2012/10/17

小沢報道、そして原発 ~ 日経記事より

前回、書こうと思っていた日経の記事については、時間がたってしまったが、本エントリーの最後に触れます。
その前に本日の記事と、昨日の記事について。


・まずは本日(17日)の4面(政治)のコラム、「記者手帳」。

小沢一郎が「脱原発」の視察としてドイツへ出発したことに触れる記事。
タイトルは『「数は力」探しの旅』。

 「反増税と脱原発を掲げれば国民の支持を得られる」とかねけて同僚議員に語りかけてきたが、新党の支持率は振るわない。消費増税関連が成立したいま、「脱原発」の声におのずと力がこもるようだ。

ここ最近の維新の会とやらの洪水のような報道は、一方で国民の生活が第一を黙殺する意図があることは明白で、『遊撃的マスコミ論』の著者、丸山邦夫氏流に言えば「無報」(意識的な黙殺)の部類に入る。
ちなみに国民の生活が第一は現在、野党第二党だ。過去の政局を振り返ると、与野党が拮抗した状況においては野党第二党がキャスティングボードを握る可能性は十分にあるわけだが、にもかかわらず黙殺をしておいて「支持率が振るわない」と書くところにこの記事の下心が透けて見える。
おそらくは、あれだけ持ち上げた維新の会が早くも失速気味なだけに、細かいところでポコポコと国民の生活が第一を叩いておこうということなのたろう。この記事の締めくくりは、

15日には各党あいさつ回りで訪ねてきた日本維新の会の橋下徹代表に「過半数を制すれば何でもできる」と自らの政治信条を伝え「維新にも協力できる。がんばろう」と呼びかけた。「数は力」の難しさが身に染みる日々かもしれない。

短いコラムだが、タイトルを含めていやらしい記事というしかない。
「小沢一郎=数は力の政治家」というレッテルをどうしても貼りたいのだろうが、そもそも「数が力」ならどうして民主党を離党するのか?(笑)
一方でこの政治面には、「赤字国債法案と予算案 民主、一体成立打診へ」「逆転国会の弊害是正 野党は「解散が先」」という記事が出ている。つまり、どの政党も「数の力」が足りなくて困っているわけで、それでおかしな妥協をしようとかしないとかいう話をしている。「数の力」の難しさが身に染みているのは、民主と自民なのである。


・16日朝刊3面(総合2)「日本の原発輸出 暗雲」

 日本の原発インフラ輸出に暗雲が漂っている。リトアニアで14日実施された原子力発電所の新設を問う国民投票は、反対が多数を占めた。同プロジェクトは日立製作所が事実上受注していたが、計画見直し議論が進む見通し。新興国向け原発商戦を巡っては韓国やロシアなどが政官民一体による受注活動を強化している。日本の原発輸出は厳しさを増している。

リトアニアの国民がきわめて真っ当な判断を示しただけのこと。

 福島第1原発の事故で日本の原発に対する安全神話が崩れた。その中で日立はリトアニアで最新炉をいち早く安定稼働させ、フィンランドやベトナムなど次の受注活動で優位に立つ戦略だった。その見直しを迫られる。
 日立に限らず日本の原発輸出は先が見えない。民主党政権の原発政策に対し「不信感を見せる国・地域は多く、商談を重ねるたびに劣勢になっている」(重電メーカー幹部)との声もある。

別に民主の肩をもつわけではないが、「民主党の原発政策」云々で先が見えなくなっているわけではない。
有史以来、チェルノブイリと並ぶ最大級の原発事故を起こして、しかもその収束がいつになるのか見当もつかない国の原発を輸入するなどという行為自体に無理があるのである。そんなことを強行したら、それこそ彼の地の国民が暴動を起こすだろう。
しかも今日の日経の記事にも書いてあるけれども、「原発の技術者が枯渇しかねない状況」だというのだから、なおさらだ。こんなヤバくて危ない国の原発を輸入するなどというのは狂気の沙汰なのである。


・13日9面(企業総合)『「東電、過ち大きく」「日本の規制 複雑」 クライン委員長に聞く 』

さて、最後に前回のエントリーで触れようと思った記事について。
すでに他のブログでも書かれているが、東電の「原子力改革監視委員会」の委員長になった米原子力規制委員会元委員長のデール・クライン氏へのインタビュー記事。
ま、この方もアメリカで原発を推進してきて、東電が「この人なら大丈夫だろう」ということで起用したのだから、東電よりの人物であることは間違いないが、しかしそれはそれとして、やはり話をしている内容は興味深い。

