先週金曜日の深夜、若い友人に勧められたDVD「引き裂かれたイレブン~オシムの涙」を見た。これは旧ユーゴスラビアの内戦、分裂という政治状況に翻弄されたサッカー・ユーゴ代表チームを何人かの選手のインタビューを軸に描いたドキュメンタリーである。「オシムの涙」という文言はウソではないが、日本においての商売を意識したタイトル付けだろう。
監修は「オシムの言葉」の著者・木村元彦。この人の著書には他に「誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡」、「悪者見参―ユーゴスラビアサッカー戦記」 などがあり、いずれも興味深く読んだ。平和呆けした私が旧ユーゴの問題について最小限の知識を持ち得たのはこれらの本のお陰であり、またそういった本を読もうというきっかけをつくってくれたストイコビッチ(現・名古屋グランパス監督)、そしてオシムのお陰でもある。
このDVDできわだっているのはボバン(クロアチア)の強い民族主義的な思想である。彼は旧ユーゴ代表の仲間に対して悪感情を持っているわけではないが、しかしユーゴ代表そのものにはなんの未練もなく、クロアチアの代表であることに誇りを持っている。
これは私のような人間にはなかなか理解しがたい部分なのだが、一方で他の選手たちはどちらかというと政治とサッカーを切り離して考えている様子がうかがえる。さらに監督だったオシムの「イタリアW 杯でもしユーゴが優勝していたらその後の政治状況は違っていたかもしれない」というコメントは、彼が本気でそのために勝とうとしていたことを強く感じさせ心に刺さる。
さてこのDVDを見た翌日、いつものように散歩をしながらパソコンで録音しW42Sに転送した「久米宏ラジオなんですけど」を聴いているとゲストコーナーは初めて名前を聞く人であった。