2012/04/28

落とし所としてこれしかなかった判決と
ますます進行するメディアのビョーキ

本や雑誌を読んでいて、時々、「うまいなあ」と思う原稿がある。
もちろん「うまい」にもいろいろな種類があるわけだが、私が反応するのは、きわどい内容をギリギリの線で書きながら、しかしなおかつ、どこから突っつかれても大丈夫という書きようをしているライターの原稿を読んだ時だ(ちょっとわかりにくいけど)。

さて、陸山会の小沢判決。
私はこれまでの経緯を考えると、ひょっとして有罪もあるかも、、、と思っていたが、蓋を開けてみれば無罪という至極真っ当な判決が下った。
2009年3月以来の小沢vs.検察の流れをきちんと捉えていれば、この結論は誰にでも腑に落ちるものだが、その当りまえの結論が当たり前に出るかどうかが不透明だったところに、この国が抱える本質的な問題点が潜む。

私は今回の裁判長がどのような人物かは知る由もないが、おそらく無罪判決を書くには相当なプレッシャーがあっただろう。
一人のまともな法律家としてみればどう考えても無罪。
しかし、自らが身を置く世界をぐるりと見回した時、その当たり前の帰結そのまま文字にするのはためられわれたはずで、そこらへんを郷原信郎氏は、以下のようにツイッターでつぶやいている。

@nobuogohara
小沢氏無罪。あまりに当然の判決だが、その「当然の判決」をすることが、大善裁判長ら3人の裁判官にとっては、とてつもなく大変なことだったのだろうと思う。主文を2回読んだ裁判長の気持ちもよくわかる。裁判官としての矜持に敬意を表したい。

@nobuogohara
今日の「八方美人的判決」の評価は難しいが、おそらく、まず無罪という結論を決め、それをどのように社会的に受け入れ可能なものにするか苦心惨憺した末に、あのような内容になったのだと思う。「小沢排除」の政治的、社会的圧力が高まる中、刑事裁判の最後の良識を守ったと評価すべきだ。

無罪判決以後、マスメディアは鬼の首を取ったように「判決は、小沢氏の政治団体の政治資金収支報告書の内容はうそだったと認めた。」と横一列で書き立て、限りなく黒に近いグレーなのだから「説明責任を果たせ」とわめきたてている(カッコ内はいずれも朝日新聞社説)。

やれやれという他はない。
そもそも、ここに至る発端は、政権交代が確実とされた2009年の衆議院選挙直前、次期総理大臣の最有力候補だった小沢一郎の秘書である大久保隆規氏を検察が政治資金規正法違反で逮捕したことだった。
これが「西松事件」なわけだが、当時、検察側の代弁者としてメディアに出演していた宗像紀夫(元東京地検特捜部長)でさえ、これは入口であって、その先に大きな疑惑があるはずと言っていたものだった。
ところが検察は結局、大久保氏を政治資金規正法違反でしか起訴することができず、しかもその公判は検察側の証人が検察の主張と真逆の証言をして吹っ飛んでしまった。
そうして浮上してきたのが、「陸山会事件」なのである。
まあ、これ以上、私がクドクドと書いても仕方がないので、以下の田中良紹氏のエントリーを読んでいただきたいが、田中氏も書いているがごとく、公判の中では「会計学の専門家である筑波大学の弥永真生教授は石川議員の作成した政治資金収支報告書は虚偽記載に当らないと証言」しているのだ。

・田中良紹の「国会探検」
政治的事件の政治的判決

話を戻すと、今回の判決というのは、郷原氏がつぶやいているように、無罪という後世の評価に耐えうる結論を出しつつ、田中氏が言うところの政治的な部分にも十分に配慮したもので、苦し紛れといれば苦し紛れだが、落とし所としてはこれしかなかったのだろう(ちなみに、この「限りなく黒っぽい無罪」判決が出ることを事前に予想していたのが、八木啓代さんだった)。
であれば私はそれはそれで、うまい判決だと思う。

もっとも、この判決でマスメディアのビョーキはいよいよもって進行している。私はすべてを見ているわけではないが、偶然見た天声人語は以下のごとくであった。

********************
 政治を動かした判決といえばやはりロッキード事件だろう。1983年秋、東京地裁は田中角栄元首相に有罪を言い渡し、闇将軍が表舞台に戻る日は遠のいた。約1年後、田中派の重鎮竹下登らは、分派行動ともいえる創政(そうせい)会の旗揚げへと動く▼だれの時事漫画だったか、元首相が「ああせいこうせいとは言ったが、そうせいとは言っとらん」と嘆く傑作があった。田中は心痛と深酒で脳梗塞(のうこうそく)に倒れ、失意のうちに影響力をなくしていく▼さて、この判決は政治をどう動かすのか。資金問題で強制起訴された小沢一郎氏の、無罪である。大まかな経理処理の方針は承知していたが、うその記載を巡る秘書との共謀までは認められないと▼小沢氏は折にふれ、「今後は一兵卒で」と殊勝な言を重ねてきた。くびきを解かれた兵卒が見すえるのは、秋の代表選か、集団離党や新党か。消費増税の前途多難といい、野田首相は頭が痛かろう▼民主党は、各自の当選を目的とした非自民の選挙互助会でもある。にわか作りの公約が破れ、政策や手法が敵方に似てくるほど、小沢流の原点回帰は説得力を増す。首相の使い捨てが続く中、「なれたのにならない」政治家の凄(すご)みも無視できまい。だが顧みるに、この人が回す政治に実りは乏しかった▼若き小沢氏は心ならずもオヤジに弓を引き、創政会に名を連ねた。以来、創っては壊しの「ミスター政局」も近々70歳。「最後のご奉公」で何をしたいのか、その本心を、蓄財術とともに聞いてみたい。
********************

