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2011/11/22

「赤文字系雑誌」衰退という世相

久しぶりにABC協会による雑誌の調査部数を見た。本年の上半期(1月〜6月)のものである。
紙媒体にとっては厳しい時代のなか、今年の前半は東日本大震災と東京電力福島第一原発の破局事故があったわけだが、それでも健闘して部数を伸ばしている雑誌もある。これは本当に大したものだと思う。
一方でもちろん部数を落としている雑誌もある。

そんななかで私の目を引いたのは、いわゆる赤文字系雑誌の部数減だ。ちなみに赤文字系というのは、JJ、Cancam、ViVi、Rayなど20歳前後の女性をターゲットとしたファッション誌を指す。
私が勤務していた光文社は、JJをベースとして、これを卒業した読者にCLASSY.(30前後のOL層)、さらにVERY(30代の子どもがいる主婦層)、STORY(40代の主婦層)、HERS(50代の主婦層)と各年代別に雑誌を用意している。つまり、若い層にブランドを叩き込んで消費を煽り、それをどんと上に引っ張っていく作戦である。
これは自動車で言えば「いつかはクラウン」をキャッチフレーズにカローラ、コロナ、マークⅡ、クラウンというラインナップを作り、カローラで得たユーザーをそのまま囲い込んだ、かつてのトヨタのようなマーケティングだ。
しかし、JJは9年前、絶好調でダントツトップを独走している時に編集長を交代して以来、転落の道を辿る。50万部近くあった実売部数はあれよあれよという間に落ち、Cancam、ViViに追い抜かれ、ついにはるか後方にいたRayにも抜かれてしまう(というかRayはマイペースで走っていただけだが、JJがどんどん落ちてきて、あっという間にRayの後ろへ行ってしまったのであった。このJJについては、それだけで本が一冊書けてしまうような話なので、いずれまとめることとしたい)。
このJJと入れ替わってトップに立ったのがCancamだ。蛯原友里、押切もえ、山田優などの人気モデルを擁して、大ズッコケしたJJを抜き去り、アッという間にトップに立つと快進撃を開始、絶頂時には70万部以上の発行部数がほぼ完売ということもあったほどである。
もちろん、広告の状況も多少のタイムラグはあるものの、部数と軌を一にする。JJからはどんどんクライアントが去り、Cancam、ViViへと流れていった。
しかし、このCancamの独走も長くは続かず、やがて部数が落ち始め(Cancamの派生雑誌としてAnecanを出したということもあるが)、やがてViViがトップになる時代が来る。といってもViViはCancamのように爆発的に部数を伸ばしたわけではなく、安定した部数を維持していたら、JJやCancamが勝手に浮き沈みをしていっただけなのだが、とにもかくにもViViがトップに立った(Sweetは外して書いてます)。

――と、これが昨年、私が会社を辞めるあたりまでの情勢だった。ちなみに、昨年の上半期(1-6月)の実売はViViが32万6,000、Cancamが21万2,000(この落ち方も凄い)、Rayが12万2,000、そしてJJが11万1,000である(ただしJJのこの数字は特殊事情(※注)によるもので、実際の平均的な実売はもっと低かった)。
そして、昨年の下半期(7-12月)はViViが30万2,000、Cancamが19万3,000、Rayが10万7,000、JJが8万6,000となっている。
で、今年の上半期は、、、

ViVi 25万1,000(前期比83%)
Cancam 14万8,000(前期比76%)
Ray 11万4,000(前期比106%)
JJ 7万6,000(前期比88%)

かろうじてRayが前期(2010年下半期)を上回っているが、そのRayにしても、昨年の上半期の部数は下回っている。そして、ViVi、Cancamの落ち方が激しく、Rayからすると、しばらく前までその姿すら見えなかったCancamが完全に視界の中に入っている。

