« 2013年1月 | トップページ | 2013年3月 »

2013/02/26

福島第一原発の溶融燃料取り出しは、原子力ムラへの新たなバラ撒きの始まりではないのか?

本日の日経朝刊に「溶融核燃料 処理手探り 原子力機構、模擬実験に着手 21年度取り出しめざす」という記事がある。リードは以下のとおり。

 東京電力福島第1原子力発電所の事故で、炉心溶融(メルトダウン)し溶け落ちたとみられる核燃料「デブリ」を処理する技術開発が始まった。日本原子力研究開発機構は模擬デブリを試作、安全に取り出す方法の評価に着手した。デブリは強い放射線を放つため、その扱いは廃炉作業で最も困難とされる。2021年度の取り出し開始を目指し、政府も官民の研究開発を後押しする。

いま現在、福島第一原発で溶け落ちた核燃料がどこでどういう状態になっているかは誰にもわからない。
東京電力は格納容器下のコンクリート部分でとどまっていると主張しているが、それとて推測でしかない(日経の記事には「どろどろの溶融燃料は軽石状になったり、圧力容器の底や格納容器内部に落ちたりして固まっていると考えられている」と書いてある)。
なにしろこれは事故を起こした当事者による思い切り甘い見積もりで、この会社が自分たちに不利になる事実についてはすべて嘘をつくことは、これまでも何度となく証明されている。

話を戻すと、そういう状態の溶融燃料を、原子力開発機構や東京電力は取り出すという。
そのための方法を官民一体で研究するというわけだが、一方で京都大学原子炉実験所の小出裕章助教は、「この燃料は取り出せないだろう」と言っており、とにかく地下水との接触を防ぐためにも、早く原子炉の周りの地下に壁をつくるべきだと主張されている。
私はまったくの素人だが、それでも1号機から3号機まで、3つの原子炉の溶融燃料を2021年度、つまりこれから8年後から取り出せるとは到底思えない。

まずもって、この作業を人間の手でやることはできず、したがってロボットが必要となる。
この日経の記事には「支援ロボ 開発着々」という見出しもあり、その部分の記事を見ると「三菱重工業は高所のバルブの開閉などができるロボットを開発した。千葉工大の移動ロボットの映像を見ながら高所での作業が可能となる。東芝は汚染水の中に潜れる水陸両用ロボットを作成した。」などと書いてある。
まるで開発は成功したかのごとくの書き方だが、とんでもなく強い放射線のある環境のなかで、そのロボットがまともに作業を続けられる保証はどこにもないだろう。

しかも、たまさか成功したとして、そのロボットは高レベルの放射性廃棄物になるわけで、いったいそれをどこに最終処分するのか。そもそも取り出した溶融燃料をどこに、どうやって保管するのか?
と、こう考えていくと、「取り出せない」という小出先生の意見に軍配を上げざるを得ないと私は思う。

しかし、原子力研究開発機構や東電も取り出すと言い張り、政府が支援するという。その支援とは、要するに税金の投入を意味するわけだが、取り出せることを前提とするならば、そのミッションは大変に重要なわけだから、湯水のごとくカネを使っても文句を言われる筋合いはなく、青天井でもOKという論理も成り立つ。

となると、、、、、
いつものごとくうがった見方をすれば、これは原子力ムラへの新たなカネ(税金)のバラ撒きの始まりではないのか? 日経の記事によれば、

 デブリには放射性物質が大量に含まれるので、不用意に扱えば核分裂反応が連鎖する臨界に達する恐れもある。東芝や日立GEニュークリア・エナジー、三菱重工業、原子力機構は、デブリがどんな条件を満たせば臨界に至る可能性があるのか、解析に着手した。
 デブリを扱う技術はこれまで必要性が想定されていなかったため、原子炉メーカーも手探りで開発を始めた段階。政府は原子力機構やメーカーへの支援を強化する方針で、経済産業省は来年度予算案で原子炉の廃炉に関する技術開発支援に86億円を盛り込んだ。「将来は世界的に廃炉市場が拡大し、産業競争力の底上げにもなる」と話している。

火力発電所を解体する技術を支援をするために政府が税金を投入するという話は聞いたことがない。
つまりこれも原発を運転するがゆえの立派なコストであるが、おそらくこれも原発の発電コストには算入されていないだろう。

