2012/05/08

「こどもの日」に全原発停止
~ 嬉しいけれど、喜べない その2

その1より続く)

1999年9月30日、東海村でJCOの臨界事故が起きた。
この日は中日ドラゴンズがセ・リーグ優勝を決めた日で、私は午後から会社の半休を取って神宮球場へ出かけていたので、事故のことを帰宅するまで知らなかった(当時は携帯でニュースなど見られなかった)。
早速、パソコン通信で情報を確認すると、大変な事故であることがわかったが、ここでもメディアの伝えるニュアンスとパソコン通信から入ってくる情報は相当に異なっていた。

2002年10月、私は勤務していた会社で編集部から広告部へ異動する。
それまで広告に関する知見はほとんどなかったが、営業の現場を経験するなかで、東京電力が想像以上に有力な広告主であることを知った。
私の勤務していた会社は女性誌を中心に発行していたが、たとえば30代以上の主婦向けファッション誌には「オール電化住宅」の広告が入る。しかも、雑誌広告の売上げが落ち込んでいくなかで、定価ベースの広告料金を払ってくれる貴重なクライアントの一つだった。
そして2006年から当ブログを書き始めた私は、以後、原発についてかねて思っていた懸念、あるいは電力会社とメディアの関係を時々、書くようになった。
そうして2011年3月11日に東日本大震災が起きて、福島第一原発は破局事故を起こした。

こんな私であるから、こどもの日に全原発が停止したしたのはもちろん嬉しい。良かったと思う。
だが、手放しで喜ぶ気持ちにもなれないのは、いつ収束するかまったく見当もつかない破局事故がすでに起きてしまったからだ。
福島第一原発1号機から3号機で原子炉から溶け落ちた燃料はいまだにどこにあるのかわからず、それが回収可能であるかどうかもわからない。4号機には莫大な数の使用済み燃料があり、これが強い余震で倒壊するかもしれない建屋の中にある(一応、補強工事はしたが)。
原発周辺に住んでいた住民はもはや帰宅することはできない。
そして──。
日本の法律をきちんと適用するならば、福島のみならず群馬、栃木、茨城、千葉、埼玉、東京の一部にも放射線管理区域にしなければならない場所、つまり住んではいけない場所がある。にもかかわらず、政府は法律をネジ曲げてしまったため、いまだにそこで多くの人が普通に暮らしている。

そうしたなか、原発推進勢力は産学官報一体となった恐るべき情報コントロールで、なお原発を再稼働させようと試みている。まったくもって原子力ムラの強大さには驚くばかりだが、しかしその彼らをもってしても全原発を停止せざるを得なかった。つまり、福島第一原発の事故はそれほど大きなものだったのだ。

ここで話は突然かわるが、消費税増税を目論む野田政権、そしてそれを後押しするメディアによれば、増税を必要とする最大の理由は後世にツケを回さないためだという。そのためには、消費税の負担増はやむを得ないのだそうだ。

ところで後世にツケを残すという意味では原発ほど莫大なツケを残すものはない。
なにしろ高レベルの放射性廃棄物は十万年、百万年の単位で管理しなければならないのである。
現在、原発各地の使用済燃料プールはすでに限界に近づいており、一方で核燃料サイクルはとっくの昔に破綻している。
今後、原発を稼働すれば、またまた使用済核燃料が出てくるわけで、その持って行き場はすでになくなりつつある。
しかも、これから福島第一原発の処理で膨大という言葉でもまだ足りないほどの想像を絶する放射性廃棄物が出てくるわけだが、これをどこでどうやって管理するのかも定かではない。

一昨日の朝、TBSの「サンデーモーニング」を見ていたら、原発推進派の寺島実郎が「泊は最新鋭の原発で耐震性もしっかりしており、古い原発とは安全性が比較にならない」とういうようなことを力説していた。しかし、たとえ少しばかり耐震性や性能が向上したとしても使用済核燃料は出るわけだし、耐用年数を過ぎた原発は解体しなければならない。つまり、ここでもまた膨大な放射性廃棄物が出てくるのである。
寺島実郎が生きているのはせいぜいがあと二十年ぐらいのものだろうが、問題はその後なのだ。
ただでさえ、現時点で後世に莫大な負債を作ってしまったのに、ここでまた原発を再稼働をすれば、負債がどんどん積み上がるのである。

私に言わせれば答えはすでにハッキリしている。
もはや原発の再稼働は絶対にしてはいけない。
それで電力不足が起きることはないが、百歩譲って電力会社が言うように電力不足で計画停電のような事態に陥ったとしても、それでも原発は稼働してはいけない。
結果、これまでのように経済成長一本槍の路線は変更せざるを得ないが、それでももちろん稼働をしてはいけない。ここまで大きなツケを後世に対して作ってしまったのだから、もはや原発が動かなくてもやっていけるだけの経済規模にするしかない。