この原稿を書いているのは、本当にプロの記者なのだろうか?
「この人が回す政治に実りは乏しかった」そうだが、ニセメール事件でボロボロだった民主党を見事に立て直して政権交代を実現したのは、圧倒的な実りではないのか?(でなければ、この筆者にとって政権交代は実りとは真逆のものだったのだろう)
無罪判決後も、その本質を見ようとせず、すべてを政局に結びつけて報道する朝日新聞社こそが「ミスター政局」集団ではないのか?
小沢一郎が「最後のご奉公」で何をしたいのかがこの筆者にはわからないらしいが、それは「国民の生活が第一」という政権交代の本義に戻すことであって、そんなことは私にでもわかる。
そして「蓄財術とともに」という形容。
何の工夫も伏線もなく、ただ思考停止した人間が、感情のままに書きなぐった原稿など、ただのクズ原稿でしかない。

私は最近、愛聴している「久米宏ラジオなんですけど」で唯一不満なのは、一部のコーナーで朝日新聞が
スポンサーになり、天声人語がどうしたこうしたというCMが入ることだ。

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2012/02/22

不毛な三年間で
法務・検察の闇を暴き切った小沢一郎の功績
そして小沢有罪待望論!?

先日、松本サリン事件の際に容疑者扱いされ、悪質きわまる報道被害にあった河野義行さんの話を聞く機会があった。
かねて、河野さんが到達した思索の高みについては知ってはいたが、実際に話を聞くと200名ほどの聴衆をあっという間に引き込ませる圧倒的な迫真力があった。

なかでも印象的だったのは、河野さんが現在、松本サリン事件で殺人ほう助の罪で懲役十年の実刑判決を受けて服役したオウムの元信者と、出所後に交流があるという話だった。
その理由を問われた河野氏は、「日本が法治国家であるなら、誤りを犯したとしても、刑期を終えればそこでリセットされるべきである」と答えた。
また、河野氏は取り調べた警察官に対してすら、「彼らも職務上、やむを得ない部分はあった」と言う。そして自分が受けた被害について恨みを持つということは、結局は自分にとっても損になると言う。私のような了見の狭い人間にはなかな到達し得ない心境で、感銘を受けざるを得なかった。

だが、その河野さんですらが唯一、聴衆に対して釘を刺したのは、「マスメディアの流す情報をそのまま信じてはいけない」ということだった。
その時、私の真後ろには有名なベテラン新聞記者、評論家数人が座っていたが、彼らはいったいこの河野さんの言葉をどう聞いたのだろうか――。

さて、「健全な法治国家のために声を上げる市民の会」の会員である私は、昨日、速報でも書いたように、2月17日の小沢公判での石川調書の証拠不採用を受け、再度、田代政弘元東京地検特捜部検事ららへの1月12日の告発の捜査を粛々と進めるよう、二回目の捜査要請書を東京地検刑事部長あてに提出してきた(一回目はこちら)。

元来、このような文書が提出された場合、まずは文書課が窓口になるということで、現に一回目の提出では同課の事務官がやって来たが、今回は刑事部の事務担当統括官が、もう一人女性の事務官を連れてやって来た(※ちなみにこのような場合、彼らは首からさげたIDカードを必ず裏返しにやってくる。名刺をくれといっても「持ち合わせていません」と判で押したように同じ答え。なので、直接名前を聞くことになる)。
なぜ、文書課の事務官が来なかったかとういと、、われわれの顔を見たかったのだそうだ(^_^;)。そして、彼はにこやかに笑いながら「(捜査要請書を)三回、四回とこれからも出すのですか?」と聞いてきたものである。
もちろん、そんなことはわかりやしない。きちんと捜査をしてくれれば来ることはないし、わざわざ地検刑事部のエライ人にガン首晒すのは、こっちだって気色のいいものではないのである。

もっとも本日、朝日新聞デジタル版に出た記事を読むと、しつこく行く必要も出てくるかもしれない。

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小川法相「しっかり対応」 検事の捜査報告書加筆

 民主党元代表・小沢一郎被告(69)の元秘書を取り調べた田代政弘検事(45)が、実際にはなかったやり取りを捜査報告書に記載していた問題について、小川敏夫法相は21日の閣議後の記者会見で「あってはならないことで、しっかり対応したい」と語った。今後、何らかの処分を検討するとみられる。
 17日の小沢氏の公判で東京地裁は、元経理担当秘書・石川知裕衆院議員(38)らの取り調べに「違法・不当な方法があった」として調書の不採用を決定。捜査報告書の問題にも言及していた。
 小川法相は「どうしてそういうことになったのか。重大な関心を持っている」と発言。田代検事は虚偽有印公文書作成・同行使などの容疑で市民団体から刑事告発されていることから、刑事処分の行方をみながら、法務省も田代検事の処分を検討するとみられる。
(朝日新聞デジタル2012年2月21日11時47分)
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この法務大臣はちゃんとわかっているのか? われわれが指摘しているのは、単に田代検事一人ではなく組織的な犯行であるということ。しかも小沢公判の大善裁判長もそれを認めている。むしろ田代検事は上からの圧力でやむを得ず虚偽記載をした可能性が強いのであって、トカゲのしっぽ切りは断じて許されないのである。