私の予想では、おそらくカネ(税金)を使うだけ使ったあげく、最後には「やっぱり溶融燃料は取り出せませんでした」ということになり、メディアも「仕方がない。難しかった」ということで話をおさめるのではないかと思う。

ちなみに、原子力開発機構とは、兆単位のカネを投入して1ワットの発電もしていない、原子力ムラのなかでもきわめつけのデタラメである「もんじゅ」(←をクリックして、是非、もんじゅのページを見られたい。いまだに「すぐれた技術 確かな安全 世界に示す 新生「もんじゅ」」)などと臆面もなく書いてあります)を運営している独立行政法人だ。
つまり、立派な“前科”があるわけで、そういう組織のやることを信じることはできない。

※時間がなくて書けませんが、「遠隔操作ウイルス事件」には重大な関心を持っています。またしても繰り返された警察とメディアが一体化。にもかかわらず、誤認逮捕の可能性が高まったメディアは名誉毀損を恐れて一斉に撃ち方止めに転じました。その姿は呆れを通り越して滑稽ですらあります。
もし、この事案が誤認であった場合は、警視総監のクビが飛びとも言われております。今後の成り行きに注目せざるを得ませんが、この件については、時々、「facebook版 誰も通らない裏道」でも情報を流しています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/02/24

「福島第一原発」「放射能」に一切触れない
安倍晋三の新刊『新しい国へ 美しい国へ 完全版』

以下はfacebook版「誰も通らない裏道」に書いたものですが、こちらにも転載しておきます。
最近、当ブログの更新頻度が下がっておりますが、facebook版はツイッターとブログの中間的な位置づけで、日々、何度か更新しておりますので、よろしければこちらも参照していただければ幸いです。

・facebook版 誰も通らない裏道
http://www.facebook.com/uramichi

********************

安倍晋三の『新しい国へ 美しい国へ 完全版』を読みました。ちなみに私は『美しい国へ』も読んでおります。今回の『新しい国へ』はこの『美しい国へ』にまえがき3ページ、そしてトビラも入れて19ページ分、2013年1月号の「文藝春秋」に掲載した原稿を付け加えたにすぎません。
私がこの付け加えた19ページ(実質18ページ)の中で何よりも驚いたのは「福島第一原発」「放射能」という単語が一度も出てこないことです。

いま東京電力福島第一原子力発電所のばら撒いた放射能によって、福島を中心とする広い範囲(それは海洋にも及ぶ)が汚れてしまいました。
日本が法治国家であるならば、放射線管理区域にしなければならない地域が広大にあります。(そこに住む住民は1千万人になんなんとしている)
そして、チェルノブイリでは、あのソ連でさえ移住地域にしたような線量の場所に、子どもを含めて多くの人が暮らしいている。
もちろん農業にも漁業にも多大な影響を与えています。しかもその影響は、今後、何年続くのかわかりません。

これほど深刻な問題がまったく眼中にないなか、経済成長だの、防衛費を増やすだのといきり立ち、棚田への郷愁を口にしながら「日本を取り戻す」というこの人物の頭はとうてい理解できません。
本当に暗澹たる気持ちになるとともに、2009年の政権交代をぶち壊した野田以下の面々には心の底から憤りを感じます(もっともそれが彼らのミッションだったのでしょうが)。

昨年末の総選挙で自民党は2009年以上に得票数を減らました。にもかかわらず地滑り的な圧勝をしたのは、民主がこれまた地滑り的に得票数を減らしたからです。
つまりあの総選挙で明らかになったのは、国民の絶望なのだと思います。
その絶望の先に成立した安倍政権は、とてつもなく危険だと私は思います。