もっともその方が社会は成熟すると私は思う。
エアコンの設定温度は上げて、できるだけ我慢すればいい。真夏にどうしても暑くて設定温度を下げたくなったら、テレビを消せばいいのだ。その方がよほど節電になる。だけど高校野球に関心があるというのなら、ラジオを聴けばいいいじゃないか。
スーパーにしてもコンビニにしても、煌々と照明をつける必要はない。昨年は節電で結構、照明を落としている店があったが、私はそういう店へ行くたびに「これで十分だナ」と思った。要はこれまでが明るすぎたのである。
何も電気のまったくない時代に戻るわけではない。ただ一人ひとりが少しずつ我慢をすればいいのであって、その間に新たなエネルギー源、あるいは電池の分野に国全体で投資をしていけば、今以上の成長分野になる可能性は十分にある。

昨日から今日にかけて、テレビは竜巻一色であった。たしかにこの竜巻は凄まじい被害をもたらしたし、死者、けが人が出た。
しかし、誤解を恐れずに言えば、自然災害というものは避けられない一方で、しかしそこから復興することも可能だ。しかし、原発事故による放射能災害というのは、一度起きてしまえば、容易に復興できない。
その災害がすでに日本で起きてしまったことを考えれば、繰り返しになるが原発は再稼働してはいけない。
全原発が停止したのは「こどもの日」。その意味をよくよく考えなければならないと私は思うのである。


誰も通らない裏道 蔵出しエントリー
2007/01/16 「原発は高い」(アル・ゴア)


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『東京電力福島第一原発事故とマスメディア』


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2012/04/17

原発の再稼働こそが集団自殺への道である

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仙谷氏「原発動かさないと日本は集団自殺」

 民主党の仙谷由人政調会長代行は16日の名古屋市内での講演で、原発の再稼働をめぐり「原発を一切動かさないということであれば、ある意味、日本が集団自殺をするようなものになる」と述べた。電力不足に陥ったら生活が行き詰まることをたとえた発言だが、藤村修官房長官は同日夕の会見で「その言葉だけをとれば、良い言葉ではない」と指摘した。
 仙谷氏は講演で「日本の経済・社会が電力なしでは生活できないということは、昨年の計画停電騒ぎで明らかだ」とも強調。電力不足を避けるため、再稼働への理解を求めた。
 仙谷氏は大飯原発(福井県)の再稼働をめぐる関係閣僚会合にも出席。再稼働の議論を主導している。
(asahi.com)
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いまネット上でも話題になっている仙谷由人のこの発言は、「集団自殺」という言葉がいい悪いという話ではない。
「原発を再稼働しなければ、それほど大変なことになる」という発言の意図こそが問題なのであって、私に言わせれば、この期に及んで原発を再稼働ことこそが集団自殺であって狂気の沙汰である。
にもかかわらず、その言葉の良し悪しだけを切り取って取りざたするのは、実は「再稼働しないと集団自殺だよ」という狂気の推進派集団の恫喝をあまねく国民に広めるためのプロパガンダであり印象操作であると私は断言しておく。

それにしても、仙谷の話を聞いていると、今後、大飯原発のみならず、他の原発も「安全性が確認されれば」どんどん再稼働していくつもりらしい。
供給電力には十分に余力があるにもかかわらず、これだけ拙速に再稼働をさせたがっているのは、個人的には14日のエントリーで書いた、原発が生み出す余剰電力でまかなっていた深夜の割引電力を化石燃料で発電しなければならないことによるコストアップが、電力会社の経営を直撃しているのではないかという推測がやはり正しいのではないかと思わずにはいられない。

しかし、そもそも電力が足りようと足りまいと、原発を再稼働するかしないか、脱原発を即刻実施するかしないかを議論して決定するにあたり、もっとも重要なのはより若い人たちの意見を聞くことだと私はかねて思っている。

・原発の是非は、小学生以上、40歳以下の人たちに問うべきだ

先のない仙谷ごときが関与するような問題ではないのである。
今、原発の是非を国民投票で決めようという動きもある。実は私はそれについてはあまり詳しく知らないのだが、肝心なのは若い人たちの意見であって、もし投票で決めるとしても、私の意見では40歳以上に投票権を与える必要はない(まあまだ未成年の子供のいる人は40代以上でも投票権を与えてもいいかもしれないが)。
そして小学生の高学年以上には投票権を与えるべきだと思う。
(ただし、その投票をする際には、推進、反対の両派がわかりやすく、かつ徹底的に論点を出し尽くす必要がある)

ではわれわれ世代は何をするか。
50歳以上で足腰が動く男性には、社会的地位の差に関係なく、全員に一定期間、福島第一原発での労働を課すべきである。
これはもう国会議員であっても、トヨタ自動車の社長であっても関係なく、とにかく全員。
それぐらいのことをしないと、今、この危機を乗り切ることはできない。

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2012/01/07

電力会社が電気料金を値上げしたい本当の理由

*****
「日本人ってやっぱりけじめってつけることが下手な人間だと思いましたね。やっぱりね、東電の社長がいまだに、、、まあ替わりましたけど、東電って会社があって社長がいて、社員の給料が半分になったとか、90パーセント減ったなんて話はまったく聞きませんし、、、平然と東電の社員が歩いてるってこと自体がね、日本人ってけじめをつけなさすぎますよ。」

