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2007/05/18

二つの島国

 これまで45年ほど生きてきたなかで、今日ほど薄気味悪い、嫌な感じのする時代というのはなかった。
 たとえば田中角栄、あるいはその系譜に連なる集団が政界を支配しているとされていた時代でさえも、これほどの閉塞感はなかったと思われる。
 一国の権力者から「美しい」という単語が発せられる時、その得も言われぬ“いかがわしさ”にゾッとする。
 日本の最高学府を卒業し、女子アナとして活躍した後、近年は報道にも携わっていた人物が自民党から選挙に出馬するという。露呈したその人物のどうしようもない底の浅さには、「しょせん、そんなものか」と思う一方で、なんとも言えぬイヤな後味がする。
 沖縄・辺野古では自衛隊が日本国民から米軍を護るために活動し、厚木では夜間に米軍機が爆音を轟かせて離発着訓練をしている。
 こうしたさまざまなニュースを聞くにつけ、私はある国に思いをいたす、、、

 日本と同じ島国であるこの国、キューバは、アメリカの目と鼻の先にある。地政学的に言えば、太平洋を隔てた日本とは異なり、アメリカにとってまさに直接的に支配できる位置だ。事実、20世紀の中頃には民主主義もへったくれもない、実質的な植民地としてキューバを支配していた。
 しかしフィデル・カストロやチェ・ゲバラらの手による革命政権が樹立されアメリカの支配から逃れると、以来、50年近くにわたり、ありとあらゆるアメリカからの恫喝、恐喝にも屈することなく、したたかに生きのびている。
 もちろん日本のように物質的に豊かではない。しかしたとえば教育や医療については社会主義体制にあるわけで少なくとも日本のように心配する必要はない。識字率は極めて高く、また医療水準もずば抜けて高い。自分たちの国が貧しいにもかかわらず国際貢献にも熱心で、ソ連におけるチェルノブイリ原発事故の折りには多くの被災者の治療を引き受けたという。
 ソ連崩壊後のプレッシャーの中で肥料や農薬が輸入できなくなると、それを逆手にとって有機農業大国となったそのしたたかさ。
 それは「社会主義は完全に崩壊した」というフレーズを微塵も疑わない日本国民にとって理解の範疇外にあるのかもしれない。

 よく「権力は腐敗する。絶対権力は絶対腐敗する」という。しかしながら多くの人が評するのはカストロ政権のクリーンさである。政権内部に不正があると厳罰に処するといわれるキューバ政府は、少なくとも独裁権力を握る日本の官僚機構よりもはるかにクリーンであることは間違いない。そうしてキューバに赴任する外交官、あるいは訪れた経済人までもが、この国の不思議な魅力に取り込まれていく。
 戸井十月氏が書いた「カストロ-銅像なき権力者」を読むと、カストロは神出鬼没で、テレビをつけるといつもどこかの町を訪れて演説をしているらしい(いまは体調が許さないのだろうが)。もちろんキューバの国民すべてがカストロの体制を無条件で支持しているわけではない。しかし、少なくともあのアメリカという支配者から勝ち取った自立を守っていくということにかけては国民のコンセンサスはあるだろう。

 そうして思うのである。
 いったいキューバの国民と日本国民ではどちらが幸せなのか?
 私は現状では考えることもなくキューバに軍配をあげる。
 ついでにいえば、いま改正への動きが風雲急である日本国憲法に流れる理念により近いのは、日本ではなくキューバではないのかとすら思う。
 社会主義国家ということでキューバというと北朝鮮のような国を思い浮かべる人も多いのかもしれないが、キューバと日本を比較して北朝鮮の国家体制に近いのは間違いなく日本の方だ。
 政府への批判をすれば社会主義だけにすぐに逮捕されるのではないかというのはまったくの思い過ごし。キューバ人から政府批判をとったらキューバ人でなくなってしまうという。
「キューバの近隣の海域で大規模な油田が見つかった。しかしそのことをフィデルの野郎は隠しているらしい。なぜなら、それを知らせると、国民がますます働かなくなるからだ」
 こんなことを街角のおっちゃんやおばちゃんが話している国を私は好きである。
「美しい国」とはこういう国のことを言うのだろう。

 

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コメント

5ページ目できました。
http://www37.tok2.com/home/ja8119/newpage5.html

このような中性子爆弾の地獄を繰り返してはなりません。放射性廃棄物でも危険ですが御巣鷹が伏せられているため中性子線の危険性について認識されていません。
http://gray.ap.teacup.com/123ja8119/
3万年以上の影響を及ぼします。原子力は温暖化の先送りにすぎません。

投稿: 5ページ目できました。 | 2007/05/18 17:19

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