********************

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/02/21

アベノミクスに感じる国家的「シナリオ営業」の臭い

昨日の日経1面に「原発ゼロ修正 米に表明へ」という見出しの記事があった。
内容は以下のようなもの(太字、下線部は筆者)。

********************
 日米両政府は資源・エネルギー分野で包括的に協力する方向で最終調整に入った。22日にワシントンで開く安倍晋三首相とオバマ米大統領の会談で合意する見通し。首相は「2030年代に原発稼働ゼロ」をめざすとした民主党政権の目標の見直しを伝えるとみられ、原子力分野での協力関係を維持する方針を確認。再生可能エネルギーなどの開発、投資でも協力する。北朝鮮の核実験などを踏まえ、核不拡散体制を堅持することでも一致する見通しだ。
 首相は21日に羽田空港を政府専用機で出発、現地時間22日に大統領との初の首脳会談に臨む。就任後、初の訪米になる。安全保障・経済分野で幅広い課題を話し合う予定で、首相は強固な日米同盟を確認したい考えだ。
 資源・エネルギー分野では、原子力や再生可能エネルギーでの協力、米国産シェールガスの対日輸出などが議題になる。原子力政策を巡っては、首相が原発ゼロを含む民主党政権の「革新的エネルギー・環境戦略」を「ゼロベースで見直す」と表明しており、大統領にも同様の説明をするとみられる。
 民主党政権の原発ゼロ目標には、米政府から「使用済み核燃料の再処理で取り出したプルトニウムの使い道がなくなる」「米原子力産業は日米合弁が基礎。原子力技術が失われる」などの懸念が水面下で寄せられた。目標見直しを大統領に伝えることで、日米間の原子力協力を進めるとあらためて確認したい考えだ。
(以下略)
********************

将来世代にわたっての最重要問題であり、懸念材料である原発問題は国論も大きく分かれている。そして脱原発の声がより大きいことは事実だ。
私は即刻全原発停止派なので、民主党が掲げた「2030年代に原発稼働ゼロ」という方針も容認はできないが、しかし民主の方針には、少なくともベクトルを脱原発へ向ける程度の意味はあった。
ところがこれを撤回するというのであれば、とてつもなく大きな政策転換である。
それを国民に問うことなしにアメリカの大統領に表明するというのは、最高レベルの従米である(そして「アメリカと約束したから民主時代の方針は撤回します」と国民に説明するのだろう)。

そして、原発の推進、中止の立場の違いはおいても、このような総理大臣の売国行為を何の批判もなく垂れ流すこの記事は、日本政府の官報どころかアメリカ政府の官報に堕したといっても言い過ぎではない。

それにしてもこの記事は呆れを通り越して笑える。
「北朝鮮の核実験を踏まえ、核不拡散体制を堅持する」というが、この国では「東京電力が起こした破局事故によって(しかもまだそれはまったく収束していない)、全世界に核を拡散中」である。

私は北朝鮮の核実験を断じて容認しないが、世界有数のプルトニウム保有国であり、しかも有史以来最大の原発破局事故を起こしたにもかかわらず、活断層の上に建てられた原発をいまなお動かしたがっており、なおかつ政治姿勢としては徹底的な対米従属で原子力の協力を進めるという国家が、日本海という狭い海域を隔てた目と鼻の先にあるのならば、誤解を恐れずに言えば、「こっちもなんかやっておくか」ぐらいのことを考えるのも致し方のないことだと思う(浅はかなやり方だとは思うが)。

日本というのは本当に不思議な国で、中国の大気汚染の影響については大騒ぎをするが、現に東京電力が撒き散らかした放射能についてはその影響を最小限に見積もり、従来の日本の法律に照らせば「放射線管理区域」となるべき地域に多くの人(それは小出裕章氏によれば1000万人になんなんとするのではないかという)が普通に暮らしている。
なんとも凄まじい倒錯ぶりである(もっとも最近はそんなことを考えている自分の方が倒錯しているのかとさえ思ってしまう)。

世間ではアベノミクスとやらがもてはやされている。日経の速報メールを見ていると、株価が上がっただの円安になっただのと大ハシャギだ。
私はこれを見ていると、「シナリオ営業」という言葉を思い出す。
シナリオ営業とは証券会社の営業手法の一つで、つまり事前に一握りの優良顧客に対して株を仕込んでおいて、それを一般投資家に売り歩いて株価を釣り上げるという手法である。

かつてバブルが華やかなりし頃は、投資本というのがたくさん出ていた。著者は株式評論家である場合が多かったが、それらの人びとが証券会社の紐付きであるケースは少なくない。つまり株式評論家は証券会社から情報もらって個別の銘柄を勧めるのである。
これも形を変えたシナリオ営業なわけだが、私が聞いた話では以下のようなものがある。