 クライン氏はまず原発の安全対策や事故対応に関し、「規制当局と東電は大きな過ちを犯した」と強調。今後策定する事故の再発防止策の効果を検証するとともに、社員一人ひとりが「安全に責任を負っている自覚を持つべきだ」と訴えた。
 改革への課題として「違った対策を取っていれば事故は防げたという事実を受け入れることが重要だ」と指摘し、「改革には長い時間がかかる」との見通しを示した。

防げた事故を防げなかったのであれば、当然、その責任者は追及されてしかるべきで、クライン氏には是非、大きな過ちの内容と責任者を追及していただきたいものである(無理だろうけど)。

 官民挙げた過酷事故への備えの必要性にも言及した。NRCは2001年の米同時テロ後、原発の安全指針「B5b」を策定。日本にも導入を促したが、経産省は当時この助言を無視した。もし日本がB5bを導入していれば福島第1原発事故を防げたか、との問いにクライン氏は「防げた」と断言した。

この時にその助言を無視した官僚はどこのどいつなのか? なぜこの記事を書いた記者は取材しないのだろうか?(現在しているのかもしれないが)
おそらく、この助言を受け入れると、それなりに大きなコストアップになったのだろう。それは原子力村全体のもっとも嫌うところであり、ゆえに無視したことは間違いない。
これだけの過ちを犯したにもかかわらず、誰一人として責任を追及されない社会というのは、小出裕章先生がおっしゃるように、「国家としての体裁をなしていない」と私は思う。

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2012/10/13

10月11日付日経夕刊 田中俊一のインタビュー記事を読む

社会人になって自分で新聞を購読するようになってからの履歴は、朝日→日経→東京である。
元々は親がずっと朝日だったので、自分も朝日を購読するようになった。

が、その後、朝日の、とくに政治面があまりにひどいので、1990年頃に日経に変えて、以後は数年前まで日経を購読していた。その日経も政治面はひどいものだったが、スポーツ面や経済面は気に入っていたことと、逆にひどい記事を読むとブログのネタになるということもあり、数年前までは購読していたのだった。
しかし、その日経も「西松事件」以来の小沢関連記事のあまりのひどさに見切りをつけてやめてしまった。

その後、しばらく新聞は購読していなかったのだが、やはり私のような世代は新聞を読みたい。そこでネットで評判の良い東京新聞を購読することにしたのが1年ちょっと前。
その東京は評判に違わず、とくに原発については連日いい記事を書いている(政治面、経済面は大したことないが)。私は東京新聞を読むようになって「新聞とはこれほど心穏やかに読めるものなのか」と思ったものだが、その一方、あまりブログを書く意欲も湧かなくなってしまった。
というのも、東京新聞のことはブログで多くの人が書いているし、facebookなどでも流れてくる。そうなると、これを読んでいるうちに、「ま、いいか」となってしまったのだ。

そこで、今月から再度、日経(※注)に切り替えてみた(w
久しぶりに読む日経はなかなかに面白い。スポーツ面、経済のちょっとした記事は相変わらず充実しており、一方、政治面にはレベルの低い「政事」記事が並んでいる。
そして、この新聞を見ていると、基本的に福島第一原発で起きた、史上もっとも大きな破局事故は、ほとんど過去のごとき気分になってくる(これは日本のマスメディアに共通するが)。
通勤電車の中で日経を読んで出勤するビジネスマンは、こうして日々洗脳されていくのだろう。

さて、前フリが長くなってしまったが、そんななかで一昨日と今日、気になった記事があったので、少々コメントをしておきたい。

まずは11日夕刊の「ニュースな人ヒト」という囲み記事。登場するのは「原子力規制委員会の初代委員長 田中俊一さん」で、タイトルは『「福島の声」胸に改革主導』(記事を書いたのは科学技術部の川合智之記者)
以下、全文引用はせずに部分部分を見ていくと……(以下、下線部はブログ主)。

 福島県出身で、高校まで過ごした。山登りや魚釣りに明け暮れたふるさとの景色は、東京電力福島第1原子力発電所の事故で一変した。事故直後には原子力の研究者と連名で「国民に深く陳謝する」といち早く謝罪。以来、率先して福島県に入り、自らの手で除染活動を手がけてきた。
 「今のような状態のままでは、原子力の再生は絶望的だ」。福島で被災した住民とともに除染に取り組む中で、そんな思いを強くした。「避難住民が帰ってこられる状況をつくり出さない限り、どう原子力政策を進めていいかわからない」と自問する日々が続いた。

