鳩山政権 ~ ヨタヨタなのか?したたかなのか?
長崎県知事選と町田市長選で与党候補が負けたことで旧与党の連中やメディアが騒いでいる。
鳩山由紀夫と小沢一郎の政治資金問題、いわゆる「政治とカネ」の問題に国民はウンザリしているのであって、自民党時代と何も変わらない古い体質の小沢一郎が幹事長を辞めないと夏の参議院選挙で与党は負けるのだそうだ、、、
昨年3月の西松事件における大久保秘書逮捕以降の狂ったような小沢バッシングも、さすがに政権交代が実現したら終わるのかと思っていたらさにあらず。引き続き政治資金規正法の虚偽記載騒動が勃発。しかしこれも石川議員の不当逮捕までで終了。あれだけ大騒ぎしたにもかかわらず(検察用語では「風を吹かす」というそうだ)小沢を起訴することはできなかった。さすがにここまでくれば少しはマスゴミも静かになるのかと思っていたら、「まだ検察審査会がある」などと騒いだ挙句、怪しげな世論調査をやっては小沢や鳩山政権に対して凄まじいバッシングを繰り返している。結果、長崎と町田で与党候補が負けたというわけだ。
これに喜んだ自民とメディアは、これから参議院選挙までの間、やれ「政治とカネ」だ、「小沢の進退問題だ」とますますもって騒ぎに騒ぎ、煽りに煽るだろう。なにしろ衆議院でどんなに議席を持っていても、参議院が逆転していたら政権運営がうまくいかないのは自民政権末期が証明しているのだから。
その光景は今以上に異様なものになるだろうが、しかし一方で鳩山政権が青息吐息のヨタヨタ状態に見えるのも事実である。実際、政権を支持する側の人たちからも「もう少しなんとかならないのか」「いい加減、ズバッと反撃してほしい」といった声は少なからずある。
しかし、こんな状況になったからこそ見えてきた事実もある。
その最たるものが「最強の捜査機関」といわれた検察組織の「最狂」ぶりだと思う。
実は私は10代から20代前半にかけて立花隆の書いたものをわりと熱心に読んでいたため、東京地検特捜部というのは腐敗した政界に切り込んで正義を実現する唯一の機関だと思い込んでいた。今となっては恥ずかしいことだが、リクルート事件が起きた時も「やっぱり検察はやる時はやるナ」なんて思ったものである。
ところがこれがとてつもない大間違いだった。
大久保秘書や石川議員への不当捜査と逮捕、時を同じくして検察のデタラメぶりが法廷で次々と明らかになるという驚愕の展開を見せている厚生省のいわゆる「郵便不正事件」、さかのぼれば福島県の佐藤栄佐久元知事の事件や鈴木宗男、佐藤優の事件、そしてリクルート事件、、、これらの事件に共通するのは、「捜査」の過程で検察が都合のいいストーリーを捏造し、それに沿って被疑者や関係者の人権などをまったく無視した取り調べをして調書を取ろうとしていたことだ。
「関係者に自殺者が出る事件は筋がいい」と放言し、呆れるほどのデタラメ捜査とでっち上げストーリーで狙った人物を社会的に抹殺しようとする検察の思想と行動は、まさに霞ヶ関という独裁体制内の特務機関そのものである。そしてこの特務機関の活動を正当化するためのプロパガンダという重要な役割を担っているのがメディア=マスゴミだ。
と、そう考えれば、特捜部OBの連中がメディアに露出して、ひたすら検察擁護を繰り返すのも(中には「自分は証拠を見たわけではないが、小沢は99.9%有罪」とのたまったヤメ検もいたという)、新聞やテレビの記者が検察の見立てを垂れ流すのもすべて理解できる。
そしてこの構図は政権交代がなければ、ここまで白日の下に晒されることはなかったはずだ。したがって、私はこれだけでも十分に政権交代をした甲斐があったと思う。
作家の小林信彦は先週発売の週刊文春のコラムの中でこんなことを書いている(一部抜粋)。
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そして、マスコミやら<評論家>は、小沢不支持が七十パーセントもある、とはしゃいでいますが、短期間に、あれほどの<検察からの一方的リーク情報>を流されたら、どんな人だって(福山雅治氏だって)人気がガタ落ちします。
かりにA氏としますが、A氏について悪意のある情報を連日たれ流し、その上でA氏を支持するか、と大衆に訊けば、「支持しない」と答えるに決っている。その結果をいかにも嬉しそうに発表するテレビや新聞は、いったい、なにをやって、誰の味方でしょうか?
まあ権力(霞が関とも表現されますが)とマスメディアが密着して、世論調査を実行すれば、こうなるに決まってます。彼らはそれほど、A氏がこわいのです。
では、民主党はどうか?
ここは官房長官がアホみたいですし、JAL問題その他で愚行をつづける前原国交相がいたりして、失敗つづきですが、二月八日のテレビ朝日の番組で、なかにし礼さん(一九三八年生れの引揚者)が言ったように<やわらかく見守る>より仕方がないでしょう。五五年体制で、文字通り五十余年にわたって日本の国をムチャクチャにしてきた自民党の暴挙を百日で片づけろというのは無理です。なかにし礼さんは自民党の行動をじっと見てきたはずだから、こういう言葉を冷静に吐ける。つまり、<戦争をくぐり抜けてきた世代の少年>なのです。
この世代をバカにしない方がいい。
外見は柔らかいことをやっているように見えても、権利意九社の動きには、とても敏感ですから。なぜなら、そういうふうに<風向き>を感じとっていないと、生きてこられなかったからです。
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私もこのコラム同様、民主党政権は当面、「やわらかく見守る」しかないと思う。
ただ、官房長官や国交相がアホなのは事実だが、鳩山・小沢コンビは案外したたかなのではないだろうか。
オセロというゲームは中盤でどれだけ有利を築いても、最後にペチョンと石を置かれるとゴロッと色が引っ繰り返ってしまうことがある。これは囲碁にしても同様だろう。
その囲碁の高段者である小沢一郎と、「偏微分を駆使した微分方程式で政局を見ている」(佐藤優)という鳩山由紀夫は、ヨタヨタしているふりをして相手の攻撃を受けながらも、どこかで現在の状況を一挙に引っ繰り返す一手を繰り出すタイミングを計っているのではないかと私はひそかに期待しているのだが、これは希望的観測に過ぎるだろうか。
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