ところで、私は2月17日のエントリーで、この三年間は本当に不毛だったと書いた。それは紛れもない事実だが、しかし何も得るものはなかったのかと言えばそんなことはない。
ポジティブにとらえれば、大収穫であった。
なにしろ、法務・検察がここまでイカサマとデタラメをやる組織であることを満天下に知らしめたのだ。これを収穫と言わずになんと言おうか。

そして、その最大の功績はもちろん小沢一郎にある。
もし、これが普通の政治家ならば、ここまでブレずに信念を貫き通すことはできなかったろう。実際、検察は最初の段階では、小沢が議員バッジを外せば、矛を収めた可能性が高い。
ところが田中角栄のロッキード裁判を欠かさず傍聴し、リクルート事件や金丸事件も経験した小沢は、検察がどのような組織か知り尽くしていた。
おそらくそれが、どんなに検察がメチャクチャな攻撃を仕掛けてきても、そしてマスメディアに袋叩きにされても、無実の主張を貫き通す原動力になったのだろう。
しかも、この間、一貫して政治力を失わなかったゆえ、検察は次々とあの手この手を繰り出さざるを得なくなった。
その結果、これまで誰も問題意識を持つことがなかった検察審査会がトンデもない組織であることがわかり、その検察審査会に自分たちが起訴できなかった案件を起訴するよう仕向けるため、検察が捜査報告書に虚偽記載までする組織だったこともわかった。
その小沢の功績たるや凡百の政治家が足元にも及ばない。

さてしかし、この小沢公判を正しく捉えている人のなかにも、依然として小沢は有罪になるのではないか?という疑念を捨てきれない人も少なくないようだ。かくいう私も下駄をはくまでわからないと思っている。

だが――。
ここまで来たら、小沢一郎が有罪になるのも、それはそれで悪くないと私は思い始めた(もちろん小沢サンとしては「もういい加減にしてくれや」という心境だろうが)。
なにしろ、これだけのデタラメを積み重ねて、誰が見ても無罪の状況で、それでも有罪判決が出れば、司法の狂気は極まるわけで、その有罪判決をもとに小沢に議員辞職を促すような議員はすべてクズ議員、新聞はクズ新聞であることが堂々と確定する。
田中良紹は、2009年の大久保秘書逮捕以来、小沢に対する検察の攻撃を、「炙り出し」だと言っていた。つまり誰が、どの組織がまともかまともでないかを炙り出すリトマス試験紙だというのである。
実際、それは本当だった。
であるならば、ここですべて白黒つけるのも面白い。将棋で言うところの「これも一局」なのではないかと思うのだ。
ということで、小沢有罪結構!
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2012/02/18

小沢一郎の「政治とカネ」
不毛な三年間の最大の責任は
「疑いなき者をハメた」検察とメディアにある

あの東京地検特捜部ですら起訴できなかった小沢一郎を、素人、かつ謎の集団である検察審査会が起訴議決したことで強制起訴に持ち込まれた小沢公判。
これは大林宏検事総長が「起訴できるだけの証拠がなかった」と言い切った案件である。

にもかかわらず、検察審査会に送られる操作捜査報告書が組織的に捏造(虚偽記載)されていたのだから、昨日の石川調書の証拠不採用は至極真っ当な結論という以外にない。

しかし、これで小沢無罪が決定したわけはもない。もちろん普通に考えれば無罪以外にあり得ないが、この小沢一郎をめぐる「政治とカネ」の“問題”は、そもそもが普通でないところからスタートしているから、何が起こるかは、まさしく裁判が終わるまで、下駄を履くまでわからないと思う。

ちなみに本日の東京新聞朝刊に掲載された元東京地検特捜部検事、高井康弁護士によれば、「有罪の確率は減ったが、必ず無罪になるというわけではない。裁判所が推認に推認を重ねて、被告が「将来、虚偽記載した報告書を提出することになる」と暗黙のうちに認識したと認定できれば、有罪となる可能性はある。」のだそうだ。
これは凄いコメントだ。これほど尋常でない裁判なのだから、そもそもこの公判のありようを問わなければならないはずなのに、そういう問題設定は一切なく、推認で有罪になる可能性はあるという。この人に弁護を依頼するには、よほど勝算の高い案件でも不安ですね。
同様に検察官役の指定弁護士のコメントも凄い。「(調書の不採用は)ほぼ予想通りの結果。有罪立証にあまり影響はない」とのこと。この人、本職は弁護士なのだから、「こんな裁判、もうやってらんない」というのならわかるが、有罪立証できるというのである。この人に弁護を依頼するのもまた勇気がいる。

さて、そんななか、昨日の私の最大の興味は、このニュースをメディアがどのように伝えるかということだった。
そこで最初に注目したのは、お昼のNHKニュース。
なにしろNHKこそは、2009年3月の大久保秘書逮捕から、一貫して検察のリークを垂れ流して小沢を叩いてきた筆頭媒体であるから、その伝え方は気になる。