2011年12月31日 「久米宏ラジオなんですけど」
今週のスポットライト(黒鉄ヒロシとのゲストトーク)内での久米宏の発言
*****

年明け早々、またぞろ地震が頻発している。そして、ネットでは福島周辺での(首都圏も含む)セシウムの降下量が増えているという情報もある。

武田邦彦教授
「速報 福島中心にセシウム急増  マスク必要!!」

武田邦彦 「東電は日本から出て行ってください」 2012.01.06

ところがテレビは、「食べログ」のランキング操作や大間のマグロの最高値で大騒ぎをしている。
私はこの映像を見て素直に「凄いナ」と思った。
「原発の破局事故は終ったことにするべく国民を洗脳する」という権力の意向を、テレビは何も報じないことで見事なまでに実現している。

さて、私は年末から年始にかけては妻の実家に帰省していた。
場所は静岡県、つまり中部電力管内である。
ちょうど義妹が家を新築しており、ほぼ出来上がったその家を見物すると、家の脇にエコキュート、つまりオール電化住宅の機器の一つが設置されていた(↓CMの青い人形が持ってくる機器)。

その後、近所の家電量販店へ行ってみると、オール電化住宅の展示コーナーが設置されていた。
つまり、中部電力では、依然としてオール電化を推進しているわけだ。

・中部電力 「オール電化総合サイト」

一方、東京電力は、さすがに3.11以降、オール電化の営業を中止していいる。
その表向きの理由は「節電をお願いしている時に勧められない」ということらしいが、本音は違うはずだ。

そもそもオール電化住宅は原発と密接不可分な関係にある。
くわしくはこちら(「原発事故とオール電化住宅」)をお読みいただければと思うが、簡単にいうと原発が作り出す深夜帯の余剰電力対策として推進されたのがオール電化住宅なのである。
したがって原発の稼働率が下がれば余剰電力も減っていく。
そしてこのままいくと、国内の全原発は4月に停止する可能性が高い。

・4月に全原発の停止濃厚 80年代以降では初めて

こうなると余剰電力は完全になくなるわけで、つまり深夜の電力料金を割り引いてまで電気使用を促進させる必要もなくなるわけだ。
というか、、、
もしこのままいけば、今度はオール電化住宅利用者のために深夜帯に割引した電気を作り出す必要が出てくる。
ここで思うのだが、実は電力会社が電気料金を値上げしたい大きな理由は、そのコストを転嫁したいためなのではないだろうか?

電力会社としては、「深夜の電気が安い」ことを“売り”にオール電化を促進してきたわけだが、その割引制度は原発と深い関係があったとは認めたくないだろう。
ところが、東京電力管内だけでもオール電化を推進した結果、原発2基分の消費増となったという。

*****
・オール電化住宅、普及裏目…原発2基分の消費増

 東京電力が、給湯や調理などすべてを電気でまかなう「オール電化住宅」の普及を推進してきたことが、今回の電力不足に拍車をかけている。
 この3年間で戸数が倍増し、最大で原子力発電プラント2基分にあたる約200万キロ・ワット分の電力消費能力が増えた可能性がある。東電は、東日本巨大地震後、計画停電をせざるをえない状態で、オール電化の普及策は抜本的な見直しを迫られている。
 東電によると、管内9都県のオール電化戸数は2002年3月末時点で1万3000戸だったのが、08年3月末に45万6000戸になった。10年末には85万5000戸に倍増した。「原子力は発電時に二酸化炭素を排出せず、地球温暖化の防止につながる。省エネにもなる」とアピールし、電気料金の割引を適用してきたが、急速な普及策が裏目に出た形だ。

(2011年3月23日14時42分 読売新聞)
*****

原発の稼働率が高く、深夜に余剰電力をドンドコと作り出していた時には何の問題もなかったが(なにしろそれでも電気の“捨て場”に困って揚水発電所を作っていたのだから)、こうなると割引制度自体をやめないかぎり、その分のコストアップをどこかに転嫁せざるを得ない。

東京電力社長の西澤俊夫は、「原発停止によって火力発電の燃料費が増加するが、電力の安定供給をしなければならないから電気料金を上げる必要があり、その申請は事業者の義務で権利」とのたまった。
しかし、実際は自らが蒔いた種、つまり、

原発推進→深夜の余剰電力拡大→深夜帯の電気料金を値下げしてオール電化住宅促進

というサイクルが頓挫してしまったなか、それでも深夜帯の電気割引を継続するためには、全体の電気料金を上げるしかないというのが本当のところではないのか。
だとすると、電気料金値上げの最大の責任は、電力会社自身にあることになる。
にもかかわらず、その責任をまったく度外視して、利用者に負担を押しつける。
こんな会社がいまだに平然とのさばっていることが、私は信じられない。

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