自民が負けて閉塞感が強まる理由

　統一地方選挙の前半戦が終了した。
　マスコミの報道によれば自民が退潮して民主が躍進したという。
　しかし、この国を覆う閉塞感が弱まった気配は私には感じられず、むしろますます強まったように思える。
　その理由はアクセスにおいて田中康夫が話していたがごとく、地方においては自民も民主も、あるいは社民もまったく変わらない同質の既得権益集団の一員であり、その内部の構成比が多少動いたに過ぎないからだろう。

　私がとくに疑問に思うのは民主党という政党で、そもそもこの党をつくった人たちは「かつての社会党的なんでも反対では永遠に政権交代はできない」と主張していたはずだ。にもかかわらず、“躍進”した今回の結果と比べても、社会党が存在していた時代よりも地方議員の数は少ないのではないだろうか（これは数字を確認したわけではないが）。
　ここで一つお断りしておけば、私はかつての社会党、そして現在の社民党というものをまったく評価していない。
　しかし、にもかかわらず現在の民主党よりもまだ社会党が存在していた時代の方がマシだったと思うのである。
　それは民主党の人材にまったくもって魅力を感じないからだ。とくに私と同世代以下の松下政経塾系の連中を見ていると、自民党の一部の議員の方がマシに見えてくるから悲劇的である。おそらくこの連中は内心、アベシンゾーの方へ行きたくてうずうずしているはずで、そういう民主党のありようが透けて見えるからますます無党派層＝無投票層が増えていくのではないだろうか。
　このままいけば、おそらく夏の参議院選挙でも与党が多少負けることはあっても民主が大躍進することはないだろうし、少しばかり民主が増えたからといって世の中がよくなることは微塵もないだろう。むしろ自民にとっては次期衆議院選挙に向けて程よい緊張感を与え、その結果、思ったほど衆議院で負けないような気もする。

　と、こう考えていくと、かつての選挙制度改革というのはなんだったんだろうと思うのである。これは政権交代の仕組みを作るという触れ込みで、政界とマスコミが大騒ぎをして導入したものである。しかして、中選挙区制最後に行われた選挙において政権交代は実現していたにもかかわらず小選挙区制度を導入した結果、ますます自民の天下が続くという皮肉な結果に陥っている。つまり、これもまた自民、マスコミ、そして官僚が仕組んだ既得権益集団のタガの締め直しであったわけである。
　おもしろいことに、当時、この既得権益集団の比較的外にいた小泉純一郎は、この選挙制度改革がまやかしであることを知っていた。だから小泉は著書の中で小選挙区制度亡国論を展開したのである。このとき小泉は「あることをきちんとやってさえいれば、政権交代なんて中選挙区制度でもとっくに起きていた」と語っている。その「あること」とは選挙区の定数是正だ。つまり一票の格差を限りなく１倍に近づけていれば相当に早い段階で自民党は政権から下りていたというのである。
　が、結果として小選挙区制度は導入された。そうして総理大臣の地位についた小泉は、自らの手で自説、つまり小選挙区制度で政権交代は起きないということを証明したわけである。いま小泉は心の中でこう思っているだろう。
「だから言ったじゃないか、小選挙区制度で政権交代は起きないって」