が、実際に見てみると、これが拍子抜けするほど真っ当だった。昼の時間帯のニュース枠の中で、他局はそれでもまだ「小沢無罪の可能性が高くなったが、池田秘書の調書は一部採用されているから、有罪の可能性もある」という調子だったのに対し、NHKはそれには触れずに無罪の可能性を伝えていたのである。
夜7時のニュースも、まあそんな調子だったので、普段は決して見ることのない、一番問題の「ニュースウォッチ9」もついでに見ることにした。

そして、この番組がひどかった。
が、ひどかったのは小沢のニュースに関してのみでなく全体の構成だ。

番組では冒頭に野田佳彦が出演。キャスターを相手に「一体改革」とやらの重要性を喋る。これに対しキャスターは、いかにも視聴者代表のようなフリをして質問を投げかける。素直な視聴者は、野田を相手にキツイ質問をしているように見えるのかもしれないが、この男の役どころは単なる増税路線の露払い役でしかない。

「増税をするんですか? でも、その路線にはこんな反論、疑問がありますよ」と、増税という道に落ちているゴミの存在を指摘すると、それについて野田が答える。するとそのゴミは箒で掃き出されるわけである。結果、視聴者を「増税やむなし」という気分にさせる。
このコーナーの目的はそこにしかなく、これを繰り返すことで増税容認という空気を充満させようというのである。そして、もっとも効果があるのは、これを「みなさまのNHK」がやることだ(こちらも本日の東京新聞の記事だが、「野田が国民へ一体改革のアピールを始め、NHKのニュース番組に出演した」という内容の記事がある。つまりこの番組は政府広報としての価値ありと権力からも認定されているのである)。

私はこのコーナーを見ている間、反吐が出そうになったので(こういう番組をきちんと最初から最後まで見て批判する植草一秀氏は本当に偉いと思う)、時折、ザッピングをすると、TBSでは「怪しく無気味な国、北朝鮮」という気分を煽り、空気を作る「バラエティ番組」を盛大にやっている。
まことにもって、世界一の情報統制国家・日本のメディアは、それぞれのポジションで本日も忠実に任務を遂行中である。

NHKに話を戻すと、そうして野田がえんえんと話したあとの次のニュースが天皇陛下のご入院(不敬な順番だ!)。そして、その次にやっと小沢公判である。
昨日の公判で石川調書が採用されず、小沢無罪の流れが強まり……というビデオが流れ、さて偏執的小沢叩きで有名なあのキャスターがどんなコメントをするのかしらんと期待していると、この男は判決の期日を喋ってサラッと次のニュースへ移ったからズッコケた。

「あんた、そりゃあないだろうよ。あれだけ、小沢をぶっ叩いてたんだぜ、何かコメントせいよ」

と思ったのは私だけだろうか。

それにしも──。
そもそも、昨日の小沢公判ニュースを見ていた視聴者のうちのどれほどの人が、この「陸山会の虚偽記載事件」は2009年、最初に大久保秘書逮捕された時の「西松事件」とまったく異なるものであるを理解しているだろうか。そして、「西松事件」はどこへ行ったかを正確に知っている人がどれだけいるだろうか。

私は今、2009年3月、大久保秘書逮捕から始まった、検察+メディアによる「小沢狙い撃ち」について、当ブログに書いたものをまとめて電子書籍にしようと思っている。そこで、当時のエントリーを読みなおしているのだが、もはや私でも「そんなことがあったな」と思うこともある。

そもそも、大久保秘書の逮捕時点では、「西松建設の巨額献金事件」とメディアは報じていた。大久保秘書の逮捕容疑は政治資金規正法違反という形式犯。だが、当時、宗像紀夫(元東京地検特捜部長)は「入口は政治資金規正法違反という形式犯だが、ここまでやるからにはその先に大きな疑惑があるはずだ」と言っていた。ところが、その先には何もなく、結局、大久保秘書は政治資金規正法違反のまま起訴された。

すると、次にメディアは検察の吹かす風にのって、「これだけで十分に悪質」と言い始めた。当時の総理大臣、麻生太郎は嬉しさを隠しきれずに、「悪質だ」とのたまった。
あるいは共産党の志位和夫。この人物も小沢一郎に対して、「形式犯での逮捕は前例がないというが、こういう悪質なことはこれまでにない。取り締まるのが当たり前だ」などと述べていたのである。

しかしいま、この西松事件は影も形もない。なぜなら、この公判では、検察側の証人が法廷で検察の構図を覆す証言をしたからである。その瞬間、西松事件は消え去った。
すると持ち出されたのが、陸山会の土地取引問題であり、しかしそれでも検察は小沢を起訴できなかった。
やっと起訴できたのは、検察審査会というこれ自体が十分に怪しい素人集団に、検察が虚偽記載した捜査報告書を送ったからである。

と、ここまでくれば、もはや事は明らかだ。
問題は小沢一郎の「政治とカネ」ではない。検察とメディアが一体となって小沢一郎の「政治とカネ」をでっち上げたことこそが問題なのである。
「疑わしきは罰せず」どころの話ではない。検察がメディアを利用して、「疑いなき者(しかも総理大臣の最有力候補)をハメた」のだ。
その結果、この3年間、政治は混乱するだけ混乱し、衆議院選挙で示された民意はネジ曲げらるだけネジ曲げられた。さらに、その間には東日本大震災が起き、福島第一原発の破局事故が起きたが、総理大臣が異なっていれば、その対処法はずいぶんと異なっており、放射能による被害も格段に少なくなっていただろう。
いまこそ、その責任が問われなければならないのであって、メディアが頬かむりすることは許されない。


