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2011/08/17

菅の裏切りを見抜けなかった「権力&マスメディア」にとっての次期総理の条件

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 記者クラブは、怠惰ゆえに取材をしないのではなくて、おそらくはある種の信念として、本質的にそれを許容しないのだ。そうでなければ、しばしばがんばって独自取材を試みた加盟員が叱責されたり、ときにはなんらかの処分さえ受けるなどということが、ほんらいあるはずがない。
 きわめて挑発的な言い方になるかも知れないが、つまりは怠惰によるのではなく、むしろまったく逆に、いわば「努力してなにもしない」のではないのか。そのことによって、官庁製の発表記事を、そのまま積極的に、公認された情報として仕立て上げる力学、と説明することも出来る。もはや、こういう意味での、報道という「制度」が成立している、ようにわたしには考えられるのである。
  (中略)
 報道は積極的に無為であることによって、官庁が仕組んだ工作を公的な情報として認知させるべく「協力」する。これをたんなる追随と考えるのはあやまりであり、事実はニヒリズムに基づいた民衆蔑視が、積極的にそのような姿勢をとらせている。かくて、報道的な感性とは、人間同士の対等な向き合い方を拒否した、いわば支配者の感性なのであり、その自意識によって、民衆に情報を「与える」ものとなる。
 そこでは、権力と報道とは一体なのであり、もはや、権力が報道を利用するというよりは、すでに報道が権力それ自身でもある。そのようなものとして、支配の総体としての情報帝国主義が存在するのだ。

岡庭昇著『かくもさまざまな言論操作』より
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やっとこさ菅直人が辞任する方向らしい。
次の有力候補は野田佳彦だそうだが、この野田なる人物が総理大臣になればどうなるかは、植草一秀氏のブログを読めば十分である。

・植草一秀の『知られざる真実』
野田佳彦氏が新代表に就任すれば日本は沈没する

そもそも、一般にはまったく知られていない地味な人物が総理大臣候補になるのは、この国の真の支配者がそれを望んでいるからだろう。
私の愛読ブログのブロガーのみなさんは、「野田なんて」と一様に怒っているが、私なんぞはむしろ「いよいよ権力の手持ちのカードが枯渇してるんだナ」と思う。大貧民をやっていて、とりあえずいいカードから出していったら最後の最後にカスしか残らなかったみたいな……。
案の定、舞い上がった野田は早速「大震災は千載一遇のチャンス」などと霞が関の本音を漏らしてしまい、その“資質”のなさを露呈した。これには本来、野田を望んでいる官僚も頭を抱えていることだろう。

で、まあ野田のことはこの際おいておくとして、、、
私がことここに至ってもずっと引っかかっているのは、実は6月2日の民主党の両院議員総会である。
といっても総会の中身についてではなく、NHKの“報道”ぶりだ。
この総会は昼に行われたので、NHKはニュースの時間に生中継をしていた。私はこれを見ていたのだが、菅直人が「一定のメドがついた段階で、、、」と辞任をするんだかしないんだがあやふやに言った瞬間、画面にはニュース速報のテロップが出て、続いて「菅首相が辞任を表明」という文字が流れたのだ。
これには驚いた。なぜなら、私は菅の発言を聞いて「なんだこりゃ? 辞任するつもりなんかないじゃないか」と思ったからだ(実際、私はツイッターで「これ、退陣の表明じゃないだろ。」とつぶやいた)。
ところがNHKは菅の発言内容を吟味もせずに、用意したテロップを即座に流したのである。
これはNHKだけではないが、つまりマスメディアは菅の胸の内など一切、取材することなく、横一線で菅の辞任表明をなんの疑問もなく信じていたわけて、これはつまりそういうシナリオが完璧に出来上がっていたということだろう。
ところが、実際は菅の胸の内は違っていた。それがいいか悪いかはこの際、脇に置いておく(後任が正式に決定していない現時点では、菅直人は史上最悪の総理大臣だったともちろん思う)。
ただ、マスメディアの“取材者”の誰一人として、その菅の胸の内に気づかなかったということは、この国のメディアの体質として特筆に値すると思う。

これまで、小沢政権を阻止するためにさんざん菅を擁護してきたメディアまでが、これを機に一斉に批判に転じたのは、菅が予定調和という秩序を乱したからに他ならない。その意味で、菅は最後の最後のところで、メディアからすると、政治的志向、方向性はまったく違うが、既存の秩序を乱す存在ということでは小沢一郎と同じ側に落ちたのである。
もちろん、だからといって繰り返しになるが、菅を評価することはまったくできない。なぜなら、この男は総理大臣という職をただただ続けたいだけのために、これまで乗っていたバスを降りたに過ぎないのだから。したがって、その一貫してデタラメな政治姿勢はどんなに批判されてもされ過ぎることはない(とくに3・11以降)。

とはいえ、かくなる形で飼い犬に噛まれてしまった権力とメディアにとって、次の総理大臣を選ぶ際の最大の基準は「絶対に秩序を乱さず、完全にコントロールできること」であることは間違いない。

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『東京電力福島第一原発事故とマスメディア』

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