ある出版社でのこと。投資関連の本が出ると、普段は自社の刊行物など気にもとめない役員がゲラの段階で取り寄せて、そこに書かれている銘柄を買っては儲けていたというのだ。
とんでもない話だが、おそらくこのようなことはマスメディアのあちらこちらで行われていたのだろう。
それでも一般投資家が何の疑問も持たなかったのは、経済全体が右肩上がりで、彼らもまたそのおこぼれを頂戴することができたからだ。

しかし、今日の状況は右肩上がりとはほど遠い状況である。
そんななか、アベノミクスは、とにかく経済を良くすることに専念すると喧伝されている。
ところが、このアベノミクスは福島第一原発のリスクを一切勘定に入れずに捨象している。
私は経済のことはよくわからないが、一つだけ断言できるのは、福島第一原発の破局事故による被害総額(発生から将来における収束費用にいたるまで)は天文学的な数字になるということだ。
なにしろ現時点でさえ、「東京電力が何度倒産しても、日本がたとえ破産しても足りない」(小出裕章氏)ほどなのだから、トータルでいったいどれだけの額になるのかはわからない。

いまは多くの日本人が福島第一原発の破局事故を過去のものとしつつある。
しかし、実際はこの破局事故はまったく収束していない。メルトスルーした燃料がどうなっているのかもまったくわからず、汚染水はどんどん溜まっていく。
手の付けられない状況がどんどん進行しているのである。
そして、どんなにこれを隠しても、いずれはこの問題は顕在化し、国民の間にも広く知れ渡ることになると思う。そうなった時、日本経済はどうなるのか? これについてはわからないが、過去に一つだけある例を繙くと、旧ソ連はチェルノブイリの事故から5年後に国家そのものが消滅した。

もちろん日本がソ連と同じ道を辿るかどうかはわからないが、少なくともアベノミクスが最大級のリスクを捨象する限り、多少、株価が上がったとしても、その先に大きな落とし穴があることは間違いない。
だが、原子力ムラと一心同体の安倍政権は、それを承知の上で一時的な経済回復を狙っているのではないか?というのが天邪鬼である私のうがった推測で、つまりここに国家的な「シナリオ営業」の臭いを感じるのである。

原子力ムラの面々は、自分たちが起こしてしまった破局事故がいかに大変なものであるかということを、小出氏と同じレベルで実は知っている。
したがって、いずれ経済的に大変な局面を迎えることもわかっているはずで、その前に逃げ切りをはかろうとする面々が、いまアベノミクスを推進しているのではないかと思うのである。
もちろん前述したとおり、これがうがった見方であることは百も承知だが、要は自民党政権と、それを煽るマスメディアを私はそれだけ信用していない。

とここまで書いたところで、谷垣が3人の死刑を執行したというニュースを見た。
霞ヶ関が完全に政権を取り戻したということだろう。


| | コメント (1) | トラックバック (0)

2013/02/15

「小沢一郎の政治資金事件」は日本版・金大中事件である

********************
「今日において新聞を引っくるめてマス・コミの勢力は、ある意味で政治以上に強力であるということができる。マス・コミが協力すれば、一政権を倒すぐらいは易々たるものであるが、政治の力では、右にせよ左にせよ、ファシズム的専制政治が出現しない限り、一新聞を倒すこともできないであろう」(前掲)
 こういう事実を正しく指摘する人は案外すくない。マス・コミが独自の権力機構を形成しつつ、社会の既成支配権力──政府・官僚・財閥──に拮抗し、一つの支配権力を優に凌駕する実力を貯えてきているといういい方は、けっして誇大な表現ではない。

丸山邦夫著『遊撃的マスコミ論』 「ジャーナリストと戦争責任」より


********************

数日前の日経に掲載された石破茂のなかで、「今度は何年ぐらい与党でいられますか」という質問に、 「20年は続けたい。それぐらいやっていないと時代に合ったシステムはつくれない。10年では短い」と答えていた。
1955年以来、ほんの数年をのぞいて自民党がほぼ一党独裁を続けてきた。その結末が原発破局時代なわけだが(民主党政権時代に事故は起きたが、その原因となる原発政策を続けてきたのは自民党である。そして安倍晋三は前回の総理大臣時代に、「全電源喪失による炉心溶融事故というようなことは起きない」と断言しているのである)、それでもまだ20年続けたいというのだから、暗澹たる気持ちにならざるを得ない(しかもこの党は原発推進を依然として目論んでいる)。

