きても不思議ではない。
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