・田中良紹の「国会探検」
民主主義とは無縁の人たち

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2012/01/13

メディア・ファシズム 〜 事実を切り取り“像”に閉じ込める印象操作という手法

予想通り、健全な法治国家のために声をあげる市民の会による告発のマスメディアの扱いはベタ記事、ガン無視である(追記:私の購読している東京新聞は本日朝刊の最終版のみベタ記事。私が購読をしている11版S<最終版の1版前>以前にはなし。そして本日夕刊でベタ記事を掲載。ただし夕刊の購読者は朝刊より相当に少ない)。

・八木啓代のひとりごと
【重大】本日、最高検に告発状を提出いたしました

一方で、エネ庁前次長サンとやらが、 200万円ポッチという小ネタの「容疑」で逮捕され、新聞の1面(私は東京新聞)を華々しく飾っており、私は思わず「気の毒にナ」と思った。
検察審査会に小沢一郎を告発した謎の市民団体についてはかつて大々的に報道したマスメディアも、検察の前代未聞の組織的犯行を告発した市民団体のことを、ネットに接触していない多くの一般国民には知られたくないようだ。

そうして、朝日新聞は本日も朝から小沢一郎フルボッコ社説を掲載。私は朝日を購読していないので確認していないが、そりゃこれだけの社説を書いておいて、「その裁判自体がおかしいだろう」という告発は掲載できないだろう(言い訳程度にひっそりと掲載する可能性はあるかもしれないが)。

*****
小沢氏公判―政治家失格は明らかだ
 民主党の元代表・小沢一郎被告が、東京地裁で2日間の被告人質問を終えた。
 政治資金収支報告書に、秘書らと共謀してうその記載などしていない。4億円の土地取引も秘書に任せており、手元の現金を用立てたほかは一切あずかり知らぬ、と無罪を訴えた。
 虚偽記入の疑惑発覚から2年あまり、国会での説明を拒み続け、昨年1月に強制起訴された際には「法廷で真実を述べる」と言っていた。
 それが、ふたを開けてみれば「記憶にはない」「秘書に任せていた」の繰り返しだった。
 むろん、裁判所は政治家としての資質を論ずる場ではない。刑事責任の有無は今春の判決を待つしかない。
 だが、小沢氏はかねて、報告書の中身の透明度に胸を張ってきたはずだ。
 「政治活動を国民の不断の監視と批判の下におき、民主政治の健全な発展を図る」という、政治資金規正法の趣旨にかなう発言だった。
 それなのに法廷では、虚偽記載の罪に問われた問題の収支報告書にさえ、いまに至っても目を通していないと答えた。
 なぜ、見もしないで内容を保証できたのか。報告書に向き合う緊張感も、報告書を見る国民に対するおそれも持ちあわせていないことを端的に示した。
 かつての政界ならいざ知らず、政治とカネに厳しい目が注がれるいま、政治家として失格であることは明らかだ。
 こんなありさまで、「私の関心は天下国家」と唱えても、だれが耳を傾けるのか。
 「小沢氏は検察にはめられたのだ」と主張してきた人々は、これでもなお小沢氏を擁護するのだろうか。
 小沢氏が信頼し、任せていたという3人の秘書らは一審で有罪判決を受けている。会計責任者だった秘書は報告書を見もせず、宣誓欄の署名も代筆させていた。別の秘書は、政治団体間での何千万円という金のやり取りも記載しなかった。
 この監督責任も免れない。
 小沢氏の「秘書任せ」の弁明が通る余地があるのは、規正法が報告書の一義的な責任を政治家本人ではなく、会計責任者に負わせているからだ。
 その見直し問題は、長らく国会で放置されてきた。
 違反の言い逃れを封じるために連座制を強化し、政治家自身が責任と倫理を明確にする制度を確立すればよい――。
 19年前に出版した著書「日本改造計画」で、こう指摘したのは小沢一郎氏その人である。
*****

このゴミ社説に対する反論は田中良紹氏の一文をお読みいただければ十分だが、ここではその一部だけ引用させていただく。

*****
・田中良紹の「国会探検」
政治家の金銭感覚(←全文はこちら)

 検察が起訴できないと判断したものを、新たな事実もないのに強制起訴したのだから当たり前と言えば当たり前である。もし検察が起訴していれば検察は捜査能力のなさを裁判で露呈する結果になったと私は思う。従って検察審査会の強制起訴は、検察にとって自らが打撃を受ける事なく小沢一郎氏を被告にし、政治的打撃を与える方法であった。

 ところがこの裁判で証人となった取調べ検事は、証拠を改竄していた事を認めたため、強制起訴そのものの正当性が問われる事になった。語るに落ちるとはこの事である。いずれにせよこの事件を画策した側は「見込み」が外れた事によって収拾の仕方を考えざるを得なくなった。もはや有罪か無罪かではない。小沢氏の道義的?責任を追及するしかなくなった。

 そう思って見ていると、権力の操り人形が思った通りの報道を始めた。小沢氏が法廷で「記憶にない」を繰り返した事を強調し、犯罪者がシラを切り通したという印象を国民に与える一方、有識者に「市民とかけ離れた異様な金銭感覚」などと言わせて小沢氏の「金権ぶり」を批判した。