私に言わせれば、一党独裁がこれだけ続き、これからも続こうとしているということ自体、日本がまともな民主主義国家ではないことの証拠だ。

そうしたなかで、わずかな期間、自民党が下野した時には、いつも野党側に小沢一郎の存在があった。ところが、その小沢を日本のマスメディアは「壊し屋」という。これはまったくもって真逆のレッテル貼りで、真の「壊し屋」は今回、政権交代をぶち壊した野田佳彦を筆頭に、枝野幸男や前原誠司(この男はニセメール事件でも民主党をぶち壊した)といった面々だ。ところが、野田を「ぶち壊し屋」と批判するマスメディアは皆無であるのは、誠にもって不思議なことである。

先日、雑誌「世界」の「政治を立て直す」という別冊に目を通す機会があった。いろいろな論点が出ていたが、私としては一つ重要な視点が抜けているのが残念だった。
それは、「小沢一郎はなぜ総理大臣になれなかったか?」の検証だ。

小沢が総理大臣になったら民主党政権はいまも続いていたか? 世の中は少しはマシになっていたか?
これはわからない(ただし2010年の参議院選挙には確実に勝っていただろう)。
しかし、次期総理大臣の最有力候補者だった野党第一党の党首が、検察の仕掛けた捏造事件によってその座を追われたという事実は、政治の歴史を国民の手ではなく、検察という国家権力が変えたということである。
つまりこれは立派なクーデターであって、そのクーデターのお先棒を担ぎまくったのが、検察のリーク情報を徹底的に垂れ流したマスメディアだ。

私はこの一件は日本版の「金大中事件」だと思う。
1971年の韓国大統領選挙で朴正煕に97万票差にまで迫った金大中は、1973年に日本で拉致された。命はとりとめたが、有力な大統領候補だった金大中は、その後、数々の弾圧を受け、米国に亡命していた時期もあり、韓国の政界に復帰したのは1995年、大統領に就任したのはなんと1997年のことである。

金大中事件が起きた時、私はまだ小学生だったが、とんでもない事件が起きたという強烈な印象が今でも記憶に残っている。そして、隣国であるにも関わらずあまり関心のなかった韓国が日本とは異なる軍事独裁政権であるということを知った。
その後、社会人になってから、ちょくちょくホテルグランドパレスへ行く機会があったのだが、そのたびに「ここで金大中は拉致されたんだよな」と思ったものである。

今になって考えてみると、野党の有力政治家が謀略によって失脚させられるのはよくあることだが、そういう国は民主主義国家ではない。
つまり、日本もまた民主主義国家ではないということである。

2009年以降、小沢一郎の身の回りで起きた政治資金に関する「問題」は、完全に検察の捏造である。ところが、これをマスメディアが煽って世論操作することで、本来、来るべき政治の歴史を変えてしまった。
ここ最近の「アベノミクス」とやらをめぐる報道を見ていると、私はつくづく「日本のメディアは自民党政権が心の底から好きなんだなあ」と思う。

昨年末の衆議院選挙時、嘉田由紀子の会見で「(われわれは)小沢が怖いのではなく、嫌なんです」と堂々と言い放った大新聞の論説委員がいたが、これは心からの告白で、彼らは小沢が民主党代表時代、「もし総理大臣になったら」と考えると、不安で不安で仕方がなかったのだろう。
その民主党も小沢がいなくなれば、赤子の手をひねるようにぶっ潰すことができ、無事、「自民党を取り戻す」ことに成功し、すっかり心の安寧を得ることができたということか。

今後、いつまた2009年のような政権交代を求める声が湧き上がるかはわからない。
なにしろ、それ以前は50年間も耐えてきたという国民性だから、ひょっとすると私の生きているうちには、そういう時代は来ないのかもしれないと思うほどである。
もちろん、あきめらてはいけないのだろう。
しかし、実は私は大変に悲観的で、というのも「マスメディアという独裁権力維持装置」が壊れないかぎり、小沢一郎のような政治家が再び出てきても(あるいは小沢が復活しても)、必ずメディアに潰されることは確実だからだ。


