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2007/10/02

トヨタが自分勝手になる仕組み

富士スピードウェイで30年ぶりに開催されたF1グランプリの運営がきわめて杜撰だったことがネット上で多々報告されている。Youtubeではいつまでも来ないバスを待つ観客の長蛇の列の映像を見ることもできる。

この日本グランプリは会場をホンダの本拠地である鈴鹿からトヨタの所有する富士スピードウェイに今年から移して開催されたものだ。

ま、トヨタにとって初めてのF1開催というハンディはある。来年はこの大失敗を糧に今年以上に金をかけて運営をカイゼンしてくるかもしれない。
なにしろF1グランプリといえば世界中が注目する大イベントであり、そこでの不評はそのまま世界へ向けて発信される。さしものトヨタもこれだけの不評を買えば、来年は相当に本腰を入れてくるだろう。
が、逆にいえば今年の運営というのはトヨタという企業の体質をさらけ出したともいえる。
とはいえ、もちろんメディアが今年のトヨタの不手際を糾弾することはない。なんとなれば、これはよく知られているようにトヨタが各メディアにとっては莫大な広告予算を持つ第一級のクライアントであるからだ。
おそらくいま、各メディアには広告代理店からF1に関するトヨタの運営の不手際のニュースが流れないかの問い合わせがきていることであろう。

かつてトヨタは「自らの利益のことしか考えない自分勝手な企業」としてずいぶんと批判された。
在庫を持たないジャストインタイムは公共材である道路を自社の倉庫として利用する発想である。電気代が安い日曜日に工場を動かすのは1円でも安くクルマをつくるという意味では立派なのかもしれないが、そこで働く従業員を単なる工場の歯車としか見ていない。
こうした自分勝手の積み重ねがトヨタという会社を世界一の自動車会社へと導いたことは間違いないが、一方で80年代以降、北米を中心に海外進出するにつれ、そうしたトヨタの常識が世界のビジネス常識とはかけ離れたものであり、その圧倒的な競争力が社会や労働者の犠牲の上に成り立っていることは次第に海外でも批判されるようになった。
それとともにさしものトヨタもその企業体質を少しずつ変化させていったのかなとも思っていたのだが、どうやら実体はまったく昔のままだったようである。
それにしてもなぜトヨタはここまで自分勝手になれるのだろうか。


トヨタといえば誰もが製造業であると思っている。では実際にトヨタが自動車一台ついて自らつくっている部品はどれぐらいあるか(これを内製率という)。これは一昔前で3割といわれていた。おそらくこの比率はいまも大きくはかわっていないはずで、つまり残りの7割は他社から購入しているのである。つまりトヨタというのは製造業という顔を持つ一方で超巨大な購買者なのである(自動車産業が組立産業と呼ばれるゆえんでもある)。しかもその取引業者というのは電装品から鉄、金属、繊維、ゴム、ガラスなどなどほとんどありとあらゆる分野にわたっている。
そうして各産業がトヨタに部品や製品を買ってもらうために必死になって「勝手に」研究する。そうしてできあがったものを見てトヨタは「「いい製品だけど、値段を半分にしたら買ってやる」と言ったりする(かつて松下幸之助は実際にトヨタにラジオを買ってもらうにあたって「半値にせい」と言われたという)。
半値と言われれば腰を抜かすが、それを実現しなければこれまでの研究開発費も無駄になってしまう。そうして必死になってコストダウンして価格を下げてやっとこさトヨタに買ってもらうのである。もちろんその過程で技術革新が行われることもあるだろう。しかし一方でそのようなコストダウンを実現するには2次下請け、3次下請け、さらにその下へ向かって厳しいコストダウンを要求することになる。つまり最後は町工場のような会社のわずかな利益を削り取ることでトヨタへの納入部品の価格を下げるわけである。
トヨタはこういうことをずっとしてきた。一方でたとえばアメリカのビッグスリーなどはかつてガラスまで自社で内製しようとしたこともある。つまりGMとトヨタでクルマ一台に対する開発予算が同じだとしても、トヨタは全体の部品の3割への投資であるのに対し内製率の高いGMはトヨタの3割以外のところへも資金を投入しなければならない。一方、トヨタはというと残り7割の部分に関しては各産業が勝手に莫大な研究投資をしてくれるから、結果的には一台のクルマに投じられる開発費がまったく違うということになる。
もちろんトヨタのみならず日本の自動車産業全体にその傾向はある。というよりも日本は国家ぐるみで自動車産業を育成してきたともいえる。しかしながらそのなかでも圧倒的な力を持っているのがやはりトヨタなのである。そのトヨタの根本にあるのは「自分たちさえ良ければいい」という発想である。

今回の日本グランプリでは横断幕や旗による応援が禁止されたという。これだけでも世界の常識からはありえないことなのに、あろうことかトヨタの応援席ではものすごい大きい横断幕があらわれたという。
「自分さえ良ければいい」というトヨタの真骨頂を久々に見せてくれた今回のグランプリは「結局、この会社はなんにもかわってないんだナ」ということを再認識させてくれたのであった。

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コメント

この文章はたしか、徳大寺有恒と佐高信の雑誌の対談からのパクリですねぇ・・・・この二人、特に佐高信の思想を考慮に入れて読むべきでしょう。トヨタが傲慢なのは事実でしょうが・・・
それはさておき、内製化は比率が高いほうがいいのか低いほうがいいのか、というのは見方が分かれているはずですよ。電機産業のように周辺メーカーが他国のメーカーに部品や製造装置を供給した結果、国内電機メーカーの競争力が落ちているということもありますから。某家電企業のように最近は内製化を高めたり、周辺メーカーの囲い込みを図る動きもあります・・・一方で、とことん外注化して利益を上げているところもありますが。ゲームメーカー、米PCメーカーなどで顕著ですね。
日本の自動車メーカーの強さの一因として、周辺部品メーカーの技術力、コスト競争力がありますが、それらの周辺メーカーが海外メーカーに流れると、自動車メーカーも競争力が落ちてきますから、自分たちのほうを向かせるための努力も相当あると思いますよ。自分たちさえ良ければいいと、単に搾り取っているだけではないのでは。ちなみに最近は電機メーカーなどが自動車部品の分野に参入するケースが増えています。利益率が高いということで。

投稿: きんたろう | 2007/10/05 14:22

世界のTOYOTAに関しては、第一級の広告クライアントではなく、
広告額の総計で2位と一桁違う日本最大のクライアントって言い切ってしまって問題ないと思うのですが。
下記URLは日経広告研究所調べの企業別広告費です

ttp://www.nikkei-koken.gr.jp/research/research.php?research=0&recno=85

投稿: ねぎとろまき | 2007/10/03 18:04

驕る平家は久しからず(おごるへいけはひさしからず)

意 味: 地位や財力を鼻にかけ傲慢な振る舞いをする者は、長く栄えることなく滅びるということ。
(ことわざデータバンクより)

投稿: pineapple | 2007/10/03 10:49

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