この数字の推移をどう解釈すればいいのだろうか。
一つには単純に紙媒体離れに歯止めがかからないということがあるだろう。しかし、一方でそれだけでは説明し足りないとも思う。
わが家にも大学4年の娘がいる。彼女は入学したての頃はCancamを読んでおり、私が会社から持ちかえるJJにも一応、目を通していたようだ。しかし、しばらくしてパッタリ両誌とも読まなくなった。
親戚から「大学の入学祝いに何を欲しいか」と聞かれた時には、某ブランドのバッグなどと答えていたが、その後、ブランドに関心があるようにも見えない。
この間、世の中で何が起きたかと言えば、リーマンショックであり、そして東日本大震災と東京電力福島第一原発の破局事故である。
もともと、現在の大学生というのは、バブル崩壊後に生まれた、元号で言うならば平成世代で、1995年には阪神大震災、2001年にはアメリカの同時多発テロも経験している。
つまり高度成長ともバブルともまったく縁がなく、成長するとともに国内外のさまざまな苦難、事件、混乱に遭遇しているわけだ。しかも、その少なからぬ部分は、国内的に言えば昭和のツケである。
さらに、東京電力福島第一原発が撒き散らかしている放射能の影響は今後も止まるところを知らず、どんなに政府や東電がウソをつこうとも、彼らの人生において、本来なら楽しかるべき20代、充実すべき30代、40代、そして老後にいたっても深刻な影響を与えることは間違いない(もちろん、彼らに続く世代にとってもこれは同様である)。
そういう大変な時代を生きなければならない世代が、急速に昭和的な経済重視、あるいはカネ、モノ(ブランド)重視の価値観から離れているのではないだろうか。
だとしたら、そういう彼らに、昭和世代(なかでも高度成長やバブルの恩恵を受けた世代。以下同じ)はどう対すればいいのか。
少なくとも、それでも昭和的な価値観を押しつけるのは根本的に間違いだろう。なにしろ、今日の国難をもたらした最大の原因は昭和世代のエゴイズムにあるのだから。
京都大学の小出裕章助教は放射能で汚染された食材について、これからは40禁、50禁という表示をして、この食材は40歳以下は食べてはいけない、50歳以下は食べてはいけないというようにすべきだと一貫して主張している。これはつまり、汚染された食材は40歳以上、50歳以上が引き受けるべきだという考え方だが、昭和世代が今すべきことは、このようにわが身を削ってでも後世に残る莫大なツケとリスクを少しでも軽減することだと私は思うのである。

※注 このJJの特殊事情とは、部数低迷が続く中、東方神起を表紙にした号のみが爆発的に売れ、雑誌としては異例の増刷までかかったため、その数字が平均値を押し上げたことによる。

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コメント

部数の推移は、女性向け雑誌の付録(ブランド物バッグなど)が話題としてピックアップされたことによる宣伝効果により関心が高まった事も1つの要因ではないかと考えています。(それ以前にも、一部の男性向けファッション雑誌へ香水を付録としてつけているものがありましたが)

古くは、3Dのアイドルをベースにした展開をしている事が話題となったゲーム業界。お坊さんを目指す若者が増えたという情報など。関心を高め、それを目指す人が増えるニュースが流れてだいたい3年後に「何故(ピックアップして関心が高まった)業界から辞めていく人が多いのか」という記事を目にしてきました。(実際はどうなのか確認していないので分かりませんが。)

なので個人的には、部数の推移を「世代が変わったから」あるいは「世代が違うから」という理由づけで斬っていくのは、強引なのではないかと思います。

投稿: チョロ吉 | 2011/11/24 20:28

せっかく自宅に大学4年生というマーケット対象者がいるにもかかわらず、何故赤文字雑誌を読まないのか、直接確認できないのであろうか? 他の調査資料より極めて価値のある赤文字雑誌の直接ターゲットに直接確認できる貴重な機会を全く失う事になっている。 結局、この文章は赤文字雑誌がどうのこうのという話題ではなく、単に原発の事を話題にしたっかたのではないか?
それなら、赤文字雑誌の部分は削除した方がよかった。

投稿: がちゃ | 2011/11/23 07:23

「社会を世代ごとに区切って、”この世代はこう考えろ”と個人的な価値観を押し付けようとする」のが、団塊世代の悪癖。昭和世代は、反対する程の理由がなかったから、流された。だが、平成世代は、経済的厳しさから自身の価値観に自覚的なので、価値観押しつけに流されない。それだけのこと。
この期に及んで、「価値観押しつけ」自体の”悪”を理解できていないとは、少し情けない。

投稿: Janus | 2011/11/22 22:47

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