追記 1
健全な法治国家のために声をあげる市民の会
による検察審査会への申立は、依然として議決が出ていないが、マスメディアはいたって無関心である。

・八木啓代のひとりごと
検察審査会:なかなか苦しんでいらっしゃるようです

追記 2
IP偽装事件について

・八木啓代のひとりごと
どこまでトンデモなんでしょうか:IP偽装事件にしても東電にしても

やっぱりね:IP偽装犯人は馬鹿じゃありませんです

・産経ニュース
片田珠美(23)世の「非モテ男」に捧ぐ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/02/05

『プロメテウスの罠』 ~ 自分を棚に上げる人びと

中国の大気汚染について大騒ぎをしているメディアを見ていると、日本というのは誠にもって不思議な国だなと思う。なにしろ福島県を中心に関東にかけての広い範囲が、東京電力の撒き散らかした放射能で汚染され、本来ならば放射線管理区域にしなければならない場所に多くの人が住んでいる。
にもかかわらず、こちらの件に関する報道は一切ない一方で、中国の大気汚染が大問題だというのだ。
こうなると、「ただちに問題はないんじゃね?」と皮肉の一つも言ってみたくなる、、、

さて、本日の本題。
昨日、書店へ行ったところ、『プロメテウスの罠3』という新刊が出ていた。
朝日新聞連載の「プロメテウスの罠」は順次単行本化され、すでに3巻目まで刊行されているというわけだ。
手にとって目次を見てみると、この3巻にははてなブックマークニュースのタイアップ広告について書かかれた例のトンチンカンな記事も掲載されている。

・「プロメテウスの罠」の見当違い ~ 環境省と津田大介氏の対立は広告制作上の問題でしかない

で、まあそれは別にどうでもいいのだが、驚いたのは「おわりに」の下記の部分である。そこにはこう書いてあった。

********************
 第17シリーズ「がれきの行方」は、東北のがれきを全国で広域処理するという問題に焦点を当てた。放射能を理由に反対する人もいて世論は割れていた。丹念に取材するなかで、広域処理の根拠があいまいなこと、処理期間を少し延ばせば広域処理は必要ないこと、広域処理推進に巨額のPR費が使われ、それが大手広告代理店に流れていることを明らかにした。
※太字はブログ主
********************

これには思わずのけぞった。
なぜなら、「巨額のPR費」は広告代理店を通じてマスメディアに流れているからである。
ところが、この「プロメテウスの罠」の取材班は、広告代理店から先のカネの流れについての「丹念な取材」はしないらしい。

そこで、今一度、当ブログの昨年3月7日のエントリーをご覧いただきたい(ちなみに、このエントリーは、おそらく環境省の広報業務について触れたものとしては当時、結構、早い部類に属していたと思う)。

さあ!「除染広報15億円」+「災害廃棄物の広域処理広報15億円」計30億円争奪戦の始まりです!

ここには、「平成24年度東日本大震災に係る災害廃棄物の広域処理に関する広報業務」という公示が掲載されている(以下は除染広報も同様)。
これは、クライアントである環境省が、「今度、がれき処理に関する広報業務に予算をつけたので、その一般競争入札をします。ついてはその説明会をしますよ」という公示だ。

応募資格のある広告代理店は、この説明会に出席をして、環境省がどういう意図で広報をしたいのかをヒアリングする。その際の事前の資料が↓。

「平成24年度東日本大震災に係る災害廃棄物の広域処理に関する広報業務の概要及び企画書作成事項」

この仕様書の「2.業務内容」の「1)個別業務事項」の(1)は「メディアを使用した広報」と書かれている。以下7項目まであるわけだが、当然、もっとも優先順位の高いものから順番に書いているはずだろう。
つまり、環境省がまずやりたいのは「メディアを使用した広報」なのである(また(2)で「環境省及び国の関係機関の政策を正確に理解し、これをわかりやすく表現できるライターを用意して業務を行うこと」と書いてあるのも興味深い)。

話を進めると、この説明会を聞いて、資料をもらった各広告代理店は会社に戻り、指定日までに予算に見合ったプラニングをしていく。その際にはもちろんメディア選択もあり、たとえば純広告については朝日新聞を使おうとか、雑誌については「週刊☓☓」を使おう、テレビのCMはこういう形でいこうというようにプランを練り、企画書を作っていくわけだ。
そしてコンペとなり、勝った代理店が企画書に基いて30億円を使っていくという寸法である。

