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2009/01/21

公立学校の小中一貫教育で教育の質は向上するのか?

昨日は今年になって初めて落語を聴きに行った。柳亭市馬と橘家文左衛門がそれぞれ二席ずつ。個人的には市馬目当てで行ったのだが、文左衛門も非常に面白く、今後は文左衛門出演の落語会も気になってきた。

この会の前座には小朝の弟子という春風亭ぽっぽが出演した。まだ若い女性(というより女の子)で落語家になって日も浅いようだが、なかなかどうして淀みなく話す。前座としてはまあ聴けるレベルである。とはいえ、もちろん文左衛門、市馬の両師匠とは格段の差があるわけで、一人前の落語家になるためにはまだまだ修行を積まなければならない。

とここで話は急転。

横浜市では市立の小中学校(491校)のすべてで2012年から小中一貫教育を行うことになったという。
19日のTBSラジオ「アクセス」のバトルトークのテーマは、この横浜市の決定に賛成か、反対かというものだった。
リスナーからの反応は番組開始前が賛成42%、反対32%、どちらともいえない26%、番組終了時には賛成が34%、反対が40%、どちらともいえないは26%のままだった。
ちなみに私は最初の時点ではこの制度についてよくわからない部分もあったのでどちらともいえず、最後は反対に転じた。
その理由は、番組を聴いた結果、公立学校を小中一貫にしても、結局のところ教育の質が向上するとは思えなかったから。

放送では横浜市教育委員会の授業改善支援課長が電話出演し、小中一貫にすることによって小学校と中学校の教員がお互いに交流し、カリキュラムの内容を理解して9年間を進めることができる、また小学校から中学校に上がる際の中一ギャップを緩和することができるというようなことを説明していた。
これに対して田中康夫をはじめ、同じく電話出演した教育評論家の尾木直樹、あるいはバトルトークに出演した教員から具体的な反論があった。
それについてはここでは書かないが、私はかねがね教育の質を向上させるには教員の質を向上させる以外にないと思っている。
今の公立学校の教員のレベルは相対的に低い(なかにはいい先生ももちろんいるが)。
これは以前にも書いたし、田中康夫も指摘していることだが、その最大の原因は社会人の経験がまったくない新卒の学生を教員として採用するシステムにある。
言ってみれば、前座の落語家をいきなり真打ちとして扱うようなものだが(と、ここで枕とつながる(^_^;) )、それをやっているのがいまの公立学校なのだと思う。
子どもの授業参観や部活動などで教員を見る機会は結構あるが、その時、多くの場合に思うのは「この先生はトーク力がないナ」ということ。子どもが騒いでいる、落ち着かないというのは、裏返せば教師の側に子どもを引きつけるだけの力、魅力がないということだ。
と、まあこう書くと、少なからぬ教員が反発するだろう。実際、教員をやっている学生時代の友人と話すと、彼らは口々に家庭に問題がある、親が悪いという。そうして自分の子どもは私立に入れる。

私は子どもの頃、体育の陸上が苦手だった。足が遅い。だから100Mのタイムを計測して成績をつけられるとどうしても評価が低くなる。
しかし、、、と思うのである。これまで一度として正しい走り方というものを教師から教わったことはない。彼らは常にヨーイドンでタイムを計測しているだけ。だが、これなら素人にだってできる。足の遅い子がいるとして、その子にきちんとした走り方を教えてやって、その結果としてタイムが少しでも向上したら、それを評価するのが教育ってえものなのではなかろうか。
さらにいえば、体育教師だからといって運動神経がいいだけでは困る。やはり子どもを引きつける、あるいはコントロールするだけの人間性がなければならない。そのためには運動だけでなく、それなりの読書量だって必要であるかもしれない。

こう考えていくと、小中一貫教育という制度を作ることと教育の質を向上させることとは、はなはだ無関係であるように思う。実際、アクセスに出演した教員によれば、小中の教員の交流というのは必要に迫られてすでにやっているとのこと。また中一ギャップについては高校生のリスナーが、「それがなくなるのはいい」と評価していた。たしかに自分も中学に上がる時には不安であったし、息子が地元の公立中学校へ進学した時には不安もあった。が、それは大人になる過程で必要なハードルなのではないだろうか。

現在、私が住む地域は少人数学級を実践しており、近隣からは教育環境がいいと言われている。もちろん教員のなかには「?」という人もいるが、少人数学級の効果は実感できる。
まあ市の人口が10万人に満たない規模であることも大きいのかもしれないが、逆にいえば横浜ほどの大きな市が例外なくいっせいに小中一貫に移行するというのはただごとではない。「かえって私立の受験熱がますます高まってしまうのではないか」という田中康夫の懸念もうなずける一方、この不況で確実に公立志向が高まることも予想されるだけに、この横浜市の決断は失敗した時のことを考えるとリスクが非常に大きいと思う。

そしてもう一つ、このブログではしつこくこだわりたいのが、教員の口利き採用の状況だ。横浜市はこの点についてきちんと調べたのだろうか。「ない」と言い切れるのだろうか。
飯島勲が「これまでそれなりに多かった」と書いている教員採用の口利き。中選挙区時代の小泉純一郎の選挙区は三浦半島と川崎という飛び地でその間に挟まれているのが横浜市だ。横浜市はいわずもがなの神奈川県の県庁所在地。県政全体に強い影響力を持っていた小泉の秘書が教員採用の口利きは「ある」と書いている。他にも神奈川には有力な与党政治家がたくさんいる以上、教育制度をかえるよりもなによりも、まずもってきちんとこの部分を調べるのが先決ではないかと思うのである。


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