この部分の後に出てくるが、この田中俊一氏は東北大学原子核工学科卒。つまり京都大学の小出裕章助教と同じで、経歴を見ると、卒業年次は小出氏の7年前ということになる。
その小出氏は、かねがね「除染」には基本的に意味がないことを警告してきた。

この田中氏は記者によれば、「静かな語り口の中に、原子力規制の改革をめざす強い意志がにじむ」のだそうだが、日本原子力学会長を務めたような人物が、除染などやっている場合ではない(もちろん除染も必要だが)。
そして、「避難住民が帰ってこられる状況をつくり出さない限り、どう原子力政策を進めていいかわからないと自問」したということは、避難住民のみならず、いまもなお「日本の法律に照らせば住んではいけない地域」(小出助教)に住んでいる多くの人びとを避難させるということは、頭から考えていないということだろう。
ちなみに、私が小出先生にお話をうかがった時、先生は「どんなにカネがかかろうとも、私はそれをやるべきだと思う」とおっしゃっていた。

 事故を防げなかった規制行政の刷新という重い任務を背負った原子力規制委員会。委員長就任の打診には「正直断りたい気持ちもあった」というが、「背中を押してくれたのも福島の声だった」
 ふるさと福島の再生を願う気持ち、事故を防ぐことができず申し訳ないという反省――。「もう二度とこのような事故を起こしてはならない」。こう強く決意し、最終的に就任を引き受けた。

この記事の中には、具体的に田中氏の背を押した「福島の声」なるものは一切出てこないが、いったいそれはどういう「声」だったのか? 「福島の声」にもいろいろとあるだろう。「もう原発は一切勘弁してくれ」という声もあれば、「それでも原発を推進してくれ」という声もある。彼はそのどちらの「声」に押されたのかは、この記事では不明だ。

また、田中氏には「事故を防ぐことができず申し訳ないという反省」があるらしい。
であれば、本来、彼が真っ先にするべきことは、責任を取るということだ。
今後、この破局事故の影響は想像を絶するほど長く続き、百年、二百年後の人びと、いや千年後の人びとですらが、われわれの世代を恨むことだろう。
それだけの事故を防げなかった責任者が何も責任を取らず、規制行政の長に就任するというのは、およそ歴史の審判に耐えられないと私は思う。

 まず「急務は地に落ちた規制への信頼を回復すること」と位置付け、委員会の運営はできるだけ透明性を確保するように事務局に指示したばかりだ

規制委員会発足時に赤旗の記者の排除しようとした人物について、今ごろまだこんなことを書いているのだから、私は腰を抜かした。

・みんな楽しくHappy♡がいい♪
原子力規制委員会「会見赤旗排除」田中俊一と広報課長のとても見苦しい言い訳 9/26(会見内容書き出し)

まあ、結局、赤旗も会見には出られことになったが、上記のブログエントリーを読んでいただければわかるが、田中俊一というのは、つまりはこの程度の人物だ。

 「いまこのときも放射線への不安に向き合って毎日過ごしている人がいる」。そんな福島の人々への思いを常に念頭に置きつつ、原子力規制行政の改革という大きな課題に挑む。「世界で最も厳しい規制にする」のが目標だ

もちろん、福島の人々の放射線への不安は大変なものだが、しかしそうした不安を持っているのは福島の人びとだけではない。関東や東北の少なからぬ地域でも放射能への不安を持っている人は多く、実際、「日本の法律に照らせば住んではいけない地域」はある。
そういう事実をサラリとスルーすることろに、この記事(記者)の意図が透けて見えてくる。

ということで、この記事を書いた川合智之さんへ。
このような記事を「提灯記事」といいます。

さて、次に本日の日経の記事に触れようと思ったのだが、長くなってしまったので、それは次のエントリーで。
なお、上記の最後の下線部部分は、次のエントリーとも関連します。

※注
ただし電子版のみ。これがしかしなかなかいい。iPadで読むと文字を拡大できるし、気になった記事はメール送信をできる。また、私の住む地域は13版なのだが、電子版は当然ながら最終の14版だ(スクープは最終版にしか掲載されないので、これまで自宅で読んだ日経と、会社で見た日経の1面トップが違うということが時々あった)。

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