ちなみに上記のエントリーの際の落札代理店は電通だったという。
予算規模は、除染15億、がれき処理15億の30億円。
これを『プロメテウスの罠』では「流れる」と表現しているが、その内容の是非をひとまず脇におけば、きわめて真っ当なビジネスの流れでしかない。

ところで、通常、クライアントがメディアに広告を出す際、広告代理店のマージンは2割だ。
広告業界ではクライアントが代理店に支払う金額をグロス、広告代理店がマージンを引いて媒体社に支払う金額をネットという。
つまり通常は、グロス30億であれば、広告代理店には2割の6億が入ることになる。
しかし、このようなコンペともなれば競争が激しい。しかも一方で、媒体社側には政府広告は「定価」という商慣習がある。したがって、たとえば朝日新聞に広告を出すといっても、彼らは「政府広告はビタ一文も負からない」という姿勢を貫く(したがって、昨年3月に朝日新聞に掲載された30段〈見開き〉の広告も定価だろうから、朝日新聞にはネット5000万ぐらい入っていたはずである)。

・関連エントリー
朝日新聞社のみなさまへ ~ 震災瓦礫広告についての質問

となると、競争に勝つためには結果として自分たちのマージンを削るしかない。
したがって、「コンペには勝ちたいけど、勝てば勝ったで、大して儲かるわけではないです」(知り合いの広告代理店関係者)というのは、代理店の肩を持つわけではないが、あながちウソではないだろう。

さて、なぜこんなことをグダグダと書いてきたかというと、要するに環境省の巨額のPR費を問題とするならば、そのもっとも肝心な部分は、各メディアににどのようにカネが流れているかなのである。

はてなブックマークニュースのタイアップ広告にしても、広告代理店は予算をクライアント(環境省)から預かり、それをもとに広告を制作していくわけで、最終的にその予算はマージンをのぞけばはてなや、原稿を書いた津田氏へと「流れる」。

ま、はてなに「流れる」カネなど大したことはないが、問題は大新聞社やテレビ、雑誌といった大手メディアに流れるカネである。
これは3.11以前からの私の主張であるが、日本の原発問題を考える際にもっとも大事なことは、原発推進の原動力となったメディアの役割だ。

かつて、第二次大戦の際、メディアが流す大本営発表を多くの国民が最後まで信じていたがごとく、原発においてもメディアが垂れ流す安全神話が、「原発は必要」という世論形成に大きな役割を果たす一方、使用済み核燃料の問題については「ほとんど報道しない(=国民に知らせない)」という対応に終始した。
それが、巡り巡って福島第一原発の破局事故につながった。
第二次大戦時には敗戦でいったん国民は「すべてがウソだった」ということに気づいたわけだが、3.11後の国民はまだウソに気づかない(思考停止しているとも言えるが)。
つまり、8.15がひとつの「終わり」だったのに対して、3.11は「原発をめぐる次なるステージへの始まり」だったのだ。
したがってメディアは今後ますます統制を強めていく。

昨年、9月に小出裕章氏にお目にかかった後、御礼のメールと一緒に無礼を承知で私の作成した電子書籍『東京電力福島第一原発事故とマスメディア』をお送りした。
するとお忙しいにもかかわらず、短いながら丁重なご返事をいただいた。
そこにはこう書いてあった。

 まだ中身を読めたわけではありませんが、「日本が民主主義とは真逆」であり、官僚中心の独裁国家で、マスメディアもそのシステムに組み込まれている」というご指摘に共感します。
 ただ、それに気付いている人があまりに少なすぎます。

政府が一つの政策において広告することを考え、それに予算をつけて一般競争入札をするのは当たり前の話である。その結果、どこかの広告代理店が落札するのもこれまた当たり前の話。どのクライアントでもやっていることで、カネの流れは誰にでもわかる単純明白な「事実」でしかない。
繰り返しになるが、問題はそこから先で、どこのメディアにどのぐらいのカネが流れているかこそが大問題で、
それを取材してこそ初めて調査報道の名に値する。

朝日新聞によれば『プロメテウスの罠』は新聞協会賞を受賞したそうだが、この程度の「報道」が協会賞だというのだから、新聞業界のレベルも推して知るべしということだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2013年1月 | トップページ | 2013年3月 »