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2008/02/15

「引き裂かれたイレブン」と「コソボフィルハーモニー」

先週金曜日の深夜、若い友人に勧められたDVD「引き裂かれたイレブン~オシムの涙」を見た。これは旧ユーゴスラビアの内戦、分裂という政治状況に翻弄されたサッカー・ユーゴ代表チームを何人かの選手のインタビューを軸に描いたドキュメンタリーである。「オシムの涙」という文言はウソではないが、日本においての商売を意識したタイトル付けだろう。
監修は「オシムの言葉」の著者・木村元彦。この人の著書には他に「誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡」、「悪者見参―ユーゴスラビアサッカー戦記」 などがあり、いずれも興味深く読んだ。平和呆けした私が旧ユーゴの問題について最小限の知識を持ち得たのはこれらの本のお陰であり、またそういった本を読もうというきっかけをつくってくれたストイコビッチ(現・名古屋グランパス監督)、そしてオシムのお陰でもある。

このDVDできわだっているのはボバン(クロアチア)の強い民族主義的な思想である。彼は旧ユーゴ代表の仲間に対して悪感情を持っているわけではないが、しかしユーゴ代表そのものにはなんの未練もなく、クロアチアの代表であることに誇りを持っている。
これは私のような人間にはなかなか理解しがたい部分なのだが、一方で他の選手たちはどちらかというと政治とサッカーを切り離して考えている様子がうかがえる。さらに監督だったオシムの「イタリアW 杯でもしユーゴが優勝していたらその後の政治状況は違っていたかもしれない」というコメントは、彼が本気でそのために勝とうとしていたことを強く感じさせ心に刺さる。

さてこのDVDを見た翌日、いつものように散歩をしながらパソコンで録音しW42Sに転送した「久米宏ラジオなんですけど」を聴いているとゲストコーナーは初めて名前を聞く人であった。

その人の名は柳澤寿男。この方はなんとコソボ・フィルハーモニー交響楽団の常任指揮者だという。このコソボというのがまた日本人にはなかなかわかりにくいわけで、久米宏は「できることなら地図を広げながら今日の話を聴いてほしい」というようなことをいっていたが残念ながら歩いている最中なので、そんなわけにはいかない。
が、それでも柳澤さんの話というのは十分に興味深く、そもそも指揮者を目指した経緯、なぜコソボへ行くことになったのか、コソボフィルの中にも内在している民族問題、さらにはそのコソボでの暮らしぶりなどを聴くにつけ、前の晩に見たDVDとの内容がつながっていく。
自宅へ帰ってからパソコンを立ちあげてgoogle earthで旧ユーゴのあたりを参照してみる。さらに「引き裂かれたイレブン」のDVDをこの地図を見ながら再度見てみると、かつての冷戦の構図とその後の旧東欧圏の民族紛争、それに対する西欧圏の関係性が初めて頭のなかに入ってきたのだった。

ところで、コソボ情勢は現在緊迫している。それは今月の17日にもコソボがセルビアから独立を宣言するといわれているからだ(恥ずかしながらラジオを聴くまでそのことすら知らなかった)。
現在、柳澤さんはコソボの自宅へ戻ると部屋に入るまでに5つの鍵を開けなければならず、電気がつかないこともままあり、そのときにはロウソクの火を頼りにスコアを見て勉強するそうである。

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