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2011/10/13

首都圏の放射能被害はどんどん深刻化する ~ 『原発事故……その時、あなたは!』より

横浜市港北区でストロンチウムが、そして世田谷区弦巻の民家脇で毎時2.7マイクロシーベルトという放射線量が測定された。
すでにニュースで流れているように、後者は福島県内の計画的避難区域並みの線量である。
史上最悪の原子力災害が現在も進行中であるにもかかわらず、荒川に現れたアザラシの追っかけに夢中だったマスメディアも、さすがにこれはニュースは報じないわけにはいかないようだ(ちなみに私は、このアザラシ騒動もまた最高度の情報操作の一つだと考えている)。

とはいえ、その報道ぶりはまだまだ私には腰が引けているように見える。
基本的に国家権力(もちろんその中には東京電力も含まれる)は、福島第一原発事故について一刻も早く幕引きをしたがっている(正確には「幕引きをしたことにしたがっている」)。ゆえに、マスメディアを使ってあたかも事故は収束に向かっているかのような幻想をバラマキ(「冷温停止」に近づいているなどという発表は、その最たるものだろう)、必死で国民を洗脳しているわけだ。
それは現状、相当程度成功しており、実は多くの国民にとって原発事故は過去のものになりつつある(もちろん、そこには「嫌な情報は見たくない」という究極のニヒリズムも介在しているだろうが)。

しかし、現実にはいよいよもって事態は悪い方向へ進んでおり、もちろん首都圏へのさらなる影響も不可避だ。
そこで、以下にある図表ご紹介しよう。
これは本年3月に当ブログでも何回か紹介した瀬尾健著『原発事故……その時、あなたは!』という本のなかに掲載されている図である。
福島第一原発事故後、おびただしい数の原発本が発売されたのに対し、本書の刊行は1995年と古い。
著者の瀬尾氏は京都大学原子炉実験所の助手だったが、本書が刊行される前年に逝去されている。その瀬尾氏が書き残した遺稿をまとめたのが本書で、同僚だった小出裕章氏が内容の確認をしている(だから私は「小出裕章」という名前はこの時から知っていたが、顔と名前が一致したのは今年の3月だった)。
さて、この本の冒頭では、全国16の原発基地と、もんじゅ、さらに核燃料輸送中の事故について、破局的事故が発生した場合の災害規模の計算が行なわれている。
ちなみに、各原発基地には複数の原発があるが、本書ではその中で最大出力の原発一基が計算の対象とされている。したがって福島第一原発の場合で言えば、対象となっているのは6号炉である。
その計算結果が下記の図なわけだが、現実に起きた破局事故は1号炉~3号炉の破局事故であって、そのスケールは本書の計算よりもさらに大きい。
また、今回の事故はチェルノブイリのように最初からドカンといく爆発的なものではなかったので、本書が指摘するように急性の死者は出ていないが、東京電力が最初の時点で全面撤退を主張したのは、そのようなケースもあり得ることを十分に知っていたからだろうと個人的には推察している。
ということで、以下の図をご覧いただきたい。

【書誌情報】
書名:『原発事故……その時、あなたは!』
著者:瀬尾健
出版社:風媒社(http://www.fubaisha.com/
初版情報:1995年6月10日 第1刷
底本情報:1995年8月15日 第2刷
ISBN-4-8331-1038-5

「原発事故…その時あなたは」~福島事故

※左下の「view in fullscreen」のボタンをクリックすると拡大します。

ちなみに緩い避難基準とは、「緩く見積もった場合」であり、厳しい避難基準とは「厳しく見積もった場合」ということになる。福島第一6号炉の場合、緩い避難基準は関東では茨城県、栃木県までであるが、実際には群馬県や千葉県、埼玉県にも汚染地帯があり、東京にもホットスポットが及んでいることを考えると、事態はより一層深刻だということがわかる。

本書では炉心溶融事故についてのシナリオが紹介されている。このシナリオは第一期から第七期にまで分かれており、順に[第一期 ブロウダウン]→[第二期 炉心温度上昇:崩壊熱のみ]→[第三期 炉心温度上昇:崩壊熱とジルコニウム・水蒸気反応]→[第四期 炉心崩壊]→[第五期 原子炉容器の熔融貫通]→[第六期 格納容器底部の加熱]→[第七期 格納容器底の熔融貫通]となっている。
そして第七期では「灼熱の熔融体はコンクリートも鉄の構造材をも熔かしてひたすら沈降していくだろう」「格納容器底部が貫通すると、熔融体は地中に出てしまう。」「地中に潜り込んでいく熔融体は、なおも七〇〇〇~二万キロワットの発熱を維持しているから、土を分解してひたすら下へ下へと沈降していくと思われる」と書かれており、そこでこのシナリオは終了している。いま現実に起きているのは、この第七期である。
いったい、この事態をどのように捉えて行動すべきか。
もはや、、、
一人ひとりがマスメディアを通じた政府や東電の発表(それはほとんどがウソである)に惑わされることなく、本やネットから知識と情報を得て、自分の頭で判断するしかないと私は思う。

※それにしても世田谷区の区長が保坂展人氏であったのは幸いだった。今回の事例から痛感するのは、たとえ区長選(あるいは市長選)と言えども軽視してはいけないということだ。

↓は世田谷の2.7マイクロシーベルト、横浜のストロンチウムについて語る小出裕章氏。

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コメント

検索で光文社の逸話を発見し、一連の記事を興味深く拝見しましたが、近頃は陰謀論的視点が強くて興味深くありません。

投稿: 大高 | 2011/11/03 13:09

世田谷での出来事を鼻で笑う男、田母神が代表を務める『頑張れ日本!全国行動委員会』の会員が、出会い系サイトの日記で『被曝の有益』ばかりを訴えている。

出会い系サイトって、主婦などが暇潰しに無料ゲームをするために登録してたりするから笑えない!
放射性物質の知識の少ない人々が日記の内容に騙されている

※サイトに会員登録しなくても問題の日記が見れます
http://diary.550909.com/c7b46e7e/2536993

投稿: 田んぼの神 | 2011/10/17 17:39

世田谷区の件については原発となんの関係もなかったことを追記で書き添えておくと良いかと思いますが、如何でしょうか。

せっかくきちんと構築された文章も、推測外れの情報を交えて掲載し続けると信憑性が下がってしまうと思いますので(これはマスコミにも言える事ですが)。

投稿: pc4beginner | 2011/10/14 11:29

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