雑誌の危機 (5)
雑誌媒体の広告状況を映す鏡は前述したように特殊面である。男性週刊誌においてこの特殊面の大クライアントというと自動車、タバコ、電機、飲料などのナショナルクライアントがパッと頭に思い浮かぶところだ。もし身近にある週刊誌を手にとって、そういうクライアントが特殊面に入っているのなら、その号の広告セールスはまず第一のハードルをクリアしたといっていい。
私見ではこのハードルを比較的楽にクリアしているのは週刊文春、週刊新潮あたりだ。一方、苦戦しているのはフライデー、フラッシュ、そしてポスト、現代と続く。では苦戦している雑誌にはどのような広告が入るのか。これは実際に見てみるのが一番いい。ここでどの銘柄とは書かないが、いくつかの雑誌をひと月単位で見た場合、同じ原稿で上記のような業種でないクライアントの原稿が頻繁に入っていることがある。これは大手代理店が自社枠として持っている特殊面のセールスがうまくいかなかったことを示している。
そういうケースが実はここのところ多い(ただし3月は4月-3月で予算を組んでいる企業がいわゆる「期あまり」の宣伝予算を消化するために、イレギュラーで広告が出てくることがあるため、必ずしもこの限りではない)。そして元をたどるとこの「枠」を「実績」として所持していたのはナショナルクライアントだ。つまりこのクライアントが「枠」をリリースしたために媒体社、代理店は他のクライアントにセールスしたのであるが、それがうまくいかなかったのである。
作家、漫画家、あるいは雑誌の編集者には〆切というものがいかにつらいかを武勇伝を交えつつ話す人が多い。実はこれは広告においてもまったく同じことで、表2や表4の広告が入らないということはあってはならないことだ(それ以外の広告スペースについては、最悪、自社広告を入れることでしのぐことができる)。そこでまずは料金を下げて売るわけだが、それでもセールスが成立しない場合もある。また雑誌広告において表2、表4というのは「顔」ともいうべきものだがら、あまりにも「ふさわしくない」会社の原稿はやはり避けなければならない。しかしそれでも売れなかった場合は最終的に代理店がある程度自由に裁量できるクライアントの原稿をほとんど「タダ」に近い状況で入れることになる。
講談社の例を出したように雑誌の広告料金というのはそれなりに高い。しかしナショナルクライアントならば割引率が低くてもセールスすることは可能だ(広告代理店はクライアントにセールスした料金から2割をマージンとしてもっていく)。ところがこれを格安で売ることになれば、広告収入を採算の中に組み入れている雑誌にしてみれば大きなダメージとなる。月一回、出広のあったナショナルクライアントが下りてしまった場合、その金額を穴埋めするのは容易なことではない。
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