 しかし「記憶にない」ものは「記憶にない」と言うしかない。繰り返したのは検察官役の指定弁護士が同じ質問を何度も繰り返したからである。そして私は政治家の金銭感覚を問題にする「市民感覚」とやらに辟易とした。政治家に対して「庶民と同じ金銭感覚を持て」と要求する国民が世界中にいるだろうか。オバマやプーチンや胡錦濤は国民から庶民的金銭感覚を期待されているのか?
*****

昨日の東京新聞朝刊の社会面にも「市民感覚懸け離れ」という見出しが躍っていたが、私もこのマスメディアが金科玉条のごとく振り回す「市民感覚」という言葉には、毎度のことながら本当に辟易とさせられる。というのも、そもそもマスメディアの人間に「市民感覚」があるとは思えないからだ。

もちろん会社によって差はあるが、たとえば朝日新聞の記者などは20代で年収は1千万を越えるか、あるいはその近辺までいくだろう。上記のような社説にタッチする編集委員になれば、年収2千万円以上は間違いない。そうして、毎晩、黒塗りのハイヤーを乗り回し、会社の経費で飲み食いをする。
さらに退職後も高額の企業年金で悠々自適に暮らせるわけで、それこそ「一般市民の感覚とは懸け離れて」いるのがマスメディアの人間である。

では、なぜそれだけのカネがもらえるかと言えば、莫大な広告収入があるからだ(もちろん販売収入他もあるが、広告収入はなんといっても真水なのである)。そして、そのなかには電力会社からのカネもたんまりと入っている。
そういう連中が、あたかも「市民感覚」の代弁者となって、特定の人物を袋叩きにするのである。

原発問題では頑張っている東京新聞も小沢問題では他のメディアとなんら変わることはない。
それについては以下のブログを読んでいただきたいのだが、、、

・くろねこの短語
読者に憤懣ぶちまける東京新聞のイチロー裁判「記者傍聴記」。貴重な傍聴券がもったいない。

私が昨日の東京新聞でもっとも引っかかったのは、記事の本文ではなく写真である。

20120113

多くの人がご存じだと思うが、報道のカメラマンというのはとにかくシャッターをたくさん切る。
とくにデジタル化して以降、フィルムの交換をする必要がなくなり、いくらでもシャッターを切ることができるようになった(しかも現像コストもなくなった)。
そうして撮影した多くの写真の中から、「これぞこの記事の方向性にピッタリ」という写真を選ぶ。

昨日の東京新聞の小沢関連記事の各面の見出しを見ると、「市民感覚 懸け離れ」「政治家としての責任は」「小沢代表 元秘書証言も否定 被告人質問 融資説明「記憶ない」」、「持論に終始 疑念拭えず」「4億円原資で説明に矛盾」、、、など、これでもかというほどネガティブなタイトルが並ぶ。
そうしておいて、いかにもふてぶてしく悪人面の写真を選んで(=一つの“像”を切り取って)掲載するのである。

私に言わせれば、これだけやれば、あとは細かい記事の内容など必要ない。
「法廷で何一つ本当のことを言わないふてぶてしい金権政治化・小沢一郎」という印象を写真という“像”に閉じ込めれば、それで小沢という悪の記号は完成するわけで、あとはその印象を振り回せばいい。

そして、この手法はこと小沢一郎のみに限ったことではなく、田中角栄の時代から(もちろんそれ以前もあったろうが)延々と続いてきた。

田中角栄は本当にただの金権政治化だったのか?
金丸信は?
江副浩正は?
鈴木宗男は? 
佐藤栄佐久は?

いや、彼らだけではない。
過去、メディア・ファシズムの血祭りにあげられた多くの人々。
彼らのいったい何が問題だったのか?

小沢問題に戻れば、土地購入の4億円の原資について、検察は総力をあげたにもかかわらず、ついにその賄賂性を実証することはできなかった。だから起訴できなかったのである。
しかし、それでもなんとしても起訴をしたい検察(=国家権力)は、なんと「本来その全て検察審査会に送られるべき不起訴記録のうち、不起訴の根拠となる証拠を密かに除外し」「敢えて審査員に起訴の心証を抱かせようとする虚偽の証拠をも密かにねつ造すること」で、素人集団である検察審査会の起訴議決を導き出したのである。

恐るべきやり口ではないか。
にもかかわらず、マスメディアはこれを一切問題にすることなく、4億円の原資の説明で騒いでいる。
検察でさえ立証できなかったものを、それでも説明不足だとなじるのならば、その前に自分たちで調査報道をすればいいだけの話だが、それすらせずに、、、
(ま、それでTBSは一度はねつ造ビデオを垂れ流したあげく、頬かむりしているが)

かくして、粛々と御用をつとめるマスメディアという“岡っ引きジャーナリズム”に守られた権力は、今日も安泰である。

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2011/06/07

田中良紹の「国会探検」〜 「うそつき」の「もがき」

以下、全文転載。

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 内閣不信任案の否決は菅政権を支持した否決ではない。政治空白を作らずに菅総理を辞めさせるための否決である。そして菅総理が延命のためにもがけばもがくほど自分の首を絞める仕掛けである。ところが案の定と言うか菅総理とその周辺は延命のための「もがき」を始めた。

 鳩山前総理が口頭で今月中の辞任を迫ったとされる合意書には「退陣」の「た」の字もない。しかも内輪の合意書であるため「民主党を壊さない」とか「自民党に政権を戻さない」とかが真っ先に書いてある。これが表に出れば自民党が反発する事は必至である。そこに仕掛けがある。

