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2008/03/12

日曜ゼミナールのテーマは「キューバ共和国」

3月いっぱいで終わってしまう「伊集院光 日曜日の秘密基地」。残すところあと3回となったわけだが、前回放送の日曜ゼミナールのテーマは「キューバ」。これは私としては聴かないわけにいかない。そこで、いつもは番組を録音すると最初から聴いていくのだが、まず日曜ゼミナールから聴いてみた。

まずは伊集院の疑問、「なんでキューバなの?」。ま、これは当然の疑問で、日本人の一般的感覚からすればキューバという国のこと自体を知らない。カストロは有名でも、いったいどんな人物かをきちんと理解している人は少ないだろう。久米宏でさえ、かつてニュースステーションでカストロのことを「バカは死ななきゃなおらない」といったそうである。
したがって、多くの人のイメージはカストロという反米の独裁者が50年の長きにわたって支配している共産主義国家で国民に自由はなく抑圧されて亡命者の多い、北朝鮮とよく似た国といったところだろう。
実際、日曜ゼミナールでも言論の自由はないという解説をしていたが、、、
以下、八木啓代さんの著書「喝采がお待ちかね」より。


「キューバは、俗に『歌って踊れる社会主義』というやつで、ラスベガスも真っ青のキャバレーはあるわ、ディスコはあるわ、したがって旧東欧圏の人がよくパニックを起こすようなところだったのだ。ちなみに、米国からのラジオは全部はいるので、キューバ人はビルボードの最新ヒットにも、うっかりすると日本人より詳しい。そもそも、キューバ人から『歌』と『踊り』と『冗談』と『政治批判』と『すけべえ心』をとっぱらったら、それはキューバ人ではない」

ちなみに日本は民主主義国家であって言論の自由が保障されていることになっているが、私の考えではこの国ほど警察が国民を監視している社会というのはそうはない。

日曜ゼミナールに話を戻すと、番組ではキューバが社会主義国家になったいきさつに触れていた。それはアメリカの裏庭がどうして社会主義化したかという話できわめて教科書通りの解説であったが、、、
再び八木啓代さんの本より。

「逆上したケネディは、キューバを機雷封鎖した。あくまで逆らうならば飢え死にしろというわけだ。このとき、事態を見守っていたメキシコで、自然発生的に数万人の大デモが起こる。『隣人を見殺しにするな』
このデモの迫力に負けて、事態の静観を決め込んでいたメキシコ政府は、食料船をキューバに向けた。時を同じくして、やはり事態を静観していたソ連のフルシチョフは、キューバへの食料援助を決定する。そして、カストロは演説をした。
『われわれが独立を求めることそのものが共産主義だとゆーのなら、ええい、共産主義者とはわれわれのことじゃい』
と、これがキューバが『共産主義』にとなったいきさつである。まあ、事情が事情なので、だからキューバ人のいう『社会主義』なり『共産主義」の概念や実態は、ソ連や東欧や、日本のそれとはだいぶ違っているのだ。むしろ、民族独立の悲願のようなニュアンスが強い」

こうしてキューバは社会主義への道を歩み、結果として教育と医療はタダという国が出来上がったわけである。私なんぞはこれだけでも大変なものだと思うのだが、日経はカストロ引退に際して先日も触れたように、「定評のある医療制度など一部を除けば、カストロ氏が残した財産はほとんど消え去ったといっていい」と書いている。この記事を書いた記者の見解では「医療」というのは政治全体から見ればごくごく「一部」の問題ということらしい。

しかし--
多くの日本人が現在、何について一番不安に思っているかといえば、病気になったときに満足な医療を受けられるのか、それだけの金銭的な余裕を持てるのかということである。残念なことに日本の場合、答えは「ノー」だ。医療崩壊は信じられないスピードで進み、年金制度はすでに崩壊。昨日の新聞を読むと年金回復を申し立てても却下されるケースが急増しているという。厚労省の官僚は、自分たちが壮大な詐欺行為を働いているにもかかわらず、「本当に年金に加入していたというのならば50年前のことでも証拠を持ってこい」と言うそうだ。
このままいけば、病気になっても満足な医療を受けられない人の数は増えこそすれ減ることはない。
もっとも、いわゆる新自由主義を標榜するような連中に言わせれば、それは個人の自助努力が足りないためであって自己責任ということになるのだろう。
 
再び日曜ゼミナール。伊集院はキューバがベネズエラから石油の供給を受けるかわりに2万人の医師団をベネズエラに送っているという話を聞いて「なんだかわくわくしてくる話だな」ともいっていたのだが、たしかにキューバという国のやっていることを見ているとわくわくする。
経済制裁によって化学肥料が入ってこなくなると有機農業大国になる一方で、日本では保険がきかないために高額の医療費をとられる近視矯正のレーザー手術もタダできる国。

日経は2月27日の社説で「冷戦の終結とともにカストロ氏の輝きは色あせた。キューバ経済は破綻の色を強め、自らの独裁の弊害の方が目立つようになった」と書いている。が、自民党&官僚独裁政権のおかげで日本の経済はキューバ以上に破綻しているではないか。福祉のレベルも圧倒的に低く、にもかかわらずこの国ではさらに福祉を削ることにやっきとなっている。
この社説はまた「現在のキューバは、自由な貿易や投資、人の移動を前提とすると経済のグローバリズムに対応した改革とは逆の方向に漂流しているように見える」とも書いている。まるでグローバリズムに対応するのがいいことのようであるが、その結果、今の日本のようになってしまうのならば、そんなものに対応しないほうがいい。

もちろんキューバのやっていることのすべてを肯定するつもりはない。が、少なくともいまの日本のように「キューバは独裁国家の貧しい国で日本は経済大国」というステレオタイプの見方からは脱するべきだと思うし、もうちょっとキューバという国の本質を知った上で、日本と比較してみるべきである。

そういう意味で、今回の日曜ゼミナールはちょっと食い足りない部分もあったけれどもいいテーマを選んでくれた思う。

それにしても、、、
「日曜日の秘密基地」が終わってしまうのは返す返すも残念、、、だ。

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コメント

以前、キューバの教育改革を特集したテレビ番組を見ました。

びっくりしました。北欧型教育スタイルを模索中だと言うのです。

無論この国も、イデオロギー教育(キューバのことなので、中身はかなりいい加減だと思いますが…)が重要視されていた時代が長く続いていたのですが、今は子供達に様々なテーマでディスカッションさせ、自分の頭で考えてそれを他人と共有する訓練に徐々に比重を置き始めているとの事でした。

他にも都市農業といい食糧自給といい、日本が学ぶべきネタは幾つかありそうです。

投稿: 悪代官 | 2009/12/01 02:53

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