ある博士と立川談志
3月9日の日曜日、テレビのNHK・BShiで立川談志のスペシャル番組を10時間放送していた。
あいている時間にぼんやりと見ていただけなのだが、弟子や友人などいろいろな人たちが談志の魅力を語っているその画面を見ながら、またまたある博士のことを思い出した。
博士は談志が尊敬する数少ない人物の一人だったのである。
かつて談志は博士についてこう書いている。
人間は誰しもが非常識な部分を持っているが、私はどうもその部分が多いようである。世間もそういう。己れの生理だか、個性だかに忠実に生きているから囲(まわ)りと合わなくなる。さすれば当然、不安になる。
そんなときにゃあ博士(ここには名前が書いてある)の本を読むとたいがい納得する。
“俺は間違ってない。それが証拠に、あの天才もそういってる”と、こうなる。
他人の意見にはなかなか納得しない私だが、いや、すぐに反論に移すこの俺が、この先生には素直になれる。なにせこの先生、世の中のことすべてを識(し)っている。
人生は落語なのだと思い、落語と一緒に生きているのは間違いないと思いつつ、時代(とき)の流れに巻き込まれて不安になったとき、先生に助けてもらう。私の座右の書なのである。その座右の書の、なんと読みやすく、解りやすく、歯切れのらきことよ(以下略)。
もう相当に前のことだが、談志がテレビの深夜番組をやっていたことがある。たしか「ダダダ談志だぁ」というタイトルだったと思うが、この番組に博士が出演したことがあった。オンエアされた放送はわりと真っ当なものだったが、実はそれ以前に一度、番組収録をしていた。が、そのときには博士が泥酔してスタジオ入りしたため、VTRは結局お蔵入りになってしまった。そのVTRをオンエア時に談志が「先生、今日はしゃきっとしてるけど、ちょっと先週のビデオを見てみうよか」といって少しだけ流したのだが、これが抱腹絶倒ものだった。博士はもうベロンベロンに酔っぱらっていて(それは私にとっては見慣れたものだったが)、確かに放送できるようなものではなかった。
そんな博士のために談志が千社札をつくってくれたことがある。その札には「無学者・〇〇(名前)」と書いてあった。談志の解説によれば、無学者とは「もはや学ぶことは何もない人(それほど知識のある人)」とのことだった。
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