 その上で不信任案は大差で否決された。大差の必要があったからである。これで菅総理の心に「延命可能」の思惑が生まれた。大差の否決は延命のための「もがき」を誘う。しかしなぜ大差の否決が生まれたのか。それは小沢一郎氏の指示があったからである。「自主判断」の指示がなければ大差の否決にはならなかった。

 合意書には「退陣」が書かれていない。不信任案は大差で否決された。菅総理の表情に笑みが生まれる。そこで菅総理は鳩山前総理との口頭での約束を反故にし、原子炉の冷却停止のめどがつく「来年1月」を退陣の時期と明言した。しかし原子炉の冷却停止が来年1月に出来るかどうかは誰にも分からない。ズルズル延びる可能性もあり、菅総理はいつまでも居座る事が出来る。

 むしろ延命のために冷却停止を引き延ばせば、総理の延命が国家の損失を招く事になる。ところが岡田幹事長や枝野官房長ら菅総理の周辺は「合意書にある事は退陣の条件ではない」と一斉に鳩山発言を否定した。これを鳩山前総理は「うそつき」と呼んだ。現職の総理、官房長官、与党幹事長を「うそつき」と断じたのだから尋常ではない。鳩山発言が本当なら日本は「うそつき」が権力を握った国になる。

 しかし「もがき第一弾」とも言うべき菅総理の発言はメディアにも評判が悪かった。メディアは「総理退陣表明」でニュース速報や号外を出した手前、来年までズルズル居座られると立場がなくなる。「それはないよ」と言う話になった。これを見て鳩山前総理の言う「うそつき」たちは「もがき第二弾」を点火した。退陣時期を8月に前倒しすると言い出したのである。

 民主党代表選挙が9月に行なわれる事から、そこまで菅総理を延命させ、民主党内の菅支持派の体制を立て直そうとしたのである。メディアは「総理周辺が菅離れを起こしている」と書いたがそうではない。菅総理の影響力を削がれまいとする「うそつき」たちの「もがき第二弾」なのである。

 そしてそれも難しいとみるや「もがき第三弾」が点火された。それが「大連立」である。菅総理は鳩山前総理との約束どおり今月中に退陣する。その見返りに「小沢抜き大連立」を図ろうと言うのである。大臣ポストと民主党マニフェストの破棄をエサにして、内閣不信任案で共同歩調を取った自公と民主党内小沢グループの間に楔を打ち込み、菅周辺は生き残り、菅総理も退陣後の影響力を確保しようと言うのである。

 これら「もがき」に共通するのは全く国民の方を向いていない姿勢である。第一弾、第二弾は自分の利益と自分たちの都合だけであった。第三弾は一見与野党が協調する体制を作るかのように見えるが、まったくそうではない。マニフェストの異なる政治勢力が連立を組むためにはそれなりの手続きが必要で、まずは辞めていく総理の側が提案する話ではない。

 自民党の谷垣総裁が「新しい民主党代表が決まらなければその話をする事は出来ない」と言うのはその通りである。それにも増して国民が選んだマニフェストを変えるには国民の理解を得る必要がある。この時期に選挙をやる訳にはいかないから、国会議員が良く良く有権者の意見を聞きながら党内で調整を図っていく必要がある。

 与野党協調の道は「大連立」にあるのではない。これまで協調体制を作る姿勢をまるで見せなかった菅政権に退場していただき、全政治勢力が結集して「復興のための臨時政権」を作る事なのである。マニフェストを変える必要もない。大臣ポストを各党に割り振る必要もない。復興のための組織に超党派で適材適所の人物配置を行なえば良い話である。

 復興のための組織は時限的なもので、復興の道筋が出来れば解散する。しかし現状の菅政権では国民経済にも被災者の救済にも見通しが立たないため、今回の不信任案提出問題が起きた。それが不信任案を可決しようとした与野党の共通認識である。「大連立」を組まなくともすでに与野党には共通認識と協調姿勢があり、政治空白を作らずに復興作業を行う事は出来るのである。

 鳩山前総理の言う「うそつき」たちは「大連立」を提案すれば時間稼ぎが出来ると思っているのかもしれないが、「大連立」で時間を浪費する訳には行かない。しかし「うそつき」たちが「もがいた」ため、ついに自民党の谷垣総裁は菅総理に対して来週中の退陣を要求した。「もがき」によって退陣時期は早まっていくのである。
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2011/06/03

内閣不信任案は「アングル」か?

昨日昼に行われた民主党の代議士会の中継を見ていて私が驚いたのは、菅直人が「一定のめどがつくまで私に責任を果たさせてほしい」と言った瞬間にピロリロリ〜んという音が鳴ってNHKの画面に「菅首相が退陣を表明」という趣旨のテロップが流れたことだ。
菅発言を聞いて私が「とゆーことは、当分、辞めないんだナ」と思っていたら、次の瞬間に真逆のテロップが事前に打ち合わせができてたいかのように流れたのである。
しかし、この菅直人の投げたクセ球で内閣不信任案否決の流れが決まった。

