キュウリ君-今年一番おもしろかった人
相も変わらず世の中はろくでもないことばかりである。
私は基本的に社会はわずかずつでも良くなっていった方がいいと思うし、そのための努力をするべきだと思っている(といいつつ実は何も大したことはしていないが)。
しかし、こう世の中がおかしくなっていると、いっそのこととんでもない大破局が来ないかナと思う時もある。そもそも官僚も政治家も財界人もこれだけデタラメをやっているのに、こちとらなんでまじめに住宅ローンなんぞを返済しなければならないのだろか、こんなもん払う必要ないんじゃないの、、、なんて。
おそらくこんな思考を突きつめていった先に小泉的、あるいは飯島的なニヒリズムがあるのだろう。
そもそも今の世の中、まともな人でもちょっと自分の身の回りのこと、たとえば会社のこと、老後のこと、家族のこと、親の健康のことなどをまじめに考え始めたら簡単に鬱になる。そうならないのは、もちろんまじめに考えていないこともあるが、もう一つは世の中に「笑い」があるからだろう。
というわけで今日の時点でまだ11月の半ばではあるが、今年私がもっとも笑った話(しかも印象に残った)をした人というのちょっと紹介してみる。
個人的には落語を聴くのも趣味の一つなので、今年もいくつかの落語会や寄席に行ってプロの噺家に十分に笑わせてもらった。が、本日紹介したいのは素人さんである。それもTBSラジオ「宮川賢のパカパカ行進曲」にきわめて短時間出演しただけなのであるが、、、
彼の名はキュウリ君。31歳の農家である。しゃべり方は朴訥としており北関東あたりの訛りががちょっとあったように思う。オンエアは9月29日。この日のテーマは「はじめての場所で大失敗」である。
ちなみにこの「パカパカ行進曲」というのは、毎週、テーマに沿って経験した自分の馬鹿話をリスナーが電話で宮川賢に話し、このなかで一番面白かった人がMVBになるというものである。
彼は登場した時からちょっと面白くて、
宮「お名前は?」
彼「あ、キュウリです」
宮「おいくつで?」
彼「あ、31です」
宮「キュウリ君と呼んだほうがいいんですかね?」
彼「あー、もうなんでも大丈夫です」
宮「お仕事なによ?」
彼「農家です」
宮「何をつくってるの?」
彼「キュウリです」
というような会話をした時点でスタジオの中でも、そして聴いている私も笑ってしまった。
宮「そんなキュウリ君31歳。今日のテーマははじめての場所で大失敗、何がどうしてどうなった?」
彼「あのですね、僕、はじめて映画を映画館に見に行った時の話なんですけど、彼女と二人で行ったんですね。それでちょっと勝手がわからないといえばわからなかったんですよ、でもまあ映画ぐらいだったらと思って行ったんですけど、それで前の二人がいまして、その人たちが『学生2枚』といって買ってたんですよ、それで『ああこういって買えばいいんだな』と思って、それで自分の番になったのであの『農家と薬剤師、1枚ずつ』と言って、、、」
宮「(大爆笑!)キタ~~~~~~うわ~~~おそろし~~~、久しぶりにきた~~~、入った~~~、びっくりした~~~、うわ~いた~こんなバカ~~、まだいた~~~キュウリ~~~」
彼「はい」
宮「キュウリ、すごいですよ」
彼「はい、ありがとうございます」
宮「いまね、吹っ飛んだもん、いままで出たバカ大人がドカ~ンって」
彼「ありがとうございます」
宮「ものすごい遠くに吹っ飛んでったよ、ピュ~~~って」
彼「はあ、ありがとうございます」
宮「まいりました~~~みたいな感じですよ」
彼「はい」
宮「向こうはなんていってたの?」
彼「そうしたら店員さんも『はい?』って聞き返したんで、だからもう一度あの『農家と薬剤師1枚ずつ』って言ったら、あの『大人2枚ですね』って言われて」
宮「(しばらく笑いが止まらない)、、、ごめん、ごめんねキュウリ」
彼「はい」
宮「あのね、すごいおかしいんですよ」
彼「はあ、ありがとうございます」
宮「おそろしいよキミ~」
彼「はい」
宮「それは何歳の時ですか?」
彼「21です」
宮「(wすてきだねー、ちなみになんの映画を見たんですか?」
彼「あの、スワロウテイル、、、」
宮&スタジオの構成作家「(大爆笑)」
宮「いいじゃないですか」
彼「はい、結構話題になっていた時だったので、、、」
宮「切符を買うときの微妙なエピソードが、映画を見た後、2人の関係に何か影響はがあったんですか? もしくは映画の印象がかわったりとかありましたか?」
彼「いや、それは触れないようにしましたね」
宮「なるほど、触れないようにしてたということは一応、いま確認のために聞きたいんですけど、キュウリ君としては『あっ、やっちゃったな』とは思ったってことですか?」
彼「あ、思いましたね」
宮「思ったんだ、やっぱり」
彼「そのとき、大人2枚といわれたときにさすがに気づきました、自分で」
宮「なるほど、職業を、身分を言うのではないのだと」
彼「そうですね」
宮「なるほどねー、あのねー、ものすごいおもしろさで、多分ね、聞いてるコント作家の人とかね、ほとぼり冷めたころに絶対使おうって思うような、宝物のようなエピソードですよこれ」
彼「はあ、ありがとうございます」
宮「聞いた人みんながポケットに入れて持ち帰ると思いますね、これはね。だってスナックで喋って絶対にすべんないもん、これ。すごいよ」
彼「はあ、ありがとうございます」
宮「なんかもしかしたら、俺たちはいま落語の小咄のなかに出てくる登場人物、つまり架空の人間と電話をつないでいるんじゃないかってそういう錯覚すら感じてます」
彼「は、はい」
宮「いいかげん、むかついてきた?」
彼「いや(ゴホン)、なんか(ゴホン)、う、うれしいです」
宮&スタジオ(爆笑)
宮「彼女にはそのことはばれなかった?」
彼「いや、彼女も多分、絶対気づいてますね、一緒に買ってたんで」
宮「ああそう、彼女は映画チケットの買い方は知ってたのかな?」
彼「確実に知ってたと思います」
宮「ああそう」
彼「これがはじめてじゃなかったみたいだったんで」
宮「じゃあ、そのときの彼女に言い訳をひとこと言っておきましょうよ、せっかくですからね、悪げはなかったわけだし、ひとことキュウリさんからどうぞ!」
彼「あのー、職業いったあとに、『大人2枚』っていうつもりでした」
宮「いまさら言い訳???? おもしろすぎる、、、」
欽ちゃんが伊集院のラジオに出演したとき、「素人の面白さに気づいたあとは、素人しか使わなかった」というようなことを言っていたけど、なんとなくその意味がわかったのだった。
ちなみにここでちょっとだけダイジェストを聴けます。
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