減収減益報道に見るトヨタの体質
2009年3月期にトヨタが9年ぶりに減収減益になるというニュースがテレビ、新聞をにぎわせている。
たとえばこの記事によれば「(「独り勝ち」を続けてきたトヨタ)の業績に出てきたかげりは、日本経済が正念場に差し掛かっていることを改めて示している」のだという。
馬鹿げた記事である。が、それ以上に各紙とも似たり寄ったりのこういった論調を読むと、私のようなひねくれ者は「おっ、トヨタが例のヤツをまたやってるナ」と思う。
そもそもこの発表は今年3月期の決算発表の席で同時に発表された予想である。
しかも今年の数字は売上高が前期比9・8%増の26兆2892億円(2年連続GMを上回る世界一)、営業利益は1・4%増の2兆2703億円、純利益は4・5%増の1兆7178億円だという。つまりこの会社は依然としてアホのように儲かっているのである。
それが来期は為替の変動や原材料の高騰でたまさか減収減益と「予想」になるというわけだが、それは売上高が4・9%減の25兆円(08年3月期比4・9%減)、営業利益が29・5%減1兆6000億円、純利益が27・2%減の1兆2500億円になるという話で、つまりアホさ加減がちょっぴり弱まるというだけのことである。
にもかかわらずこの会社の社長は危機感をあらわにして、社内会議でカラーコピーを多用しすぎるとか記者発表資料も派手すぎるなどと述べ、「為替や原材料価格の影響を吸収できるかで我々の真価が問われる。右肩上がりで来た体質をもう一度見直し、徹底的に無駄を排除する」と強調したのだそうだ。
ま、言う方も言う方だが、それを真に受けて書く方も書く方である。
ではトヨタのこの会見の狙いはなんだったのかといえば、それはただ一点、「できるだけ安上がりな方法で“危機感”を社内外に浸透させて締め上げる」ということのみだ。
もう20年ぐらい前のことだが、その時点でトヨタは明日から自動車の生産を一切やめて運動会をやり続けても2、3年はもつと言われていた。以後もこの会社はひたすら儲けに儲けてきたわけで、この程度の為替変動や原材料の高騰ぐらいは蚊に刺されるようなもの、いやそれ以下かかもしれない。
にもかかわらずこのように大騒ぎするのは、社内、あるいは関連会社、さらには取引業者を締めるのに良いチャンスだからなのである。
使い古された言葉だが「トヨタは乾いたタオルをなお絞る」という。その製造原価逓減にかける執念は凄まじく、それゆえに工場の工員さんは人間扱いされず、納入業者から買うモノは部品から社内で使うボールペンにいたるまで徹底的に買い叩く。
しかしトヨタはまだまだこんなことでは生ぬるいと思っている。工員さんの作業効率を1秒でも高め、ボールペンの値段を1円でも、いや1銭でも安く買いたいと思っているのである。
そのためにもっとも効果的な手段は「今年はいいが来年は大変なことになる」という空気を充満させることである。
さてしかし、これを各工場で工員さんに徹底させるのは大変だし、納入業者に言葉で説明したり文書にしたりするのはカネも時間もかかりすぎてしょうがない。つまり効率が悪い。せっかく乾いたタオルを絞ろうと思っても、そんなことをしていたらタオルはかえって濡れてしまう。
そこでマスコミを使うわけである。もっとも効果的なタイミングで「来期は大変なことになる」と発表すれば、新聞は各紙1面から経済面にいたるまで「トヨタの来期は正念場」などと書きたてるわけで、一銭のカネをかけることもなく隅々にまで“危機感”を浸透させることができるという按配なのである。
しかしながら、仮にも日本最強の企業が「うちは大変なんです」などと騒ぎ出したら、すべての会社が「大変」ということになる。ただでさえ景気が停滞しているなかでトヨタが安泰ではないなどと言い出したら、その言葉がもたらす日本経済全体へのマイナスの影響は計り知れないものがある。
が、トヨタはそんなことは知ったこっちゃない。これは以前にも書いたが、とにかく自分たちさえ良ければいいのである。
そうして徹底的にムダを省き、製造原価を逓減した末に出来上がったクルマは、驚くほどムダな機能がたくさんついてくる。さらにセールスマンがムダなオプションを一生懸命すすめてくるのは、そいつが非常に利益率が高いからなのである。

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