午後、仕事先との打ち合わせまでの間、内閣不信任案の採決の様子をパソコンで視聴した。最後までは見られなかったが、賛成討論の大島理森と石原伸晃の部分は見た。この大島という人物は自民党核融合エネルギー推進議員連盟副会長、自民党電源立地等推進及び原子力等調査会会長、自民党エネルギー戦略合同部会顧問、社団法人原子燃料政策研究会理事、元原子力委員会委員長、青森県六ヶ所村再処理施設誘致推進で、かつ東電株主なのだそうだ(「世に噛む日々」より)。
石原伸晃は菅直人の唯一の功績である浜岡原発の停止要請をヒトラーのようだと決めつけていた。
内閣不信任決議案は圧倒的な大差で否決され、その夜、菅直人は早期退陣を否定した。

もはや素人には理解し難い状況である。

菅直人の頭の中にはたった一つのことがらしかない。それは、とにかくできる限り長く総理の座に居続けること。すでに大震災から3カ月になんなんとしている。その間の政府の対応はお粗末としかいいようがない。そういう状況で、こんな人間が総理ではダメだということで民主党内から不信任決議案への賛成論が浮上してきたわけで、にもかかわらず辞任するのが6カ月先というのではお話にならない。
だが、一方で上記の大島の肩書を見てもわかるとおり、これまで原発の利権にまみれてきた自民党に政権を戻すわけにも絶対にいかない。
つまり、今回の政局の一つのポイントは、菅の首に鈴をつけることと、自民党を復活させないことという二つの解を同時に求める必要があった。

そう考えると……。
今回の落とし所はそれほど悪くはない。
twitterで「今回の菅対小沢の政局は自民党の液状化を狙った、プロレスで言うところの『アングル』ではないか?」というメンションを送ってくれた方(@hatoさん)がいるのだが、なかなか深い読みだと思う。
まずは自民党の息の根を止めて、しかるのちに菅を引きずりおろす。
菅とすれば、自分に不信任を突き付けた相手と連立するわけにはいかない。しかし、一方では与党内に政権を危うくするに十分な数の集団がいる。となれば、政権は弱体化せざるを得ない。

と、ここまで書いたところで……。
田中良紹氏の「国会探検」が更新された。
あとは政治を読むプロにお任せします。

・田中良紹の「国会探検」 菅政権の最期


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2010/11/20

田中良紹の「国会探検」 ~ 大連立を否定したツケ

2008年、総理大臣だった福田康夫と民主党代表の小沢一郎の間で大連立構想というのが持ち上がった。
だが、これは表沙汰になった瞬間、民主党内からもメディアからも大批判を浴びて、結局、この構想はあえなく潰れた。
当時、私もこの大連立構想については、まったくその意味がわからずに「いくらなんでもそりゃダメだろ」と思ったものだった。
しかし、TBSラジオ「アクセス」(この番組がなくなったのは本当に残念)で田中康夫がパーソナリティの日に出演した田中良紹の解説を聴いて「なるほど、小沢一郎にはそんな意図があったのか」と思ったものだった。
その時に書いたエントリーがこちら↓。

・大マスコミが報じない政局

小沢一郎は深い。
そして、その小沢の相手だった福田康夫というのも、実は近年の自民党の総理大臣のなかでは相当マシな部類に入っていたのだと思う(もちろん菅よりもはるかに)。

いま、菅内閣は見るも無残、フラフラのヨタヨタである。
先の参議院選挙の敗北を自らの責任ではなく、小沢一郎のせいだと本気で思っているフシのある前幹事長は、「与党がこんなに忙しいとは思わなかった。政治主導などと言ったのはうかつだった」というようなことを言ったらしい。弁護士の資格を持つこの男は、秀才で正直な性格なのかもしれないが、こういうタイプの人間が与党内で未だに重要なポジションにいることの恐ろしさを日本人は噛みしめるべきだろう。

一方、小沢一郎の大連立は深い権謀術数に基づいていた。
そして権謀術数は政治の世界では悪ではない。以下は孫崎亨著『日米同盟の正体~迷走する安全保障』の第一章冒頭で紹介されているニクソンの著書の引用である。

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――権謀術数などは一般的に悪とされるが、指導者にはそれはなくてはならない。(中略)ルーズベルトは、絶対に参戦しないと公約しながら、ひそかに戦争準備を進めたのだった。(中略)権謀術数を用いなければ、大事に当たって目的を達成できない場合が多いのである。(中略)ドゴールも「真の政治家は、権謀の時と誠実の時を使い分けねばならない。……千回繰り返すことによって、全権掌握ははじめて可能となる」と言った。(中略)目的は手段を正当化するかどうかというのがある。(中略)(第二次世界大戦のときに)われわれは何千万という人間を殺し、傷つけ、不具にしたが、目的は立派に手段を正当化した。(中略)指導者は常に、ほとんど本能的なまでに、結果を考える。何の責任もないような連中が一方的に、全く異なった状況下でつくったルールには拘束されない。南北分裂というアメリカ建国いらい最大の危機に当たって、理想家リンカーンが情熱を注いだ大目的は、北部連邦の維持だった。(リチャード・ニクソン『指導者とは』徳岡孝夫訳、文藝春秋、一九八六年)
******

小沢一郎の大連立を否定していた連中が、いま政権与党内で小沢グループを切り捨てて自民党と連立を組みたがっているという噂もある。しかし、これは権謀術数でもなんでもない、自分たちの好き嫌いを優先させた上で政権を維持したいという、単なるご都合主義である。

・田中良紹の「国会探検」
大連立を否定したツケ

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